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おぢばにおかえり

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第五十六話 卒業式の前その二

「それでいいわね」
「そうなるのね」
「まだ時間もあるし。ゆっくりと勉強しなさい」
 こう私に言ってくれました。
「いいわね」
「ええ、じゃあね」
「高校三年間そして大学の四年間で」
 それでというのです。
「じっくり勉強出来てると思うけれどね」
「おみちのことを」
「そう、それとね」
「それと?」
「誰かいい人いたのかしら」
 私にこんなことも聞いてきました。
「それで」
「いないわよ」
 私はお母さんにすぐに答えました。
「そうした人は」
「いないの?」
「いると思う?」
「何かいそうな感じがするし」
 それでとです、お母さんは私にこう言葉を返してきました。
「それに最近詰所とか学校でいつも会ってる人いるのよね」
「まさかと思うけれど」
 そう聞いてです、私は阿波野君のことを思い出しました。それでお母さんにもあの子のことを言いました。
「阿波野君のこと?」
「そう、去年の夏にうちの教会も来てたわね」
「あの子は後輩で」
 ただの、です。
「何でもないわよ」
「そうなの?」
「そうよ」 
 このことはお母さんにも言いました。
「何でもないわよ」
「そうかしら」
「いや、そうかしらじゃなくて」
 お母さんにもさらに言いました。 
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