| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

星河の覇皇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第七十二部第三章 ジャバルという男その十

「全く以て」
「連合は差別については」
「あってもな」
「確かに職業的偏見を持っている人もいて」
「特定の人種や民族、宗教や文明を否定する者もな」
「いますね」
「しかし明確な差別はだ」
 領事はまた言った。
「難民に対して以外はない」
「そうですね」
「強い差別はな」
「サハラからの難民、マウリアからの不法入国者」
 尚この不法入国者も実はアウトカーストの者が多い、その彼等を連合に送る闇業者も存在しているのも現実だ。
「そうした彼等もいるが」
「ですがマウリア程は」
「明確にはない」
「宗教として定義される程は」
 即ち社会として定義されるまではだ。
「存在していない」
「その通りですね」
「だからか」 
 領事はまた自分に言った。
「私はそう考えていたのか」
「差別はですね」
「一方的であり被害者は何処までもだ」
「被害者ですね」
「そう考えていたが」
「そうではなかったですね」
「その様だな、被差別者でもだ」
 そしてその立場にいる階層はだ、この階層を人種や宗教や民族としてもいい。差別被差別の立場はその都度変わるものだ。
「コミュニティーがあり利権も出来る」
「アウトカースト政府の様に」
「そういうものだな」
「そして彼等の社会は」
 外交官はこうも言った。
「それは閉鎖的です」
「アウトカースト政府は」
「表の政府と比べて」
「影の存在だけにか」
「その閉鎖性も問題ですね」
「クリシュナータ主席も改善したいか」
「そうだと思います」 
 こう話したのだった、領事に。
「閉鎖的、排他的な巨大なコミュニティーはです」
「国家としてはな」
「存在を看過出来ないです」
「アウトカースト政府の様にな」
「あれはまさにかと」
「閉鎖的、排他的なコミュニティーだな」
「もう一つの政府ですから」
 マウリアの中にあるだ。
「巨大な権力です」
「権力も一つではない」
「それが多くありますと」
「国家の統合も危うくなる」
「権力が多く存在出来るのも民主主義ですが」
 これが一つになると全体主義、独裁国家になる。ナチスやソ連といった国がマフィアの様な犯罪組織の存在を徹底的に弾圧するのは彼等が政府に対抗する可能性のある権力だからだ。ムッソリーニもそれが為に国内からマフィアを一掃した。
「しかしです」
「その権力もな」
「あくまで中心、第一が政府でないと」
「しかも中央政府だな」
「国家の統合が緩み」
「最悪無政府状態となる」
「そうなれば社会は混乱するだけです」 
 市民、社会を守るべき法律を保障する法律や警察も機能しなくなりだ。
「そしてです」
「多くの者が生きることが困難になる」
「そうした社会になります」
「連合は最初から中央政府には力があった」
「少なくとも国家が存在し存続出来るまで」
「様々な権限があった」
 最初からだ、貨幣鋳造権や臨時の軍の指揮権、法律の制定権等があった。各国政府の権限は確かに強いがそれは確かにあったのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