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占術師速水丈太郎  死の神父

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第十一章

「おそらく」
「それでは」
「場所を移りましょう、一つの場所に長居することは」
「こうした場合はですね」
「よくありません、ですから」
 それでと言うのだった。
「落雷達を落とさせたままです」
「ここを移動しますか」
「そうしましょう」
「それでは」
 二人は場所を移動した、それまでいた場所から三十メートル程動いた。そうしてなのだった。
 神父の次の出方を待った、すると。
 足元が急に揺らいだ、速水はそれを見て言った。
「これは」
「あの、足元が」
「地震か若しくは落とし穴か」
「そちらですか」
「落雷で周囲を護っても」
 それでもというのだ。
「足元はどうか」
「そういうことですか」
「これは危ういです、ここは貴方を飛ばさせて頂きます」
「貴方は」
「これ位のことは常です」
 速水の戦いの中ではだ、魔術や錬金術、呪術が飛び交う世界に生きている彼にとっては闘いの中ではまことに常のことなのだ。
 だから彼は今も落ち着いていてだ、司祭に言うのだった。
「私は充分にです」
「逃げられますか」
「はい、ですが貴方は先に」
 こう言ってだ、速水は懐からアルカードを出した、それは大アルカナの運命の輪のカードだった。
 そのカードを右手の中指と人差し指に挟んで顔の前を顔を横切る様にして左から右に動かした。すると司祭を淡い黄色の光のリングが身体の上から下まで通り過ぎ彼を光の管で包み込んだ。
 光の管に入れられた司祭はそのまま垂直に宙まで上がった、速水はそれを見届けると今度は大アルカナの月のカードを出し。
 そのカードをまた右手の中指と人差し指の間に持って左から右に動かすとだった。速水は淡い青の光に包まれ姿を消した。そうして落とし穴から暫く離れた場所に出て言った。
「大アルカナのカードには様々な力がありまして」
「この様にですか」
「はい、使えます」
 光の管の中にいたまま宙に浮かんでいる司祭に答えた。
「運命の輪のカードはです」
「今の様にですか」
「護る為にも使えるのです」
 光の管、それを出してだ。
「この通り、そして月のカードの力には」
「瞬間移動の力もですか」
「備わっていまして、ですが」
 それでもとだ、速水は言葉にも姿勢にも余裕を見せながらも右目、左目は黒い髪の毛に覆われている為にその目だけ見えている目を鋭くさせて言った。
「まさか落とし穴を出すとは」
「それは、ですか」
「少し驚きました、やりますね」
「あの神父は」
「思った以上に、ですが」
 それでもとも言うのだった。
「まだ姿は見えませんね」
「もう逃げ去ったのでしょうか」
「いえ、妖気は感じます」
「妖気ですか」
「はい、それもかなり近いものを近くに」
 こう司祭に話すのだった。
「ですから」
「神父はまだ近くにいますか」
「必ず。それでは」
 敵はまだ自分達の近くにいて様子を伺うか仕掛けようとしている、それならと言ってだった。
 司祭を安全な場所に置きつつだ、周囲の気配を探っていたがここで不意にだった。 
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