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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第3楽章~不滅の聖剣・デュランダル~
  第27節「廻り始める陰謀」

 
前書き
ひびみくの夫婦喧嘩の改変方法が一番面倒なので、苦労しながら先を悩んでいたこの頃。
コピペ作業とはいえ、疲れで更新が止まらないといいんだけど……。いや、止まるんじゃねぇぞ!最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に駆け抜けて!無事に一期までは終わらせるんだ!!

と、自分を鼓舞しながら作業してます。
アニメ13話はあっという間なのに、文字に起こすとこうも伸びるのは……ん?人数増やしたからでしょって?
ですよね~……後悔などあるわけ無い!! 

 
「た~いへん長らくお待たせしました~」
 脳天気な声と共に本部司令室へと入室して来たのは、待ち続けていた相手だった。
「了子くん!」
「何よ?そんなに寂しくさせちゃった?」
 振り返った叔父さんに名前を呼ばれると、了子さんは悪びれもせずに軽く返す。
「了子さん!よかった、無事だったんですね!」
「まったく、何処で油売ってたんですか!?」
「え?どしたの、そんなに慌てて」
 立花と俺も駆け寄ると、了子さんは不思議そうにそう言った。
 状況を把握出来ていない了子さんに、叔父さんは重たい面持ちで答える。
「……広木防衛大臣が殺害された。永田町からの移動中に、殺害されたらしい」
「ええっ!?本当!?」
「複数の革命グループから声明が出されているが、詳しい事は把握出来ていない。目下全力で捜査中だ」
 まったく、この日本にテロリストだなんて。穏やかじゃない世の中になったものだ、と頭を抱えたくなる。
「了子さんの事、皆心配してたんですよ!?連絡にも出ないで、一体どこで道草食ってたんですか!?」
「え?連絡……」
 俺からの問いに対して、了子さんは端末を取り出すと画面を確認して言った。
「あ~、ごめん。充電切れちゃってるわね」
「充電切れって……何やってるんですか……」
 呆れて口が空いてしまった俺に、めんごめんご、と手を合わせる了子さん。
 やれやれ……相変わらずこんな時でもマイペースなのが、この人らしい。
「でも、心配してくれてありがとう。そして、政府から受領した機密資料も無事よ。……任務遂行こそ、広木防衛大臣の弔いだわ」
 了子さんは機密資料のケースをテーブルに置き、中に入ったSDカードを取り出すと、真面目な表情でそう言った。
「……よし、緊急ブリーフィングを始める!」
 叔父さんの宣言で、俺達は中央会議室へと向かうのだった。
 
 この時、資料のケースの縁に付いていた僅かな血痕……広木防衛大臣の指で偶然にも残ってしまったダイイングメッセージに気が付いた者は、一人もいなかった。
 
 ∮
 
「それでは了子くん、皆に説明を頼む」
「私立リディアン音楽院高等科。つまり、特異災害対策機動部二課、本部を中心に頻発しているノイズ発生の事例から……その狙いは本部最奥区画アビスに厳重保管されているサクリストD、デュランダルの強奪目的と政府は結論づけました」
「デュランダル……」
 会議室の前にある巨大ディスプレイに、アビスで保管されている黄金剣、デュランダルの映像が映し出される。
「EU連合が経済破綻した際、不良債権の一部肩代わりを条件に、日本政府が管理・保管する事になった、数少ない完全聖遺物のひとつ」
「ああ。そして今回の任務だが、このデュランダルを安全な場所へ移送せよ、との政府決定だ」
「でも移送するったって、何処にですか?アビス以上の防衛システムなんて……」
 藤尭さんと同じ疑問を、俺も抱いていた。
 他に安全な場所なんてあっただろうか……?
「永田町最深部の特別電算室。通称『記憶の遺跡』。そこならば……という事だ」
「……防衛システムはともかく、シンフォギア装者の戦力を考えると、それでもここ以上に安全とは思えませんが──」
 友里さんからの指摘もごもっとも。
 いくら記憶の遺跡が政府の重要施設だとはいえ、聖遺物の扱いに長けた二課以上の安全性には欠けると思うんだけど……。
 すると、叔父さんは困ったような、達観の笑みを浮かべながら答えた。
「どのみち、俺達が木っ端役人である以上、お上の意向には逆らえないさ……」
 ああ……こればっかりは仕方がない。
 上層部からの命令である以上は、流石の叔父さん達でも逆らう事は出来ない。
 移送した後どうするかは、これからの課題になるんだろう。
 でも、狙われているデュランダルを移送する事さえ出来れば、リディアン周囲でのノイズ被害は激減する。それを考えると、一概に悪いとも言えない話だ。
 ここは従って正解だと、叔父さん達は判断したんだろう。
「デュランダルの予定移送日時は、明朝0500。詳細はこのメモリーチップに記載されています。みんな、開始までに目を通しておいてね~」
「いいか、あまり時間はないぞ!各自持ち場へ付いて準備を進めるんだ」
「「「「了解!!」」」」
 藤尭さん、友里さんを始め、職員さん達全員の声が会議室に響き渡る。
 明日の作戦実行に向けて、二課は動き出した。
 
