八条学園騒動記
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第五百四十二話 朝早くだったのでその五
「液体として一滴垂らしてみる」
「そうしてですね」
「実験じゃ、そうなればな」
「開発、そして製造ですか」
「それにかかろう」
「旅行から戻られてすぐですが」
「何、もう寝たわ」
今日はとだ、博士は野上君に笑って話した。
「今日も八時間な」
「それだけ寝られたからですか」
「休む必要はない」
「それで、ですか」
「すぐに開発してな」
「生体実験をですね」
「しよう、しかし毒ガスはな」
今度はこの兵器の話もした。
「いい兵器じゃ」
「そこでそう言うかよ」
「とんでもないね」
ライゾウもタロも博士の今の発言には呆れた。
「毒ガスをいい兵器とか」
「普通の人は言わないぜ」
「何を言う、安価で製造出来てじゃ」
博士はコストパフォーマンスは気にしない、だが兵器の製造と開発にあたっては重要な要素の一つなので言ったのだ。
「大漁に出来て殺傷能力も高く」
「とんでもねえじゃねえか」
「どう聞いても」
「しかも広範囲に利いて拡散もする」
「それでいいっていうのかよ」
「毒ガスは」
「人類が生み出した最高の兵器の一つでじゃ」
博士はさらに話した。
「使用禁止になったのが残念じゃ」
「いや、普通に禁止されますから」
野上君もこう突っ込みを入れた。
「とんでもない兵器ですから」
「一次大戦後禁止されてか」
「国際条約でそうなることも」
このこともというのだ。
「人類の良識ですよ」
「わしの全く興味のない言葉じゃな」
良識、それがというのだ。
「良識だのいう言葉じゃ」
「博士はそうですよね」
「うむ、しかし毒ガスを禁止するなぞ」
それこそとだ、博士はまた言った。
「あってはならぬことであった」
「そうなんですね」
「うむ、しかしわしはじゃ」
「国際条約とか国際法を無理されますね」
「最初からな、それで連合ではもう失われた技術になったが」
少なくとも表立ってはそうなっている、中央政府軍も各国軍も所持どころか研究すらしていない状況である。
「しかしな」
「博士としてはですね」
「大好きな技術でじゃ」
それでというのだ。
「今回もじゃ」
「開発されてですね」
「製造もしてな」
「使用されますね」
「造ったものは使う」
博士は言い切った。
「そうすることが科学であろう」
「まあそれはそうですけれどね」
「それでじゃ」
「毒ガスもですか」
「完成したらな」
その時はというのだ。
「ヤクザ者の事務所にでもじゃ」
「放り込んで」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「使う」
「そうされますか」
「そして効果をその目で確かめる」
「この場合の成功は」
「ヤクザ者が皆死ねばじゃ」
その毒ガスでというのだ。
「研究の通りにな」
「そうなればですか」
「僅かな量で死ぬが」
それだけでなく、というのだ。
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