| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語

作者:マルバ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

SAO編 主人公:マルバ
二人は出会い、そして◆違うよって言わなきゃいけないのに
  第二十四話 結成!《リトル・エネミーズ》!!

 
前書き
そろそろ章の数も増えてきて入力がめんどくさくなってきました。 

 
二十四 結成!《リトル・エネミーズ》!!

「ミズキ!」
「おうよ!」
マルバがフィールドボスに最大限の連続攻撃を叩き込んだ。マルバは当然のように長い硬直時間を課されるが、それに対してボスにはディレイが効きにくい。結果としてヘイト値を上昇させることになったマルバは攻撃の的になるが、マルバにボスの攻撃が届く前にミズキが盾を構えて割り込み、その攻撃に対し斜めに大盾をぶつけ剣先を逸らし、そのままシルドバッシュを繰り出した。
ミズキはかなり特殊なビルドである。敏捷型のタンクなんて彼の他にはいないだろう。彼には大盾の筋力要求値ぎりぎりの筋力しかなく、どちらかと言えば敏捷性に振ったポイントの方が多い。故に、彼は回避と防御を両立させた珍しい戦い方をする。敵の攻撃が少ない時には回避や受け流しの後に隙を付いてシルドバッシュで攻撃も担当し、攻撃が多い時には大盾に身を隠すことでひたすらに防御に専念することができる。攻撃頻度に応じて回避と防御を切り替える、攻防一体の戦闘スタイル。それがミズキの強さの所以である。

「アイリアさん、スイッチいきます!」
「まかせて!!」
ミズキの盾から飛び出したシリカが短剣の連続技を決めた。その姿が一瞬硬直し、無防備になる。その瞬間を逃さず攻撃しようとするボスだが、繰り出した攻撃はシリカに届くはるか手前でアイリアの槍が弾き返した。
アイリアの攻撃手段は片手用の槍による刺突・斬撃、槍の柄での破壊攻撃と非常にバリエーションが多彩である。それは防御も同じで、槍でのパリィも小盾による受け流し・防御も可能なのだ。更に、受けたダメージはバトルヒーリングスキルによって何もしなくても少しづつ回復する。継戦闘力特化のスタイルと言える。悪く言えば器用貧乏なのだが、彼女は大量にあるスキルの中から使うスキルを少数に限定することで迷うことなく状況に合った攻撃と防御を行なっていた。右手で振り回す槍は攻防一体で、左手の盾の出番は滅多にないといっていい。

回避・攻撃速度特化のシリカ、射程・攻撃手段特化のマルバ、防御・カウンター特化のミズキ、継戦闘力特化のアイリア。それぞれの戦闘スタイルはかなり癖が濃いにも関わらず、連携は非常に良かった。それぞれが十分な攻撃手段と防御・回避手段を持っていて、ソロで十分にやっていける能力を持っているからこそ、援護が必要な時に仲間に助けを求められるし、求められた助けに応じることができるのだ。仲間を信用して戦えるのはとても安心感があり、命を懸けた戦いだというのに楽しささえあった。




フィールドボス戦の後、思ったより疲労がなかったマルバたちはそのまま迷宮区の探索を行うことにした。沢山の隠し扉を発見し、多額のコルといくつかのレアアイテムを入手、意気揚々と迷宮区を後にした彼らはいつの間にか夕方になっていたことに気づいて驚いた。
「いやー、今日は働いた働いた。大漁だぜ。一日でこんなに稼げたのは初めてだな。」
「うん、そうだね。ボス戦の暫定パーティーだったはずなのに随分楽に戦えたなぁ。」
「ぜんぜんオーソドックスなビルドじゃないけどよ、案外俺たちって相性いいんじゃねぇか?」
「あ、それは私もそう思ったよ。手伝って欲しい時に一言声をかけるだけですぐに誰かが助けに来てくれるし、すごく楽だった。」
「いつもだったらポーションがないと回復が間に合わないんですけど、今日はピナのヒールブレスだけで十分でした。アイテム代ゼロですよ!」
「ボス戦やった直後だったのにみんなぜんぜん疲れてないんだもんね。せっかくだからこのまましばらくパーティー組みたいなぁ。」