「あそこがアビスですか……」
 了子さんがアームを操作し、デュランダルが保管された強化ガラスのケースを移動させている。
 司令室の画面に映ったカメラ映像を見て、立花が呟いた。
 俺も見るのは久しぶりだ。秘密基地の最奥区画にある、重要なアイテムが保管された区画なんて、いつ見ても心が踊る。
「東京スカイタワー3本分、地下1800mにあるのよ」
「はぁ……」
「いつ聞いても凄いよな……。よく作れたもんだよ」
 デュランダルはアームに掴まれ、輸送する為にエレベーターへと移される。
 操作を終えた了子さんは、俺達2人の方を振り返り、日本人にしてはとても上手なウインクをしながら言った。
「さあ、2人は予定時間まで仲良く休んでおいて。あなた達のお仕事はそれからよ」
「はい!」
「分かりました」
 時間までやる事の無い俺と立花は、一旦寮に戻る事にした。
 先に司令室を出て行く立花の後を追おうとして、ふと視界の端に目に入ったのは、了子さんが広木防衛大臣から受け取って来たケースだった。
 引き寄せられるように、俺はテーブルに置かれたケースの前へと立った。
「……広木防衛大臣……あなたの遺した最後の指令。必ず果たして見せます」
 ケースに触れると、そのまま敬礼する。
 当然ながら、俺は広木防衛大臣に直接会ったことはない。テレビや新聞、叔父さんの話で知っている程度だ。しかし、あの人が他人を思いやる心を持って国を守っていた事は知っている。
 それは、国を背負う役人として一番大事なものだ。叔父さんや父さんが胸に抱く、とても温かくて熱いものだ。……()()()にはないそれを抱いて国を守っていた人を、失ってしまったのは惜しい。
 だから、せめてもの弔いと、今までお世話になった御礼を兼ねて、俺はこの作戦に臨む。叔父さんと、父さんと同じ"防人"の魂を持っていたあの人が、きっと浮かばれるように……。
 
 ∮
 
「ただいま」
「おかえり、翔。遅かったね」
 寮に戻ると、純が夕飯の支度をしている所だった。
 エプロンの着こなし方までイケメンに見えるってのは、正直どうなっているんだろうと疑問になって来る。
「夕飯ならそろそろ出来るから、手洗ってくるなら今だよ?」
「あー、それなんだけど……悪いな。今夜もこれから出なきゃいけないんだ」
「また用事かい?」
「ああ。叔父さんの仕事の手伝いさ。明日の朝五時から始まるから、今夜は向こうで泊まり込んだ方が早い」
 真実8割、嘘2割。叔父さんの仕事の内容を隠しつつ、本当の事を言っておく。二課の任務で出る時、純にはいつもこう言うようにしている。
 叔父さんの仕事はとある音楽関連企業の管理職で、俺は将来そこに就職するため、インターンシップに参加しているのだと。
 
「泊まり込みだって!?そういう事は早く言ってくれよ~。ちょっと待ってて……夕飯、タッパーに詰めるから。ちょうど今夜は包み焼きハンバーグなんだ」
「なんと!?それはありがたい!米は自分で用意しよう。おにぎりにすれば、持ち運びにも困らないからな!」
「じゃあ、僕はその間におかず一式、詰め込んでおくね」
 そう言って俺達は、夕飯をタッパーへと詰め込み始める。
「そうだ、いつも通りなら、おかわりもあるよな?」
「翔が沢山食べるからね。ハンバーグはいつもの通り、4つ作ってあるよ」
「じゃあ、その2つも持って行こう。食べさせたい娘がいるんだ」
「それって、この前言ってた中学の頃の?」
 何故それを!?と驚く俺に、親友はさも可笑しそうに笑って答える。
「だって、あの後も逢い続けてるんだろう?帰ってくる度にいい顔してるの、もしかして自覚してなかったのかい?」
「そんなにか……。やれやれ、純には敵わないな……」
「他人から必要性を感じ取るには、まず相手をよく観ることから。王子様の鉄則さ」
 そう言って、爽やかに笑う親友。爽やかイケメンスマイルが本当に似合うやつめ……。
 
