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【完結】Fate/stay night -錬鉄の絆-

作者:炎の剣製
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第036話 7日目・2月06日『門番の槍兵』

 
前書き
更新します。 

 
以前に一回、お父さんと一緒に未来で起きるであろう聖杯戦争をまた引き起こさないためにとあるものを設置した。
それは聖杯の魔力が発動したら連鎖的に爆破する時限発火装置が大聖杯に設置してある。
まぁ、それも今回で意味ないものになりそうだけどね。
私は、いや私達は今夜………大聖杯そのものを破壊する。
そのために柳洞寺の麓辺りの隠し通路までやってきた。
でもそこで今の今まで最初の遭遇以来姿を見せなかったランサーの姿を入り口の前で発見する。
それで兄さんが前に出て、

「ランサーか。貴様、ここでなにをしている…?」
「よお、ここ数日会ってなかったが久しいな」
「傍観を決め込んでおいてよく言うな」
「ま、そうだな。そこは否定しねぇさ。うちのマスターが弱腰でな。まったく、ついていないぜ」

そう言ってやれやれと言ったジェスチャーをするランサー。
その姿から苦労人が板についたかのような雰囲気を醸し出している。
そこに凛さんが声を上げる。

「ねぇランサー、一ついいかしら?」
「ん…? なんだ嬢ちゃん…?」
「貴方のマスターってもしかして言峰綺礼とか言わない?」
「………」

凛さんにそう言われてランサーは気怠けに、そして嫌そうに顔を歪めながらも、

「言わんとか言いたいところだが生憎奴には思う所があるんでな。あぁそうだぜ」
「そう。やっぱり…」
「しっかしなぁ、嬢ちゃんよ。どこで知ったんだ? 俺は特にへまはした覚えはねぇぜ?」
「ちょっとこちらに情報通がいてね。それで知ったのよ」
「へぇ…?」

そう感心した声を出して真っ先にランサーは兄さんを見やる。
やっぱりこの中だと兄さんが一番疑わしいと思っているのだろうね。
その視線に兄さんも笑みを浮かべて応える。

「まぁ、いいか。そんな事はもう関係ないんだよな。俺はここで門番を務めさせてもらってるんでな」
「というと、ランサー。貴殿は…」
「ああ。俺を倒さない限りは先には進ませねぇ………と言いたいところなんだがな」

そう言うとランサーは頭を掻きながら言う。

「アーチャーとそのマスターは通してもいいとかいう命令を受けたんでな。見逃してやるよ、アーチャー」
「…いいのかね?」
「ああ、テメーとも決着はつけてぇところだが」

そう言うと今度は真っすぐ私を見てくるランサー。
その視線の意図を考えてすぐにあの時の約束を思い出す。

「そうだね。誰にも邪魔されない戦いをしようか。ランサー」
「おっ! やっぱし分かってるじゃねぇか、セイバーのマスターの嬢ちゃんよ!」

そう言ってランサーはとっても嬉しそうにその手に槍を出して構える。

「いいだろう。ランサー、今回は相手になってやろう!」

セイバーも剣を構えて臨戦態勢に入る。

「…凛さん。後から追うね?」
「わかったわ。志郎も気をつけなさいね?」
「うん」

そして兄さんに視線を向けて、

「負けないでね、兄さん」
「ああ。任せておけ志郎」

凛さんと兄さんはそれで入り口から入っていった。


「…さぁて。邪魔者もいねぇ。セイバー、ここで倒させてもらうぜ! そして次はアーチャーの野郎も倒す」
「ランサー。最初から勝つつもりでいるようですね。舐められたものです。いいでしょう。相手になります。マスター…指示を」
「うん!」

私はいつでも令呪を使えるようにスタンバイする。
同時に魔術回路に火を入れて弓と矢を投影する。
腰に下げてある“とっておき”は使う機会はないかもしれないけどもしかしたらの事態で使うかもしれない。
そしてそんな臨戦態勢の私達の姿を見てランサーの表情がまるで悪ガキのように笑みに彩られる。

