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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第1楽章~覚醒の伴装者~
  第13節「強襲-アサルティング-」

 
前書き
早速新規読者がお気に入り登録してくれてたり、感想欄に見慣れた人が現れてけれて嬉しい。滅茶苦茶嬉しすぎて、作業速度がどれだけ進むことか!!

さて、今回は響のバトルシーンとRN式のお披露目です。
「撃槍・ガングニール」を流しながらお楽しみください。 

 
 ガコンッ!ウィーン……。

 コンテナの扉が開き、外からの明かりが中を照らす。
 外へ出ると前門にノイズ、後門にもノイズ。現場は既に四面雑音状態だった。
『翔!翼が開いた道から、合流ポイントGまで走れ!』
 叔父さんからの指示で、合流地点までの距離を確認する。
 輸送車が今来た道を引き返した先にある、ここから最も近い合流ポイントだ。
 確かに、走って合流するならここから近い方場所の方がありがたい。
 だが、俺はこの状況に疑問がある。そのため、一旦黒服さん達と共にトレーラーの陰に隠れると、叔父さんに進言した。
「いえ、ここは前方のポイントAへと向かうべきかと」
『なに?どういう事だ!?』
「藤尭さん、友里さん、姉さんと立花がそれぞれ相手にしているノイズの数、調べられますよね?」
『え?ええ……直ぐに出せるわよ』
『データは翔くんと司令の端末にそれぞれ転送します』

 オペレーターの二人から届いたデータを確認すると、予想は当たっていた。
「やっぱり……。おじ……司令、以前言ってましたよね?ノイズの出現がリディアン周辺に集中しているのは、何者かが陰からノイズに指示を出している可能性があるって」
『ああ。だが、あくまで憶測の域を出ん推論だ』
「でもこの状況。群体の割には挟み撃ちなんて手の込んだ真似、どう考えても何者かの指示があったとしか思えません。敵はノイズを統制する何らかの技術、ないし聖遺物を所持していると見て間違いないのでは?」
『なるほどな……。という事は、お前はこの状況を仕組まれたものだと見ているわけだな?』
「はい。そのデータを見てください」
 本部から送信されてきた、ノイズの数を示すデータ。
 それによれば、姉さんが相手にしているノイズの数の方が、立花の方に現れたノイズよりも数が多く、姉さんが一瞬道を切り開いても直ぐにノイズが溢れてしまう状態になっている。
「広範囲攻撃が使える上、熟練度が立花より遥かに上の姉さんに戦力を集中させ、逆に素人である立花の方には必要最低限の戦力で対処させる。この戦略的な布陣で、ノイズの数が集中している姉さんの方へ向かうのは危険です」
『ああ、そうだな。しかし、それも敵の罠かもしれんぞ?お前が立花の方を突っ切ってポイントAまで向かえば、その途中で本命の戦力とばったり出くわすかもしれん』
「罠や伏兵の可能性は重々承知してますが、ここは敢えて乗っかるのが得策だと判断します」

『そこまで言うなら心配は不要か。よし、前方を突っ切り合流ポイントAへと向かえ!』
「了解!」
 端末をポケットに仕舞い、左手に持ったケースの持ち手を握りしめる。
 そして、左腕に嵌められたRN式回天特機装束のブレスレットを見つめた。
「頼むぞプロトタイプ……。お互い、初任務を華々しく飾ろうや」
 タイミングを見計らうと、リーダー格の黒服さんからのハンドサインを受け、俺は一気に走り出した。

 ∮

「絶対に離さない、この繋いだ手は!」
 迫って来るノイズへと向けて、思いっきり腕を振るう。
 軽く吹き飛ばされたノイズは宙を舞い、道路の側壁にぶつかって消滅した。
 続けて目の前まで来ていたノイズの顔を、力いっぱい殴る。
 こっちも顔の部分から土人形のように崩れ落ち、炭の山へと変わっていく。
 短い時間の間にどんどん倒していく翼さんに比べれば、一匹ずつだし、全然遅いけど……私、戦えてる!
 そう思うと、より一層頑張れる気がしてきた。
「ノイズなんか……怖くない!!」

