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八条学園騒動記

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第五百三十二話 有り得ない政府その十一

「好きです」
「そうですか」
「はい、勿論朝顔も」
 この花もというのだ。
「好きです。あと菖蒲も」
「私も菖蒲は好きです」
 この花もとだ、トラップは答えた。
「もっと言えば菖蒲もですが」
「そうなりますね」
「はい、皐月は違いますが青や紫のお花も」
「紫陽花や朝顔はそちらの色もありますね」
「あの色合いが好きで」
 紫陽花や朝顔の青や紫がというのだ。
「その月になると見られるので」
「お寺にもですか」
「よく行きます」
 そうしているとだ、トラップはマリアに話した。語るその顔は実に上機嫌で楽しそうなものである。
「仏教徒ではないですが」
「それでもですね」
「そうしています」
 実際にと言うのだった。
「好きなので」
「そうですか」
「お花も周りも」
 その景色がというのだ。
「とても素晴らしいので」
「だからですね」
「よく観て」
 そしてというのだ。
「楽しんでいます」
「よくそうされているのですね」
「左様です」
「では今度は」
「貴女もですか」
「お寺に行って」
 そしてとだ、マリアは自分から言った。
「花鳥風月を楽しみたいです」
「そうですか、では」
「お話をしてですね」
「決めましょう、それでなのですが」
 トラップはマリアに自分から言った。
「メールアドレスを交換したいのですが」
「お互いに連絡を取る為にですね」
「はい」
 まさにその為にとだ、トラップは答えた。
「宜しいでしょうか」
「それでは」
 マリアはトラップに笑顔で応えた、そうしてだった。
 二人は実際にメールアドレスを交換しそこでお互いのスマホと自宅の電話番号も教え合った。それから別れたがマリアにとってこれは運命の変わり目となったが彼女がそれを実感するのは数年後家庭を持った時だった。


有り得ない政府   完


                 2019・7・16 
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