| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条学園騒動記

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五百三十四話 宇宙の旅その十三

「悪人だと自覚しておる」
「悪人だと自覚する」
「それだとだね」
「地獄に落ちるかも知れない」
「そう思うからだね」
 二匹もこのことはわかった。
「閻魔大王も怖いんだな」
「冥界の神様で地獄に落とされるかも知れない」
「そう思うからか」
「どうしてもだね」
「そういうことじゃ、だが地獄に落ちる者は稀じゃ」
 博士はその悪人の話もした。
「極端な悪人でないとじゃ」
「地獄に落ちないか」
「そういうものなんだ」
「そうじゃ」
 こう二匹に話したのだった。
「だから普通の者は恐れることはない」
「地獄のことは」
「そうしたものだね」
「悪質な犯罪者でもないと」
「落ちない」
「そういうものだね」
「そうじゃ」
 博士の返事は淀みのないものだった。
「相当な悪人でないとな」
「地獄に落ちない」
「そうそうではだね」
「人は誰だって罪を犯す」
「そうしたものだから」
「もっと言えば善行も為す」
 人はというのだ。
「やはり大なり小なりな」
「それで差し引きされるんだな」
「善悪が」
「だからそうそう極悪人もいないか」
「悪事ばかりって人もいないし」
「もっと言えばな」
 博士はさらに話した。
「大抵の者は善であり悪でもある」
「両方か」
「そうした存在なんだ」
「そうじゃ、尚わしはどうかというと」
 博士は自分のことも話した。
「モラルは気にせん」
「善悪のそれはか」
「考えないんだね」
「それで人を殺すんだな」
「小悪党に対しては」
「人は確かに善であり悪であるが」
 自分自身が今言った言葉を復唱する様に述べてだった、博士はライゾウとタロに対してさらに話した。
「小悪党、下衆はな」
「博士は嫌いなんだな」
「それで殺すんだね」
「あとわしは盗みもせぬ」
 犯す人の世で言う犯罪は殺人、危険物の製造と開発及び使用と器物破損だ。他には悪事は犯さない。
「金なぞ何とでもなる」
「錬金術で生み出せるからな」
「貴金属をね」
「だからだな」
「そっちの悪事もしないんだね」
「偽札を刷ることもせぬ」
 この時代でも立派な重罪である。
「これもな」
「そうしたことは本当にしないな」
「博士はそうだね」
「小悪党は殺してもな」
「それはしないね」
「わしのポリシーではない」
 だからしないというのだ。
「決してな」
「何か博士ってね」
 ここでタロは博士に言った。
「確かに無法だけれど」
「法律なぞわしに何の意味がある」
「うん、意識していないね」
「連合におるが連合市民ではない」
「だから連合の法律もだね」
「関係ない」
 博士の考えではこうなる。
「それも一切な」
「市民権もないから」
「そもそもな、そしてな」
 博士はさらに話した。
「わしはモラルではなくポリシーで動く」
「そのこともさっき言ったね」
「うむ、それでじゃ」
「小悪党は殺すんだ」
「しかし盗みや傷害はせん」
「そうだよね」
「セクハラの類もな。わしはそうした興味もない」
 性欲自体がないのだ、博士には。
「全くな」
「それそうだよな」
 ライゾウは博士のその言葉に頷いて応えた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