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レーヴァティン

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第百二十三話 讃岐からその七

「裁きは公平で悪人達には厳しく」
「それでだな」
「松山とその周りはかなり整っています」
「善政の成果だな」
「そうなっています」
「なら尚更だ」
 名君ならとだ、英雄はまた答えた。
「ここはだ」
「敬意を払って」
「喪に服す」
「それでその間は」
「決して攻めない」
「そうされますか」
「他の地域にも兵を送るとしよう」
「ですが」
 謙二は英雄の考えだけでなくこれからの戦略もわかってそのうえで彼に言った。
「ここはです」
「松山をだな」
「すぐに手に入れるべきでは」
「最早指呼の先だしな」
「それに喪に服していて」
「戦どころではないな」
「そうした状況なので」 
 だからだというのだ。
「攻めるには絶好の機会ですが」
「その通りだ」
 英雄は謙二に強い声で答えた。
「まさにな」
「左様ですね」
「しかしだ」
「今は、ですか」
「喪に服している相手に攻めるとな」
「それは信義に反する」
「俺もそう考えるしこの浮島の者達もだ」
 それ故にというのだ。
「それでは浮島を統一して世界を救う者としてな」
「相応しくないとですね」
「思われるからだ」
 だからだというのだ。
「ここはだ」
「攻められませんか」
「相手の喪が明けるまではな」
「あえてですね」
「攻めずな」
 そしてというのだ。
「他のところをだ」
「攻めていきますか」
「そして俺達も松山の領主に対してはな」
「喪に服して」
「名君に敬意を払おう」
「それがこの世界を救う者の器ですね」
「幾ら強くてもな」
 それでもとだ、英雄は謙二に話した。
「信義に反する行いをする者なぞだ」
「世界を救う者として認められない」
「ヒトラーやスターリンは確かに強大な権力を持っていた」
「独裁者であり」
「だがあの連中は果たして世界に君臨出来たか」
 彼等がそうした野望を持っていてもというのだ。
「それは出来たか」
「彼等は平気で条約を破っていました」
「国家間のな」
「信義も何もありませんでした」
「それでは幾ら独裁者として君臨してだ」
 そしてというのだ。
「恐怖政治を行ってもな」
「それでもですね」
「世界の覇者になぞだ」
「なれないですね」
「そうなっていた筈だ、信義を破るものは信頼されない」
 決してという言葉だった。
「そして信用されない者なぞ誰もだ」
「主として認められない」
「そうなるからだ」
 だからだというのだ。 
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