マルバの発言に全員が賛同する。そして、アイリアがこんな提案をしてきた。
「じゃあさ、お兄ちゃ……じゃなかった、マルバくん。私はいままでソロだったし、マルバくんとシリカちゃんは二人でパーティー組んでるだけでギルドに入ってたわけじゃないんでしょ?それなら、この四人でギルド組んじゃったらどうかな。」
「おお、それはいいな!!俺も野良パーティーで狩りしてただけだからギルドには入ってねぇんだよ。ギルド作るっていうんなら喜んで入らせてもらうぜ。」
「ギルドかぁ……。僕はいままでギルドに入ってたわけじゃないからなんか変な感じだなあ。シリカ、どうする?」
「……わたしは……。マルバさんが入るっていうなら入ります。」
「そう?……うーん、ごめん、少し考えさせてくれないかな。明日までに答えを出しておくから。それでいい?」
「ああ、ぜんぜん構わないぜ。な?」
「うん、急に言われても困るよね。それじゃまた明日聞くね。」

四人は圏外村パニにたどり着いた。シリカは信用回復クエストを受ける暇がなかったため、今はまだオレンジカーソルであるが、ここは圏外なのでオレンジプレイヤーも問題なく立ち入れる。シリカは明日信用回復クエストを受けるつもりでいた。
四人は二人と二人に分かれ、シリカとマルバは少し話をするために丘へ、アイリアとミズキは先に宿へと戻っていった。


丘の頂上にふたり腰掛けると、マルバは話を切り出した。
「シリカ、どうしたの?元気ないね。」
「……そうですか?わたしはそんなつもりないんですけど。」
「そう?なんか無理してる顔だよ。」
「……やっぱりわかりますか?マルバさん、鋭いですね。」

シリカはため息をひとつつくと、ゆっくりと話し始めた。
「わたし、ギルドに入る気はないって前に言いましたよね。それはマルバさんに付いて行きたいからだって。」
「うん、言ってたね。あ、それでミズキたちと一緒にギルドには入りたくないっていうこと?」
「いいえ、違います。一緒にパーティー組んでみて分かりましたけど、ミズキさんとアイリアさんと一緒にいるととても戦いやすかったし、安心できました。だから、ミズキさんたちとギルドを作るのは反対じゃないです。」
「うーん、それじゃなんで?何を心配してるの?」
「……わたしにもよく分からないんです。ミズキさんたちと一緒に戦うのは楽しかった。でも、それはマルバさんと二人でパーティーを組んでいたときも一緒です。私がマルバさんと肩を並べて戦えるようになってから、二人で迷宮に挑むのは怖かったけど、とても楽しかったです。……ミズキさんたちと一緒に戦ってたらマルバさんとの一緒の楽しかった時間が逃げて行っちゃう気がするんです。うまく言葉にはできないんですけど、そんな感じなんです。」
「そっか。……確かにミズキやアイリアたちと一緒に戦えばシリカと一緒の時間は減っちゃうもんね。」
「そうです。……わたしはマルバさんと一緒にいたいんです。」
「……でも、ギルドを組んでもきっと僕たち二人の時間は変わらないよ。今までどおり、シリカと一緒に武器屋に行って一緒に武器を選んだり、武器の素材集めの手伝いをしたり、ピナやユキと遊んだり、そんな時間は絶対に変わらない。僕はそう思うよ。」
「そう……ですね。そうですよね。二人が四人になるからって全てが変わるわけじゃないですもんね。」
「うん、そうだと思うよ。……僕はシリカについていきたい。君がギルドに入りたくないっていうんなら、明日一緒に断りに行こう。一晩考えればいいよ。僕だって……シリカと一緒にいたいんだ。今までどおり君と一緒に居られないっていうんならギルドには入りたくない。」

