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占術師速水丈太郎  死の神父

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第十二章

 今度は漆黒の、瘴気の無数の腕が地から出て来た。そうして速水に襲い掛かってきたがその腕達にだった。
 速水は小アルカナのカードを無数に出してだった、そのカード達を一斉に両手を使って自分の周りに投げ。
 カード達を竜巻の様に動かさせて腕達を切り刻まさせた、そうしてだった。
 防ぐが今度は前からだった。漆黒の稲妻が来た。その稲妻には教皇のカードを出そうとしたが。
 漆黒の稲妻は速水がカードの力を放つ前に打ち消された、打ち消したのは青い炎の球だった。速水は横から飛んで来て稲妻を相殺した炎の残りが消えていくのを観つつ言った。
「嬉しい出来事ですね、やはり私達は」
「赤い糸で結ばれているというのかしら」
「はい」
 その通りだとだ、速水は突如として聞こえてきた艶やかな女の声に対して答えた。
「左様です」
「言うわね、けれどね」
「それは違うと言われるのでしょうか」
「私は男女共に好きよ」
 女の声はその主がバイセクシャルであることを認めた。
「特に美女、美少女がね」
「左様ですね。貴女は」
「ええ。けれど貴方とはね」
 速水、彼とはというのだ。
「赤い糸はつながっていないわ」
「それはつれないお言葉。ですが」
「実はというのね」
「はい、私達はやはりです」
「運命の糸でつながっているのね」
「左様です、その証拠にここでもです」
 速水は左手炎が飛んできた方を顔を向けて見た、そこには黒づくめの妖艶な女がいた。
 黒いスーツとズボン、そして丈の長いコートを着ている。革靴も黒でありネクタイは赤、ブラウスは白だ。
 黒く長い髪の毛を後ろで団子にして束ね切れ長の黒い目の睫毛は長い。雪の様に白く面長の顔で唇は小さく紅色だ、速水はこの彼女を見て言うのだった。
「私達は会えたのですから」
「偶然よ、私はクロアチアの国教会から依頼を受けたのよ」
「神父を倒して欲しいと」
「ええ、邪悪に染まったね」
「貴女は確か」
 司祭はその美女を見て言った。
「松本沙耶香さんですね」
「そうよ、貴方とは以前バチカンで会ったわね」
「はい、以前貴女がバチカンの依頼を受けられた際に」
「少し懐かしい思い出ね、暫くぶりということになるわね」
「そうですね、貴女は」
「松本沙耶香。覚えているわね」
 女は微笑んで自ら名乗った。
「そうよね」
「はい」
 すぐにだ、司祭はその女沙耶香に答えた。
「忘れる筈がありません」
「忘れないというのね」
「貴女の様な方は」
 司祭はこう紗耶香に答えた。
「忘れられる筈がありません」
「それは私の美貌のせいかしら」
「そのこともありますが貴女の様な個性の強い方は」
 このことからというのだ。
「到底です」
「忘れられないというのね」
「左様です、それでクロアチアの国教会からですか」
「私は依頼を受けたわ、その神父を倒して人々の恐怖の種を消して欲しいと」
「左様ですか」
「だからね」
 それでとだ、沙耶香は静かに述べてだった。
 その右手に蒼い氷の刃を出してだ、その刃を。
 誰もいない筈の場所に投げた、するとだった。
 法衣の右肩の部分を切り裂かれた神父が次第に実体化する様に姿を現した。そのうえで言うのだった。
「私の気配を察して」
「まるで目が見える様にね」
 まさにと言うのだった。 
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