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星河の覇皇

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第七十二部第三章 ジャバルという男その二十二

「私はアイルランド出身ですが」
「そうだったのですか」
「そうです、イングランドのことはよく聞きますが」
 歴史的な関係でだ、尚この時代でもアイルランドとイングランドの関係は良好とは言えない。ジャガイモ飢饉をはじめとして歴史的因縁からだ。
「あの方は度量の広い方です」
「異論、反論を受け入れられる」
「過ちを指摘されると喜ばれる程の」
「そうした方なので」
 だからだというのだ。
「私もその時は」
「マウリア大使として」
「そうさせて頂きます」
「では我々の行動も」
「大使の権限のうえで」
「それでは」
「はい、その件はよしとして」 
 そしてというのだ。
「お願いします」
「では」
 軍人はここでまた敬礼をした、そうして彼等の職務に専念するのだった。そうしたこともしてそしてであった。
 彼等は彼等で動いていくこととなった、そして。
 その情報はクリシュナータも聞いていた、そのうえで今食事を共に摂っている者に問うた。
「エウロパが動いている」
「そうですね」
「君も知っていたか」
「聞いていました」
 見れば細面で浅黒い肌の整った顔の青年だった、長身で髪の毛は黒く縮れている。そして彫の深い黒い目の光は鋭い。白い礼装が実によく似合っている。
 その彼がだ、クリシュナータに鋭い声で言った。
「既に」
「そうだったのか」
「はい、エウロパは何とかですね」
「連合を出し抜こうとな」
「必死にですね」
「彼等は常に劣勢だ」
 クリシュナータはこうも言った。
「連合に対してな」
「この千年来ですね」
「それもかなりだ」
「かろうじて凌いでいる」
「ブラウベルグ以前から彼の登場の時でもだ」 
 この時連合はブラウベルグにしてやられ続けたと思っている、その為彼を非常に憎らしく思っているのだ。
「変わっていない」
「今もですね」
「連合に対して常に劣勢だった」
「巨大な連合に対して」
「だから今回のこともだ」
「劣勢を挽回する」
「そう考えているのだ、そして君の考えだが」
 クリシュナータは自分の前に向かい合って座っている青年のそ端正な顔を見てそのうえで彼に問うた。自身も鋭い顔になり。
「どうか」
「はい、好きにしてもらえれば」
「いいか」
「エウロパ側に」
「そして連合に対してもらうか」
「彼等が争えばです」
 青年は不敵な笑みさえ浮かべて言った。
「我々がです」
「その間に入られるか」
「ですから」
「このことは放置か」
「それでいいと思います」
「私と同じ考えだ」
 まさにというのだ。 
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