 そう言った瞬間だった。背中に何かがぶつかったような強い衝撃が走り、バランスが崩れる。
 背後から飛んで来たカエル型ノイズが体当たりしてきたと気付いたのは、足が縺れて転ぶ直前だった。
「うわぁっ!?」
 咄嗟に両手を出して、身体が地面に打ち付けられるのだけは避ける。
「いった~……後ろからなんて卑怯だよ!」
 起き上がろうとした時、目の前を駆け抜けていく人影が目に入る。
 翔くんだ。生弓矢の入ったケースを抱えて、翔くんは脇目も振らずに全速力で走り抜けていく。
 歯を食いしばり、一生懸命に駆け抜けていくその姿はとても真っ直ぐで、その姿に私は目を奪われた。
「翔くんが頑張ってるんだ!私も、これくらいで負けられない!」
 もう一度立ち上がり、思いっきり深呼吸した私は、翔くんの方へと全力で駆け出した。



「はっ、はっ、はっ、はっ……」
 立花の方へとノイズが集まっている隙を突き、全速力で走り抜ける。
 本当は助けに行きたいところだけど、戦う力を持たない俺が行っても足でまといなだけだ。ここは堪えて、自分の任務に集中するしかない。
 何体かのノイズがこちらに気が付き、紐状の姿に変化して襲ってくる。
 その猛攻をステップとジャンプで華麗に避けながら、更に先へと走る。
 でもこれが精一杯だ。ケースがもう少し重かったら、とてもこんな真似は出来なかっただろう。
「RN式はッ!タイミングを見計らっ……て!」

 しかし、それでもやはり限界は来る。着地の瞬間、背後の側壁にノイズが衝突した衝撃で、前方に吹っ飛ばされる。バランスを崩した身体が宙を舞った。
「くっ……使うなら今か……!」
 抱えていたケースの留め金を外し、ケースが開いた瞬間、中に収められていた鏃を掴む。
「RN式回天特機装束、起動!」
 鏃を掴んだ瞬間、左腕のブレスレットが一瞬だけ発光する。その瞬間、身体全体を虹色の保護膜が包み込むのが確認出来た。

 そして次の瞬間、受身を取った直後に俺は地面を転がる。
 暫くころがって……特に痛みを感じることも無く、俺は起き上がった。
「あれだけ勢いよく転がったのに、擦り傷ひとつ付いてない……。どうやらしっかり展開されてるみたいだな」
 RN式の効果が発揮されている事を確認しながら起き上がり、再び走り出す。
 しかし、効果の実感は無傷の身体だけではなかった。起動してからまだ30秒と経っていないが、少しだけ身体が怠い。
 RN式のデメリットで、精神力が少しずつ削られて来ているのを表す疲労感だ。
 急がなくては。このままでは、肉体的疲労よりも先に精神的疲労で体力を削られ、無防備な状態で倒れる事になる。
 合流地点まではまだ半分。心を強く持って走り続ければ、何とか間に合う!
 そう自分に言い聞かせながら走り続ける。が、やはり邪魔者は現れた。

キュピキュピッ!キュピッ!

「ノイズ……邪魔だァァァァァ!!」
 速度を落とすこと無く、むしろより一層加速しつつ、握った拳を勢いに乗せて思いっきりヒューマノイドノイズの顔面部分へと繰り出す。
 殴られたノイズはきりもみ回転しながら吹っ飛び、地面を転がって行った。
 なるほど。確かに殴っても何ともないし、流石にワンパンで倒せたりまではしないが、こちらの攻撃が効いている。
 この調子で進み続ければ、何とかなる!

