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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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才能と素質 前編

 
前書き
明けましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。

まだ不安が残りますが、取り敢えずのお試しと言う事で更新しました。 

 
(グランバニア城:娯楽室)

ある日の夕暮れ前……
グランバニア城内のプライベートエリアにある娯楽室(と言う名の音楽室)で、マリー&ピエッサ(マリピエ)のピアノ担当であるピエッサが、己が通う芸術高等学校の課題の為にピアノの前で頭を悩ませていた。

本来であれば、わざわざ王家のプライベートエリアで行う事では無いのだが、本来の目的であるマリピエ(マリー&ピエッサ)の相方であるマリーが練習に現れない(多分サボり)為、空いてしまった時間を有効に使うべく己が技術の向上に時間を当てていたのだ。

なお、芸高校(芸術高等学校)の課題と言うのは“ピアノ曲の作曲”である。
彼女は芸高校(芸術高等学校)の音楽学科の演奏学部でピアノ専行を選んでおり、そこに準じた課題が課されるのだ。

“作曲”と言う事ではあるが、何も一人で行わなくても問題ない。
学友と共に共同で作曲をし、共同作として課題で発表する事も許されている。
勿論、一人で行えば講師の評価もより高いものにはなるが、及第点を得るには協力するのも止む無しだ。

ただ彼女には学友等と共同作業をする時間が無い……
マリピエ(マリー&ピエッサ)の活動に時間を割かれる為、他者と時間を合わせる事が出来ないのだ。とは言え、その必要も無いほどの才能は持ち合わせている……自覚は無いが。
課題の曲も、既に8~9割ほどは完成してるのだ。

そんな時だった。突如、娯楽室に侵入してきた人物がいた。
この言い方をすると、まるで不法では無いが不躾で失礼な者と思われるが、そんな事は一切無い。何故ならば……この娯楽室、と言うか、城その物の持ち主だったからだ。

「お邪魔するよ」
「……!! へ、陛下!?」
ピエッサは突然の王様登場に慌てて立ち上がる。

「ど、ど、ど、如何されましたか!? 何かご不備でもありましたか!? マ、マリーちゃんに何かございましたでしょうか???」
「いやぁ~全然そんなんじゃないから大丈夫」

そう軽く言うと、滑らかな動作でピアノへ近づき優雅に腰を下ろすと、鍵盤を押して音を確認するリュカ。
王様がピアノを演奏しようとしてる事に気付いたピエッサは、即座に一定距離を取り彼の演奏を見学する事に……

「悪いねぇ練習の邪魔をしちゃって……最近ストレスが多くてさ。変だよねぇ……世界で一番ストレスとは無縁の仕事が王様なのに、ストレスが貯まるって如何言う事?」
「は、はぁ……」
音を確認しながら愚痴を溢す王様に“はぁ”としか言いようが無いピエッサ。

「部下に厄介なのが居てね……ナンバー2のくせに、上司の僕に嫌味言ってくるし(笑) アイツの性格何なの? 悪すぎでしょ!」
「その件については激しく同意致します陛下!」

当人がこの場に居れば『こうお前に育てられた』と反論する事間違い無しの台詞に、激しく首を縦に振って同意するピエッサ。
そんな彼女を横目で見てクスッと笑うと、本格的に演奏モードに入るリュカ。





リュカが奏でた曲は前世の世界で有名な楽曲だった。
従ってこの世界に生きるピエッサには初めて聴く新鮮な楽曲だった。
そして……リュカが元いた世界の人々と同様、ピエッサの心に大いなる感動を与える楽曲でもあった。

「す、素晴らしいです! な、なんて素敵な……それでいて心が高揚する曲なんでしょう!! この曲は陛下が作曲(お作り)になった曲ですか?」
「え! あ、あぁ……うん。この世界ではそうなるかなぁ?」

「流石です! 素晴らしいです!! 感動しました!!!」
目の前の国王は“この世界では”と不思議な事を言ってるのだが、感動の余りテンションが上がりっぱなしのピエッサには聞こえておらず、“リュカが作った”と言う都合の良い言葉だけが脳内に焼き付く事になった。

元々が素晴らしい曲をただ披露しただけだったのだが、観客(ピエッサ)の激しい感動と曲に対する質問攻めに遭い、流石のリュカもドン引き状態。
フリーの女性であればこの気に口説くのだが、ピエッサはリュカのターゲッティングから外れており、彼女のテンションに辟易模様。

彼女の猛攻を躱したくなったリュかは……
「そ、そうだ……この曲あげるよ」
「……は?」

「ほ、ほら……もうそろそろ芸高校(芸術高等学校)で作曲の課題があるでしょう。それで使っちゃってよ。(ピエッサ)が作曲したって事で良いからさ」
「そ、そ、そんな訳にはいきません! こんな素晴らしい曲……陛下が作曲なさったんですから陛下のお名前で世に広めるべきです!」

「あ……うん、それそれ。僕もこの曲を世に広めたいんだけど、『王様()が作った曲だから素晴らしい』って音楽の知識も無いイエスマンに、中身の無い評価をされたくないから(ピエッサ)が広めてくれると助かるんだよね」

「い、いえ……でも、しかし……」
「まぁまぁ……今、譜面書いちゃうから」
もう既に押しつける気満々のリュカは、手近にあった未記入の五線譜にサラサラッとコンデンススコアを書いてピエッサに押しつける。

なお、押しつける際にワザと胸を触る様押しつけ、条件反射で胸を庇う様に腕を沿わせ胸と腕で譜面を抱く感じにして、タイミング良くリュカは手を離し一目散に退出する。
(リュカ)にしか出来ない芸当だ。

疾風のごときセクハラと退散に呆気にとられてる中、ハッと胸の中の譜面に気が付くピエッサ。
如何したモノかと思いながら王様が残した譜面に目を落とす……
一瞬で書いた物なのにとても見やすい譜面には『ドラゴンクエスト序曲のマーチ』と題名が書かれていた。

「ドラゴン……クエスト……つ、つまりドラゴンを探求する冒険の序曲って事ね! だから聴いてるだけで、あんなにも胸がワクワクする曲だったのね!」
音楽に国境は無いと納得せざるを得ない彼女の理解力に誰もが脱帽する事だろう……才能の無い者(彼女の相方)以外。

この曲にインスピレーションを多大に受けたピエッサは、課題である作曲を瞬時に終わらせて、宝物となった王様作曲『ドラゴンクエスト序曲のマーチ』の練習に時間を費やす事になる。
勿論、自らの功績にする為では無く、王様が言っていた『理解ある者に評価され広めたい』を実行する為である。

だがそれは、彼女の失念によって崩されてしまうのであった。



 
 

 
後書き
続きも頑張ります。 
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