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八条学園騒動記

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第五百四十一話 研究室に戻ってその十一

「その日で全て終わりではない」
「だからか」
「無理せずにだね」
「寝てな、どっちにしても徹夜ではな」
 これを行うと、というのだ。
「次の日まともに働いたり勉強することは無理じゃ」
「だよな、疲れすぎて」
「そうなるね」
「おいら達なんか半日でも辛いぜ」
「一日それ位しか寝ないとね」
「猫や犬と人間は違うにしても」
「それでもね」
 完全に徹夜すればというのだ。
「滅茶苦茶疲れて」
「確かに次の日大変だよな」
「ちゃんとお仕事とか出来るか」
「不安だよな」
「それが三日連続となるとな」
 そこまでになると、というのだ。
「もうどうじゃ」
「早死にも当然か」
「そんな無茶したら」
 博士は神戸の美しい姿を見つつさらに話した。
「だからわしも言う」
「一日のうち絶対に寝る時間が作れ」
「その様にだね」
「例え一時間でも寝ると」
 一日のうちでというのだ。
「違う、しかし出来るだけな」
「沢山寝ろ」
「そういうことだね」
「夜の四時に寝て七時に起きても」
「それもすげえな」
「四時って殆ど明け方じゃない」
「一睡もせんより全然いいが」
 それでもというのだ。
「人によるがやはり多く寝る方がな」
「身体にはいい」
「長生きも出来るんだね」
「そういうことじゃ、しかし三日も徹夜で漫画を描くなぞ」
 博士はまた石ノ森章太郎のことを思った、偉大と呼ぶにはあまりにも偉大過ぎるこの漫画家のことを。
「相当に漫画が好きだったのう」
「好きじゃないとな」
「そこまで出来ないしね」
「そう考えるとな」
「そのことは純粋に凄いね」
「手塚治虫もな」
 この異才もというのだ。
「漫画を純粋に何処まで愛しておった」
「だから描いて描いてか」
「過労になってもだったんだね」
「あれで人間臭いところもあった」
 いい意味でも悪い意味でもだ、このことは。
「野球漫画や熱血漫画、ゲゲゲの鬼太郎等に嫉妬を抱いたりな」
「えっ、嫉妬って」
 手塚治虫のこの感情についてタロはまさかという顔で言った。
「ちょっと」
「信じられんか」
「だって今も詠まれていて」
「当時から話題であったぞ」
「それで売れっ子だったんだね」
「生活は困っておらず」
 それだけでなくというのだ。
「戦後の漫画界の頂点にい続けた」
「そうだよね」
「デビューしてすぐから亡くなるまでな」
「それでもなんだ」
「うむ、他の漫画家やその作品にな」
「嫉妬していたんだ」
「それで負けるかとじゃ」
 そして負けていると思って危惧や焦燥を覚えてだ。
「必死に描いていって作風も変えたりな」
「そうしていたんだ」
「スポーツ漫画は描けんかったが」
 野球は阪神ファンで昭和二十五年の時点で今阪神は弱いからと言って描かずそして亡くなるまで描かなかった。その間阪神は三回しかシーズン優勝を果たしていない。 
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