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戦国異伝供書

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第六十三話 成長その九

「まずはです」
「元服してじゃな」
「奥方様とお子を」
「それではな」
 竹千代は榊原の言葉に頷いた、そうしてあらためて妻を迎え子を為すこともと考える様になった。その中で。
 竹千代は義元に今川一門と公卿そして重臣達を集めた宴において義元が言った魚料理を前に出された、それは。
「油で、ですか」
「揚げたものであります」
 厨房の者が竹千代に話した。
「これは」
「魚を油で揚げるか」
「はい、鱗を取ってから」
 そのうえでというのだ。
「揚げるのです」
「そうしたものか」
「これが実にでおじゃる」
 義元は竹千代に上機嫌で話してきた。
「美味でおじゃる」
「そうなのですか」
「刺身も用意しているでおじゃるが」
 見ればそちらもある。
「今宵はでおじゃる」
「宴の主役は」
「それでおじゃる」
 魚を油で揚げたものだというのだ。
「遠慮なく食するでおじゃる」
「さすれば」
「そしてでおじゃるが」
 さらに言う義元だった。
「見ればわかると思うでおじゃるがこの魚は」
「鯛ですか」
「それをでおじゃる」
 第一とされているこの魚をというのだ。
「料理したものでおじゃるからな」
「味は言うまでもなし」
「左様でおじゃる」
 まさにというのだ。
「だからでおじゃる、お主も」
「食べるべきですか」
「先日麿が言った通りにでおじゃる」
 食べてというのだ。
「楽しむでおじゃる」
「それでは」
 竹千代は義元の言葉に頷き鯛を油で揚げたものを実際に食べてみた、そうして一口食べてすぐに言った。
「これは」
「美味いでおじゃるな」
「刺身や吸いもの、塩焼きも美味いですが」
 鯛のそうした料理もというのだ。
「これもです」
「そうでおじゃるな、では」
「はい、今は」
「遠慮なく食べるでおじゃる」
「今川殿、これはまた」
 白い衣の子供、竹千代とあまり変わらない歳の子が義元にその鯛を食べつつ言ってきた。
「美味いですな」
「助五郎殿もそう言われるでおじゃるか」
「まことに、相模では」
 見れば服の家紋は北条家のものである、明るく利発そうな顔立ちである。体格は竹千代より少し小さい。
「海の幸は豊かでも」
「こうした料理はでおじゃるな」
「ありませぬ」
「ほっほっほ、ではでおじゃる」
 義元は返事を聞いてさらに話した。
「どんどん食べるでおじゃる」
「一匹全てですか」
「食べるべきでおじゃる」
「助五郎殿、この料理はでおじゃる」
 ここで彦五郎も言ってきた。 
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