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不思議なお婆さん

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第五章

「そしてまた畑仕事をする」
「それだけか」
「それ以外に何をするんだ」
 ミクーラはそれはという返事で老婆に尋ね返した、
「俺は農夫だぞ」
「だからじゃな」
「そうだ、農夫は畑仕事をする」
「それが仕事だからか」
「村に帰ってそれをする」
 畑仕事、それをというのだ。
「これからな」
「そうか、妖怪退治をしてその名で王様に仕えることはせんか」
「そんなことには興味がない」
 ミクーラの返事は変わらなかった。
「俺にはもう畑があるからな」
「そうか、ではな」
「これから村に帰る、それでお前はどうする」
「わしのやることは決まっておるわ」
 笑ってだ、老婆はミクーラに答えた。
「これまで通りじゃ」
「あの小屋に住んでか」
「ロシアのあちこちを旅してな」
 そうしてというのだ。
「遊んで悪人供を食ってじゃ」
「そうしてか」
「暮らしていくわ」
「そうか、わかった」
 ミクーラは老婆のその言葉に頷いた、そのうえでこう言った。
「なら達者でいろ」
「あんたもな」
 二人は最後は笑顔で別れた、老婆はその小屋に戻って鶏の足を動かさせて何処かへと去った。そしてミクーラもだ。
 行きの時と同じく悪い妖怪や悪人を倒しつつ村に戻った、そして村に戻ってこう言った。
「悪い奴等を退治してきた」
「じゃああの婆さんもかい」
「あの婆さんはやっつけていない」
 老人にこのことを素直に答えた。
「悪い奴じゃなかったからな」
「人を食うのにかい?」
「食うのは悪い奴だけだった」
 ミクーラは老人に素直にこのことを話した。
「教会に入っても平気だった」
「ああ、じゃあ実際にな」
 その話を聞いて老人も頷いて述べた。
「あの婆さんは悪い奴じゃなかったな」
「そうだ、悪い妖怪じゃなかった」
「だからだな」
「俺は退治しなかった」
「それで他の悪い奴等をだな」
「やっつけて戻ってきた、そして」
 ミクーラはここで老人に微笑んでこうも言った。
「今からまた畑仕事だ」
「百姓に戻るかい」
「そうする、また働く」
 微笑んで言ってだった、ミクーラは実際に農具を手に取った。そうして早速畑仕事を行った。ロシアの力持ちと農夫と妖怪の老婆の話はこれで終わりであった。


不思議なお婆さん   完


               2019・2・15 
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