 ……と、そう思っていたのだが。現実は非情だった。
 そのままノイズを退けながら走る。飛びかかってきたクロールノイズを躱し、サッカーボールのように蹴り飛ばした直後だった。
「うっ……か、身体が……重い……」
 RN式を起動して、僅か3分足らず。足を進める度に、どんどん身体が重くなっていった。
 小刻みに息が途切れる。肺が悲鳴を上げ、心臓が破裂しそうなくらいバクバクと鳴っている。
 持久走には自信があるのに、体力は自分の予想よりも早く削られていた。正直言って、もう立っているのがやっとだ。
「まだ……まだ、だ……俺は、行かな……きゃ……」
 ゆっくり、よろよろと足を進める。しかし次の瞬間、全身から力が抜ける感覚があった。
 糸の切れたマリオネットのように、その場に崩れ落ちる。
 なんとか身体を仰向けにすると、どんよりと曇り始めた空が見えた。
 両手を見て、両足を見る。虹色の膜は、もう消えていた。俺を守る光の鎧は、既に力を失っていたのだ。
 ああ、とても耳障りな鳴き声が聞こえる。声の方向を見れば、先程のノイズ達が集合し、全長5mほどの巨大な個体、強襲型(ギガノイズ)へと融合していた。
 芋虫のような外見のそれは、動けなくなった俺の方へ向かいゆっくりと迫って来る。

「ここまで……なのか……?」
 悲鳴を上げる力すら残っていない事を自覚した瞬間、目の前を様々な光景が駆け巡る。
 小さい頃、ラジカセとマイクで姉さんの歌を聴いた夜の事。今でも若いけど、もう少し若かった頃の緒川さんを含めた3人で遊んだ日の事。
 厳しくて不器用だった父さん。優しくて頼りになった叔父さん。
 マイペースだけど、話してて楽しかった了子さん。
 よくボヤいてるけど、仕事を卒無くこなす姿がかっこよかった藤尭さん。
 いつも温かいコーヒーを、適温で用意してくれた友里さん。
 将来の夢を笑って語り合い、この一年近くを共に過ごした親友、純。
 皆との思い出が次々と、一瞬の内に駆け抜けて行った。

 そして最後に……あの日、俯いていた少女の手をようやく握る事が出来た瞬間の光景が、ひときわ輝きを放つ。
 立花、響……君にもう一度出会えた事を、心の底から天に感謝してる。
 赦してくれて、ありがとう。お陰でようやく安心することが出来た。
 ヒーローだって言ってくれて、ありがとう。その一言で、ようやく報われた。
 素直に泣かせてくれて、ありがとう。君の涙を見られた事が、ようやく君の手を掴めたんだと実感させてくれた。
 そしてなにより、眩しいくらいの輝きを放つ、心からの笑顔をありがとう……。
 ごめん、立花……。お好み焼き食べるって約束したけど、僕はもうダメみたいだ……。

 死神の足音はすぐそこまで迫っている。身体はRN式の副作用による疲労で、もう動かない。
 僕の精神力じゃ、結局3分止まりかぁ……。でも、街を破壊する大怪獣から地球を守ることは出来るくらいの時間は持ったんだ。
 充分保った方なんじゃないかな……。

「でも……まだ……もっと、沢山……生きて、いたかった……」



















「翔くん!!」









声が聞こえる。








僕の名前を呼ぶ力強い声が。








耳を打つだけで、僕に希望をくれる──








()の原点を司る、太陽の如き少女の叫ぶ声が。
































「生きるのを諦めないで!!」

 その声と、直後に響き渡る打撃音に目を開くと……。
 目の前には頭頂部を思いっきりぶん殴られ、バランスを崩してよろけるギガノイズ。
 そして、空高く跳躍した勢いを全て右腕に乗せて、ありったけの力で拳を叩き込み……こちらへと顔を向ける、立花の姿があった。 
 

 
後書き
これ投稿した日、繋がる絆を司る銀色の巨人の配信日だったんだよなぁ。
あのとても印象的な初登場シーンを再現してもらいました。例のBGM流すとそれっぽく見える……といいなぁ。

翔「危なっ!走馬灯見えた時はもう出番終わりかと心配したぞ……。え?走馬灯の中に映ってない人がいた?誰が知るかあんなクソ爺!走馬灯にまで紛れ込んだら俺は死んでも死にきれねぇぞ!そもそもあの爺、顔見る度にイライラすんだよ!いつもいつもいつもいつも自分は現場に出てこないくせにさぁ!?なーにが(ry」
(以下、丸々カット)
翔「それにしても、また立花に助けられちまったな……。今度、個人的な礼として何かしてやりたいんだけど、立花といえばやっぱり飯だよな。何処か美味い店、探しとかないと……」

次回、迫るノイズから逃げるんだよォォォ!! 
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