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ある晴れた日に

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8部分:序曲その八


序曲その八

「阪神を応援するって本当に楽しいわよ」
「野球は阪神よね、やっぱり」
「ついこの前まで滅茶苦茶弱かったのに」
 明日夢は非常に面白くなさそうな顔をして語る。
「何でそれが。いつも優勝を狙えるチームになったのよ」
「星野さんのおかげよね」
「ねえ」
 明日夢の突っ込みに対して実にクールに返す二人であった。
「横浜も優勝したじゃない」
「十年位前に」
「あの時のことは今でもはっきり覚えているわ」
 その頃のことを思うとやはり嬉しさを感じずにはいられない明日夢であった。
「よかったわ、本当にね」
「それが今じゃああれかよ」
「フロントのせい?」
「フロントも何もどうしようもないのよ」
 皆にさらに突っ込まれすぐに憮然とした顔に戻る。
「このままずっとこんなのかしらね。嫌になっちゃうわ」
「だから西武応援したらいいじゃない」
 横から恵美が言う。
「西武ライオンズ。どう?」
「西武はちょっと」
 しかし親友の誘いにも苦い顔をするだけであった。
「あまり。どうもね」
「好きじゃないの?」
「横浜がやっぱり一番よ」
 あくまでこう主張するのである。
「あのユニフォームも何もかもがね。いいじゃない」
「まあ伝統的に服は格好いいわね」
 今度は茜が応える。
「それでも昔の緑とオレンジは今見たらあれだけれど」
「相変わらずよく知ってるわね」
「野球好きだからね」
 茜はにこりと笑って明日夢に対して言葉を返す。
「だからそれなりに詳しいつもりよ」
「ちなみに茜は日本ハムファンなんだよ」
 恵美は楽しそうに笑って六人に説明する。
「お爺さんは大阪に長い間いたけれどね」
「それで日本ハムかよ」
「何か変わってるわね」
 少なくとも春華達は日本ハムと聞いて別にこれといった反応は見せなかった。どうやらパリーグにはあまり興味がないらしい。
「北海道じゃなくてか」
「それでも日本ハムなの」
「面白いチームじゃない」
 茜の主張ではこうである。
「だから好きなのよ」
「まあ咲は別に西武や日本ハムはいいけれどね」
 今まで黙っていた咲が話に加わってきた。
「巨人以外はね」
「あんたは何処ファンなのよ」
「ソフトバンク」
 すぐに明日夢の問いに答える。
「だから巨人は死ぬ程嫌いよ、前以って言っておくわ」
「ああ、小久保でね」
 明日夢にもその辺りの事情はすぐにわかった。
「あれでなのね」
「その通り。あれは今でも絶対に許さないから」
 怒りを露わにして語る。
「打倒巨人よ。ついでに打倒オリックス」
「球界再編もあるのね」
「そうよ。特に咲巨人は大嫌いだからね」
「小久保戻ってきてもなのねえ。まあうちも」
「ああ、わかるわ」
「こっちもだよ」
「そうよね」
 明日夢の言葉に茜と春華、奈々瀬も続く。誰もが恨みを持つチーム、それが巨人なのだ。特技が拉致というのだからどう見ても北朝鮮である。
「巨人討つべしだよ」
「あのチームにだけは優勝させてなるものですか」
「だから言っておくけれど」
 ここで明日夢はまた宣言する。
「うちは巨人グッズ持って来たら入店お断りだからね」
「わかってるって」
「それだけはしないから安心して」
「了解。ところで」
 ここで明日夢は最後の一人に声をかける。
「ええと、あんたは」
「未晴よ」
 こう明日夢に答えた。
「そうそう、それであんた野球は」
「私は中日」
 にこりと笑って明日夢に答えるのだった。
「中日ファンよ」
「へえ、ドラゴンズね」
「珍しいわよね、神戸で中日ファンは」
「まああたしが言えた義理じゃないけれど」
 横浜ファンの明日夢にとってはそうであった。関西ではどうしても阪神以外のセリーグのファンは少数派になる。これが現実である。
 
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