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星河の覇皇

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第七十二部第三章 ジャバルという男その三十一

「階級制度には否定的だった」
「あくまで」
「そしてヒトラーは実際にだ」
「社会の変革もですね」
「成し遂げた、ドイツを立て直しただけでなくな」
「そうしたこともですね」
「成していた人物だった」
 人種差別政策や言論統制等様々な批判されるべき政策もあった、だがそうした一面もあったというのだ。
「彼はそこまでの人物だった」
「英雄であったことは事実ですね」
「そうだ、君はヒトラーになるつもりか」
「私は社会主義者、もっと言えば全体主義者ではありません」
 ジャバルはクリシュナータにまずはこう返した。今度は冷静な返事だった。余裕のある笑みは今はなかった。
「民主政治、マウリアのそれはです」
「守るか」
「はい、ヒトツの意見で国家をまとめることはです」
 全体主義のそれはというのだ。
「国家の硬直を招きますので」
「行わないか」
「はい、連合の民主主義とは違いますが」
「むしろエウロパのそれに近いな」
 ただし各星系の自治体の力は強い。階級と分権の双方がある言うならエウロパと連合の民主主義の特徴を合わせた様なものがマウリアの民主政治だ。
「我々のそれは」
「それでいい思います」
「だからか」
「はい、民主主義を否定はしません」
「むしろ肯定しているな」
「そこがヒトラーとは違います」
 独裁者であった彼とはというのだ。
「全体主義はマウリアに合いません」
「そうも考えているか」
「はい、もっと言えば」
 さらに言うのだった。
「全体主義は硬直しやすいです」
「国家システムとしてな」
「長期的な国家経営に向いていません」
「だからか」
「私は全体主義には否定的です」
「民主政治がいいと考えているか」
「私の政策が受け入れられないのなら」
 それならばともだ、ジャバルはクリシュナータに話した。
「それまでです」
「そう考えているのか」
「はい、受け入れられる様に務めますが」
「受け入れられないならか」
「あくまでです」
「それまでか」
「そうも考えています」
 クリシュナータに淡々とさえしている口調で話すのだった。
「私は」
「そうか、そしてマウリア国民が受け入れれば」
「社会変革をです」
「成すか」
「そうします、必ず」
 こう断言したのだった。
「私がこの手で」
「それが出来るかを見せてもらおう、しかし君の野心はあらゆるものを利用するな」
「連合もエウロパも」 
 ジャバルも否定せずに答えた。
「そうしてでも」
「やはりそうか」
「野心を果たす為ならば」
「利用するか」
「利用されていると気付かれてもです」
「引き込むか」
「そうしてでもです」
 相手が気付こうがというのだ、自身の野心に、
「その様にしてです」
「利用するか」
「最善は利用されていることに気付かせないことですが」
「それでもだな」
「はい、気付かれてもです」
 それでもというのだ。 
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