「いいねいいね! この緊張感、たまらねぇ! そんじゃやるとしようか!!」

そう言ってランサーは一気にセイバーへと駆けてきた。
それをセイバーは迎撃する。
一瞬にして交差した剣と槍がガキンッ!という轟音を響かせる。
一合、二合、三合………と叩きつけるように二人は剣戟を打ち鳴らしていく。
あの校舎での一件ではやっぱりランサーは本気を出していなかったんだ。

「おらぁ!」
「ッ!」

ランサーの水平からの光速の突きによる刺突がセイバーの胸を狙い撃つ。
だがセイバーも負けていない。
すぐさま狙われた胸の前に剣を出して防ぐ。
それと同時にその突きの反動を利用して後方へとバックステップし、次いで魔力放出を全開にして上段からの振り下ろしをランサーに見舞う。

「はぁあーーーッ!!」
「ぐっ!」

振り下ろされた刃をランサーは槍を盾にしてなんとか防ぐがそのあまりの重さなのだろう、足が幾分地面に沈む。
ギリギリと音を鳴らしながらも二人は最大限警戒をしながらも互いに攻防を繰り広げている。
だけどそこでランサーが急に力を抜いたのだろう、思いっきり力を入れていたセイバーは前のめりに倒れそうになる。
そのチャンスを狙っていたかのようにランサーは下段からの膝蹴りをセイバーの腹に見舞う。

「ガハッ!」
「落ちやがれ!」

ランサーの言い分通りセイバーは空に落とされていた。
そしてランサーは槍を構えてセイバーを頭上で串刺しにしようとする。
だけどそう簡単にやられるほどセイバーは甘くない。
下段からの突き刺しによる刺突を空中で体をくねらせてなんとか回避する。
素早く着地すると横薙ぎに剣を振るうセイバー。
それをジャンプして避けるランサー。
それが合図だったのか二人は即座にお互い後方へと退避してセイバーは私の前まで戻ってくる。

「やるな、ランサー」
「てめぇもな、セイバー」

そう言って二人してニヤリと笑みを浮かべあう。
純粋な褒め言葉。
飾り気のないそのやり取りだけで両者とも満足そうにする。

「しっかしよお。貴様のその見えない剣………もう大体把握したぜ」
「そうか。しかしやる事には変わりはない。貴様を倒せばいいのだからな」
「そりゃご尤もだぜ。なら………今度はさらにギアを上げていくぜ?」

ランサーは腰を深く落として一気にセイバーへと接近して先程よりもさらに激しい連打を浴びせてきた。
それはさながら機関銃のごとく一秒一秒に数回は放っているだろうその閃光に、だがセイバーも負けじと打ち払いをしていく。

「おらおらおらおら!!」

槍の速度はさらに上がっていく。
その突きの応酬はさすがのセイバーでも耐えられないものになってきたのか苦悶の表情が見え隠れしてきた。
それを見越したのかランサーはその敏捷さで百の突きをしながらも一回高速で回転させて持ち方を変えて上段に構える。
それは先ほどのセイバーが試した戦法。
槍を腕がしびれてきているのだろう動きが鈍くなってきているセイバーに叩きつける。

「おらぁ!!」
「ぐっ! ああああ!!」

脳天を叩き割りえるだろう一撃をセイバーはなんとか剣を盾にして防ぐ。

「さっきとは形勢逆転だな!」
「言っていろランサー!」

するとセイバーはその体格を利用してランサーの股の下を潜り抜けて背後へと回り下段からの切り上げをしようとした。

「おせぇ!」

だがランサーの反応が神がかっていて槍を背後に回すだけで防いでしまった。
そのまま防いだ後に大振りに槍を振り回してセイバーは後方へと下がる。

「ははははは!! いいなぁセイバー! さすが最優のセイバーのクラスで呼ばれるだけあるぜ! 俺の攻撃を悉く防ぐ手腕は大したものだ!」
「それはこちらも同じです。あなたのような槍兵と戦うのは新鮮味があってとても良いものです」

