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おぢばにおかえり

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第五十四話 最後の学期になってその四

 そしてです、こう言いました。
「何でか変な子を思い出したけれど」
「あっ、あの一年生の子ね」
「そうよ、何で思い出したのか」
 自分でも首を傾げさせてしまいました。
「わからないわ」
「私はわかったわよ」
 私ににこにことして言ってきました。
「そういうことね」
「そういうことって?」
「まあちっちも何時か気付くかしらね」
「何時かって何よ、けれどこの三年の間」
 私はあらためて思いました。
「色々あったわね」
「それはそうよね」
「部活も頑張ったつもりだし」 
 吹奏楽部をです。
「大学も合格出来たし」
「あとようぼくコースも頑張ったしね」
「充実していたわね」
 今思うとです。
「だから本当によかったわ」
「最高の高校生活だった?」
「まあね、暗くはなかったわね」
「毎日忙しかったわよね」
「それはそうだけれど」
 休日もです、とにかく忙しい高校生活でした。
 ですがその忙しさがかえって、でした。
「充実していたわね」
「それはいいことね」
「ええ。手塚治虫さん程じゃないけれど」
「あの人は働き過ぎでしょ」
「何か凄かったらしいわね」
 一日四時間の睡眠時間で徹夜も普通だったとか、とにかく漫画にアニメに多忙な人だったとのことです。
「お亡くなりになる間際まで描いていたとか」
「普通の充実さじゃないわね」
「充実っていうか」
 むしろです。 
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