 こうやって純は、"王子様"という在り方に拘っている。理由を聞いてみたところ、昔、遠くへ行ってしまった幼馴染の女の子との約束なんだとか。
 アイオニアンのプリンス、とあだ名されるこのイケメンは、本気で王子様ってのを志している。むしろ、そのあだ名に自負すら抱いている。
 だからこそ、爽々波純という男はとても眩しい。
 子どもの頃の約束を律儀に守って、ここまで自分を磨き続けてきたんだ。いつかきっと、約束の相手にも再会出来るだろう。
 いや、むしろこっちから迎えに行く方かもしれない。いつだって、王子様はお姫様を迎えに行くものだからな。きっと純もそう答える筈だ。
「お前のそういう所、嫌いじゃないよ」
「それはどうも。はい、これでいつでも美味しく食べられるよ」
「おう!それじゃ、行ってくる。帰りは明日の午後になるな」
 純からタッパー入りの布袋を受け取り、玄関へと出る。
「了解。それじゃ、寮監にバレないようにね」
 親友に見送られ、俺は再びリディアンへと向けて歩き出した。 
 

 
後書き
クリスとの再会に向けて。あと、前回クリスの夢のせいで広まった誤解を解く為にも、純くんの出番はもう少し増やしていかないとなぁ。
え?王子様っていうより主婦感あるって?
元ネタがプーサーだからかなぁ……。あと、クリスが食べ専だから、家事万能型にしたのも原因かもです。
さて、皆さんお待ちかね。修行中(平日夕刻)のアクシデントネタです。

翔「ふう……これで今日の修行は終わりだな。さて、いい汗かいたし、シャワーでも浴びて来ますk……」(風呂場のドアを開ける)
響「へ?……うええええええええええ!?翔くん!?」(丁度髪を拭いていた所)
翔「うぉあああすまん立花!!」(慌ててドアを閉じると背を向ける)
響「わああああみっ、みみみ、見てないよね!?何も見てないよね!?」(ドアをガタガタさせながら)
翔「見てない!見てない!何も見てないぞ!?」(ドアに背を向けて首を思いっきり横に振りながら)
響「本当!?本当に何も見てないんだよね!?もし嘘だったら、うら若き乙女の裸を見た罪は重いんだからね!責任取ってもらわなきゃ困るんだからね!!」
翔「俺は風鳴の男だ!この名前に賭けて、嘘は言わない!もし嘘だったら、責任でも何でも取ってやるよ!!」
響「……あ、いや……翔くん、その……何も私、そこまでは言ってないんだけど……」
翔「……あ!いや、これはそういう意味での『責任』じゃなくてだな!?」
響「そっ、そそそそうだよね!?っでっ、でも、名前に賭けて責任取るって言い方はちょっとあらぬ誤解を招くんじゃないかな!?」
翔「あああああ!確かに誤解を生むなぁ!?だっ、だが立花、君も今の流れで安易に責任という言葉を使うのはっ、そのっ、君の方も相手にあらぬ誤解を生んでしまうぞ!?」
響「わああああ本当だーっ!?でもっ、私そういうつもりで……」
翔「別に俺はそういうつもりで……」
響・翔「「深い意味があって言ったわけじゃ、ないんだからな(ね)ッ!?」」
響・翔「「……///」」(ドア越しに背中合わせで座り込み、お互い真っ赤になった顔を両手で覆っている)

弦十郎「……若いな」(悲鳴を聞いてすっ飛んで来たけど空気読んで隠れてた)
緒川「思春期真っ只中ですねぇ」(上に同じく。なお、途中から全て録音済み)

次回、デュランダル護送前夜の翔ひび+緒川さんの会話をお楽しみに。
……敵が巨大ノイズで、翔ひびがくっついてれば、デュランダルでケーキ入刀ネタになるのに。護送前夜っていうか、結婚前夜?
って事は、ビッキーの花嫁衣装は例のセクシーウエディングドレスか……。翔くんがタキシードの上着の部分羽織らせようとするのが浮かぶ……(気が早いぞ作者←) 
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