二人はこんな時でもなければ、こんな戦いなどなければともに笑いあう仲になれるかもしれない。
だけどこれは戦いだ。
だからそんなもしもは今は考えないようにする。
私はただ二人の戦いに見とれていて圧倒されるばかりだった。
本格的な戦闘はバーサーカー戦を入れるとこれで二回目だ。
その戦いはもはや神話のお伽話のような神聖な戦いだった。
だけどランサーは槍を構えながら、「さて…」と呟き、

「そんじゃこの楽しい戦いに終止符を打つのもなんだが、貴様の心臓、貰い受けるぜ?」

途端、怖気が走るようなほどの魔力が槍へと集約されていく。
今か今かと解放せよと槍が唸りを上げているようで。

「ほう………ついに宝具を切るか、ランサー。ならば…!」

そう言ってセイバーは剣を上段に構えて同じく魔力を剣へと集めていく。
次第に風では覆い隠せなくなってきたのか黄金の剣がその姿を現す。

「ひゅー! やっぱり騎士王だったか。倒すのが惜しい相手だな」
「言っていろランサー。消え去るのは貴殿の方だ」

ランサーの槍はもう禍々しいほどの魔力が集約されていつでも放てるのだろう。
それはセイバーも同じでいつでも聖剣を解放できるように構えを解かない。
ランサーの槍は因果逆転の効果を持つゲイボルグ。
見極めが大事だ。
心の中で私は唱える。

(第一の令呪に告げる………)

それによって令呪の一画が輝きを増す。
でも二人はそんな事には気が付かずにお互いにボルテージが最大限に達したのだろう。
その言霊を解放する。

「受けなさい!約束された(エクス)―――………」
「穿てよ! 刺し穿つ(ゲイ)………」
勝利の剣(カリバー)ーーーーッ!!」
死棘の槍(ボルグ)!!」

お互いの真名解放が放たれた。
セイバーの聖剣の極光がランサーを覆い尽くす。
それでも分が悪かろうとランサーは極光の中を突っ切ろうと突き進む。
そして極光はランサーを飲み込んだ。
これで普通なら勝ったと思うだろう、だがランサーは直線上の斬撃ゆえにギリギリの境目を越えてセイバーへと疾駆した。

「もらったぁ!!」

歓喜の表情を浮かべながらランサーの槍はセイバーの胸に刺さ………らなった。
その事実に一瞬困惑するランサーを尻目にセイバーが背後からランサーの背中を貫いていた。

「ぐ、ふぅ………どうやって俺の槍を………?」
「私には最高のマスターがいましたから。それだけです」

それでランサーは私の手を見る。
私の令呪が一画欠けているのを確認したランサー。

「令呪によって心臓を貫く運命を捻じ曲げたか。くくく………本当にできたマスターだな」
「はい。マスターはとても優秀ですから」
「違いねぇ………ああ、ったく嬢ちゃんに呼ばれてたら俺も………いや、今言ったところで栓無き事か」

消えかけのランサーに私は近づいていき、

「一騎打ちを邪魔しちゃったから怒ってない?」
「ま、あのままだったら俺の勝ちだったがな。だが楽しかったぜ、お嬢ちゃん」

そう言って後は上半身だけの姿になったランサーは、

「楽しい戦だったぜ! じゃあな!!」

実に満足げな表情をして消え去った。

「………ランサー。私も柄にもなく楽しかったですよ。さらばです」
「………」

私はセイバーの独り言に何も言わず黙っていた。

「さて、それでは向かいましょうか」
「そうだね、セイバー。きっと今も兄さんと凛さんが戦っていると思うから」

少しの余韻を残しながらも私とセイバーは洞窟の中へと入っていくのであった。


 
 

 
後書き
ランサーとの戦いに勝利しました。
こんな戦闘でしたけど大丈夫ですかね。
久しぶりに戦闘描写を書きましたので不安です。

最後の打ち合いではプリヤで美遊兄の方がやったような避け方をしました。
 
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