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戦国異伝供書

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第五十二話 籠城戦その十二

「我等よりもな」
「いや、関東の兵は弱くなりました」
 幻庵が言った言葉だ。
「かつてと比べますと」
「左様ですな」
「かつての源平の時とは違い」
「関東の兵達は」
「随分とですぞ」
「弱くなっていますな」
「はい、甲斐や越後の兵は強いですが」
 それでもというのだ。
「関東の兵は弱く」
「当家の兵もですな」
「弱いです」 
 幻庵は言い切った。
「流石に今川殿や尾張や近畿、山陽の兵程ではないでしょうが」
「関東の兵が弱いのは事実ですな」
「はい、そのこともあり」
「今退く長尾家の兵を攻めることは」
「拙僧もです」
「反対ですな」
「左様であります」
 こう氏康に答えた。
「ここは下がらせましょう」
「あえて手出しせず」
「はい、そして」
 幻庵はさらに言った。
「長尾殿が下がってからです」
「領地をですな」
「完全に奪い返し領地も治め」
 そうしてというのだ。
「あらためて関東を攻めていきましょう」
「それでは」
「幸い長尾殿は領地を荒らしていません」
 北条家のそこをというのだ。
「確かにこの小田原まで攻めてきましたが」
「はい、田畑にも街にも民にも手出しせず」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「ここまで来ただけなので」
「領地はさして傷付いていませぬ」
「長尾殿は武士の心がお強く」
 そしてというのだ。
「しかも毘沙門天を信仰しておられます」
「その毘沙門天の信仰に従い」
「はい」
 その為にというのだ。
「そうしたことはされませぬ」
「そしてそのことが幸いし」
「当家の領地もです」
 敵の軍勢が深くまで入ったがというのだ。
「傷付いていませぬ」
「だからですな」
「領地を取り戻せば」
「また政にかかり」
「そして関東の他の国々をです」
 諸大名のそこをというのだ。
「攻めていきましょう」
「それでは」
 氏康も頷いてだった、彼は今は軍勢を動かさず。  
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