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星河の覇皇

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第七十二部第三章 ジャバルという男その二十五

「その様に考えています」
「それで止まらないか」
「私は厄介な性分でして」
 今度は不敵な笑みなってだ、ジャバルは答えた。
「果てしなくです」
「上を目指すか」
「そうした性分です」
「そうか、しかし君はだ」
 じゃバルの目を今も見ててだ、クリシュナータは彼に言うのだった。
「着ている服は高くはないな」
「礼装ですが」
「礼装といっても色々だ」
 一口に言ってもというのだ。
「違うか」
「生地や仕立てによってですね」
「全く違う、高いものは相当なものだ」
 これはどの服でも同じだ、同じ様なデザインのものでも仕立てや生地で値段が違ってくる。細部のデザインも関係する。
「それで君の礼装はだ」
「質素だというのですか」
「かなりな」
「アウトカーストと言えば」
「それは逃げだ」
 クリシュナータはジャバルの言葉を先読みして笑って言った。
「違うか」
「そう言われますと」
「そうだな」
「確かに生地も仕立てもです」
「安いものだな」
「着心地のよさを念頭に置いていまして」
「その生地は木綿だな」 
 生地の種類もだ、クリシュナータは指摘した。
「そうだな」
「その通りです、やはり木綿がです」
「最も着心地がいいか」
「そうかと」
「仕立てもか」
「特別に注文したものではありません」
「普通に店で打っているものか」
「はい」
 その通りだとだ、ジャバルは自分で答えた。
「そうです」
「服もそうで自宅もだな」
「家が資産家ですから」
「そのままか」
「そうです」
「ではありのままでか」
「余分なものは全て政治資金に回しています」
 マウリアも民主政治で選挙がありその為の宣伝等の政治活動費が必要だ、その為に使っているというのだ。
「しかし私の分はです」
「特にか」
「使っていません」
「食事も家具もだな」
「特に興味がありません」
「そして女性もか」
「妻はいます」 
 素っ気ないまでにあっさりとした返事だった。
「一人。ですから」
「奥方がおられるからか」
「妻以外の女性は不要です」
「英雄色を好むという言葉があるな」
 こんなこともだ、クリシュナータは言った。
「しかし逆だと言う言葉もある」
「色を好むからですか」
「英雄になれたとな」
「そうした言葉もありますか」
「それではないのだな」
「はい、私は英雄ではあるかも知れませんが」
 否定もしなければ肯定もしなかった、否定しないまでの自信があるからだ。そして肯定するとクリシュナータはまだ心肝相照らす相手ではないと判断しいらぬ警戒を与えると思いそうはしなかったのだ。慎重さを出したのだ。 
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