マルバは恥ずかしそうに最後の台詞を付け足すと、立ち上がった。
「後でユキと一緒に君の部屋に遊びに行くよ。また後でね。」

足早に去っていくマルバの後ろ姿を見ながら、シリカは心の中のもやもやが晴れていくのを感じた。マルバとシリカの関係は変わらない。マルバがそういうならその通りなのだろう。シリカはギルドについて前向きに考え始めた。



翌朝。
「おはようございます!!」
「おっ、おはよう。」
「おはよっ、シリカちゃん。」

シリカはマルバがその場にいないことに気づき、不思議そうに尋ねた。
「あれ……、マルバさんは?」
「あー、あいつはほら、あそこ。」

シリカがミズキの指し示す方向を見ると、そこではオルガンを演奏しながら歌うマルバの姿があった。
一曲演奏し終わると、マルバはシリカたちのテーブルにやってきた。
「おお、上手いじゃねぇか。」
「ありがと。」
「マルバくん、音楽スキルなんて上げてたんだね。ピアノの練習は投げ出したくせに」
「あー、悪かったね。音楽スキル使わなくても演奏できるし、アイリアも弾けばいいじゃん。」
「やだよ、恥ずかしい。」

音楽スキルとは、アインクラッドに存在する様々な楽器をリズムゲームの要領で演奏するスキルである。スキルレベルが上がると難しい曲が弾けるようになる。マルバはここに来る前はリズムゲームをやったことはなかったのだが、初めてやってみたら意外と楽しかったため本気でやることになったというわけだ。
録音機能が備わっていて、うまく演奏できたもののリプレイをしながら歌う、なんていう楽しみ方もあり、どちらかと言えばマルバはそうやって楽しんでいる。現実世界でのピアノの練習はどうしてもうまくいかなくて放り出したマルバだが、この世界では音楽スキルのおかげでオルガンだろうとフルートだろうとヴァイオリンであろうと楽しく演奏できる。うまくいけばマルバと違って幼い頃からずっとピアノの練習を続けていたアイリアと張り合えるくらいの演奏ができる点も音楽スキルのおもしろいところである。

「それで、シリカ。どうすることにしたの?」
「はい。わたし、決めました。ギルドに入りたいと思います。」
「……そっか。それなら決まりだ。」

マルバはアイリアとミズキに向き直ると、声を張り上げた。
「えー、ここにギルドの設立を宣言します!」

三人の拍手が宿屋の一階にこだました。



マルバは初めて見るギルド申請フォームを見ながらギルド作成に必要なことを確認した。
「さて、それじゃギルドを作成するにあたって……ええと……正副ギルドマスター?ってやつと、ギルド名を決める必要がある……みたいだね。ギルド結成に必要な再少人数は揃ってるし、あとは全員の承認だけ。それじゃ、まずはギルドマスターから。だれが適任だと思う?」

マルバの質問に真っ先に答えたのはミズキ。
「俺はマルバが一番だと思うぜ。」
「え……僕?なんで?」
「んなもんなんとなくに決まってんだろ。」
「えぇ~……。ええと、それじゃ、他のみんなは?」

「私もマルバくんに一票。」
「わたしもです。」
アイリアとシリカもそれに続いた。
「……だからなんで僕なの。」
「だってマルバさんしかいませんよ。ねぇ?」
「そうだよ、マルバくんしかいないよ。」
「……答えになってない気がするのは僕だけかなぁ……はぁ……まぁ、いいや。ギルドマスターだからって特に何か責任とかがあったりするわけじゃないし。それじゃ僕がギルドマスターね。」

マルバはギルド申請フォームのギルドマスターの欄に自分のIDを指定した。ついでに副ギルドマスターは勝手にシリカを指定しておいた。ギルドマスター権限というやつだ。正副ギルドマスターは後からでも変更可能なのだから適当に決めても構わないだろう。


