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星河の覇皇

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第七十三部第一章 野心家のはじまりその二十一

「食べるものは別だけれどね」
「時には高いものをですね」
「庶民派が一番いいならそうすればいい」
 小柳は伊東がかつて言った言葉を自分でも出した。
「けれどそれはね」
「政治家の資質とはですね」
「また別よ」
「庶民派であってもですね」
「有能とは限らないわ」
 政治家というものはというのだ。
「賄賂を取り女性に目がない人物でもね」
「政治家として優秀であることも多いですね」
「能力と人格はまた別である」
 これも伊東が言った言葉だ。
「そうしたものだから」
「世の中はですね」
「そう、だから食べるものはね」
「それが庶民派であってもなくても」
「いいのよ」
「かつてのマスコミや一部の知識人は政治家が高価なカツカレーや天麩羅を食べていてね」
 しかも保守系の政治家がそうしたものを食べた場合だけ騒いだ、左翼政治家の場合は騒ぐことがなかったからこれこそ偏向であろう。
「批判していたけれど」
「では自分達はですね」
「当時はマスコミこそが栄えていたわね」
「収入もよく」
「よく庶民派と言いながら」
「その実はでしたね」
「日本で最も庶民と離れていたわ」
 そうした生活だったというのだ。
「彼等こそが」
「それで口では庶民ですね」
「時には見事な着物を着てね」
 上等の絹のだ。
「格差社会を批判していたわね」
「格差社会といいますと」
「共産主義の匂いがするわね」
「はい」
 スタッフも答えた、この時代では邪教視さえされているイデオロギーである。
「どうにも」
「実際に格差社会という言葉はね」
「そちらから出ていますね」
「そうよ」
「やはりそうですか」
「庶民派という言葉もね」
 この言葉もというのだ。
「歴史を見ればね」
「左翼勢力から出ていましたね」
「日本国内の」
「庶民派や格差社会という言葉は」
「そして他にもあったけれどね」
 日本は孤立しているだの徴兵制復活だのだ、不思議なまでに言っている口は同じ口ばかりであったのだ。
「今は流石に共産主義はないけれど」
「千年以上前の思想ですし」
「マスコミのそうした批判はね」
 庶民派という言葉を元にしただ。
「まだあるわね」
「食事一つ取っても」
「どうにもね」
「わからないものですね」
「ええ、全く以てね」
 小柳はラーメンを食べつつ言った。
「さらに悪いことに私がこうしてラーメンを食べることは」
「報道しないマスコミもありますね」
「私が最高級の懐石料理を食べれば報道するわ」
「批判的に」
「けれどね」 
 それでもというのだ。
「インスタントラーメンはないわ」
「本来はそちらの方が多いというのに」
「私はラーメンの方が好きよ」
 懐石料理よりもというのだ。 
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