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八条学園騒動記

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第五百三十五話 焼き肉食べ放題その七

「僕の名前って呼びにくいんだね」
「だから物々しくてな」
「歌舞伎役者みたいで」
「結構歌舞伎役者の名前ってな」
「団十郎とか仁左衛門とか」
「歌右衛門にしても幸四郎にしてもな」
 こうした名前はというのだ。
「歴史も感じるしな」
「そのこともあるんだ」
「呼びにくいよ」
「そうだったんだ」
「ああ、それとこうした名前ってな」
 歌舞伎役者のそれはとだ、友人はホルモンを食べつつ野上君に言った。
「芸名だろ」
「本名じゃないよ」
「そうだよな」
「どの人も本名は全然違うから」
「市川團十郎さんもだよな」
「全然違う名前だから」
「芸名なんだな、あと芸名も」
 この表現もとだ、友人は言った。
「この呼び方もな」
「ちょっと違うんだよね」
「歌舞伎だとそうだよな」
「そう、まあとにかく僕の名前は」
「呼びにくいんだよ、あとそっちの博士もだろ」
 友人は野上君に彼が勤めている研究所の責任者にして雇い主である人類史上最凶最悪のマッドサイエンティストの話もした。
「皆天本博士って呼んでるよな」
「マスコミでもね」
「あれだってな」
「呼びやすいからだね」
「あの人の名前破天荒っていったよな」
「本名だよ」
「この本名で呼ぶこともな」
 これもというのだ。
「しっくりいかないだろ」
「破天荒っていうとね」
「それが本名でもな」
「それでだね」
「皆天本博士って呼ぶんだよ」
 その様にというのだ。
「それが呼びやすいからな」
「成程ね」
「呼びやすいのでな」
「仇名って決まるんだね」
「名前からでもな」
「それは僕もわかるけれど」
 それでもとだ、野上君はキムチを食べつつ友人に応えた。
「自分の仇名にそうした理由があるなんて」
「今まで思わなかったんだな」
「ちょっとね」
 友人にキムチを食べ続けつつ答えた。
「そうだったよ」
「そうか、けれどな」
「そうした事情があることはだね」
「事実だからな」
「成程ね」
「野上君って言うと呼びやすいんだよ」
 とにかくというのだ。
「僕としては新選組みたいな感じするけれどな」
「新選組って隊士を君付けで呼び合うしね」
「あれが恰好いいよな」
「うん、それはね」
 野上君にしてもだった。
「芹沢鴨が近藤勇を近藤君と呼ぶ時とか」
「恰好いいよな」
「風格もあるしね」
「近藤勇も隊士をそう呼んでな」
「土方さんや沖田さんに対しては別にしても」
「それでもな」
「他の隊士にはね」
 郷里からの間柄である彼等は別にしてもというのだ。 
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