「次、ギルド名。これは一応変更不可だから真剣に決めないと……。」
「え、変えられないの?」
「いや、変えられないことはないんだけど、変更手数料がけっこう高いんだよ。なんと1万コル。」
「うわ、ぼったくりですね。」
「そういうわけだからよく話し合って決めよう。まあこの人数なら一旦解散してもう一度組み直せば無料で名前変えられるんだけどね。」

議論すること数十分。マルバとアイリアは兄妹そろってネーミングセンスがないため、出した案は片っ端から否決されていった。ミズキもシリカもこれといったいい名前を出せずにいる。
そんな中、ついにアイリアがまともそうな案を出した。
「うーん……それじゃ、こんなのはどう?《リトル・エネミーズ》!」
「リトルエネミーズ……小さな敵?」
「ほら、私たちみんなビーストテイマーでしょ?」
「でも、アイリアさんは違うじゃないですか。」
「あー、それね。ギルド結成し終わったら紹介しようと思ってたんだけど……ほら、クロ。おいで。」

アイリアが呼びかけると、宿屋の隅から小さな黒猫が姿を現した。その首には銀色に輝く鈴が付けられていて、猫が駆けるのに従い、ちりん、と澄んだ音をたてる。黒猫はマルバの椅子を足台にして机に駆け上がると、テーブルの上で丸くなっていたユキの横に座った。ユキが身を起こし、不思議そうな目で新参者を見た。
「紹介するね。昨日の夜散歩していたら見つけた私の新しい友だち、クロです。」

見たことがないモンスターだった。その姿はともかく、鈴が付けられたモンスターなんて聞いたことがない。
クロはユキやピナ、フウカを含めたその場全員の視線を一身に浴び、居心地が悪そうに身繕いをした。
「種族名は“Black Kitten”。意味はそのまんま黒猫だね。とにかく見たことがないモンスターだからびっくりしたよ。鈴がついてるし、この子、元・家猫って感じがしない?圏外村にしか出現しない非アクティブモンスターなんじゃないかな?」
「なんだかよく分からんけど、良かったな!まさか全員ビーストテイマーのギルドができるなんて思わなかったぜ。」
「そうだね。おめでとう、アイリア。」
「おめでとうございます!」

みんなに祝福されてアイリアは嬉しそうにはにかんだ。
「ありがとう、みんな!」



結局、ギルド名は《リトル・エネミーズ》に決まった。 
 

 
後書き
はい、祝・ギルド結成!
さあ、出てきた新キャラ・クロ。実はこのクロですが、詳細がまだ決まっていません。『鈴』が重要なので、鈴を使ったヘイト値管理とかそういうモンスター専用スキルを考える予定ですが。決まったらまた後書きにでも書きます。

さて、つぶやきにも書きましたが、今日はじめてGGO編を読みました。いやー、表紙めくったところのシノンさん、かわいい。たくさんの方が彼女をヒロインに書いているのも頷けますね。
ところで、このシノンさんですが、“強さ”を手に入れようとします。その理由は、『大切な人を守るために罪を犯した』ことに起因しています。これはキリトも同じらしい……ラフコフ戦を読んでない私は詳細が分からないのですが。
とまあそういう話なのですが、なんとこの小説ではストックしてある第二十六話(仮)にてシリカ・マルバの両人がその“強さ”を手に入れてしまうんです。一気に精神的に強くし過ぎだろ!とか言われそうですが、実はそんなの強さでもなんでもなく、ただの“慣れ”なんですよね。
おそらく第二十六話(仮)は一週間たたないうちに公開するので、詳細はそれまでお待ちください。ちなみになぜ(仮)なのかというと、第二十五話に信用回復クエストの回を挿入しようか悩んでいるところだからです。


感想等、お待ちしています。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