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ある晴れた日に

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644部分:悪魔その五


悪魔その五

 震えながらであった。さらに皆に話す。
「あいつが来るって」
「まさか・・・・・・」
「冗談だろ!?」
 皆とにかく足を先に出してベランダの方に行く。そして下を見下ろすとだった。
「・・・・・・間違いないよ」
 まず竹山が呟いた。ベランダの下のところを歩いている彼をだ。それは一見すると普通の穏やかな青年である。だがそこから発せられているものは違っていた。
「・・・・・・妖気だよな、これ」
「ああ、そうだろうな」
「これがな」
 皆その感じるものが何か嫌になるまでわかった。
「あいつを知ってるから感じるのか?」
「多分違うわ」
「これは」
 彼等の中でそれが否定された。
「あいつがそういうのを元々持ってるから」
「だからそれで」
「感じるんだよ」
「嘘だろ・・・・・・」
 皆そんな話をしながらも心の何処かでそれを否定したかった。それが自然と言葉になってそのまま出て来たのである。まさにそうだった。
 そしてその中で。恵美がまた言った。
「あいつは。確か」
「えっ、安橋よ」
「あいつ知ってるの!?」
「まさか」
「見たことがあるわ」
 こう皆に答えるのだった。彼女の整った顔も強張り額には冷や汗が流れ出ている。彼女にしてもその妖気に完全に気圧されてしまっていたのだ。
「あいつは。一回ね」
「それって何処なんだよ」
 五人の中で一番強気の春華も顔を蒼白にさせている。そして今にも何かを吐き出しそうな、そんな切羽詰った表情に変わっていた。
「あいつと何処で会ったんだよ」
「道でよ」
 その時のことも話した。
「道で擦れ違ったのよ」
「それだけか?」
「ええ、それだけだったけれど」
 それでもというのである。
「あれだけの妖気は。間違いないわ」
「そうかよ、擦れ違ったのかよ」
「道で」
「まさかあいつ」
 そして恵美はまた言うのだった。
「この学校にも」
「ってちょっと待ってよ」
 それを聞いた茜がすぐに狼狽しきった声を出した。
「今飼育小屋には明日夢と桐生がいるのよ」
「そ、そうよ」
 凛が彼女の言葉にすぐに応えた、
「少年と桐生あそこにいるのに」
「お、おい」
「すぐに行かないと」
 桐生と中学校からの友人である野茂と坂上が言う。
「あの二人やばいぞ」
「何とか」
「け、けれどよ」
「足が」
 坪本と佐々も顔が真っ青になっていた。そして足だけでなく前進ががくがくと震えてである。とても動けるような状況ではなかった。
「動けないなんてよ」
「どうすれば」
「だ、誰か行ける!?」
 千佳が皆に問う。彼女も動けなかったのだ。
「誰か。行かないと」
「い、行くわ」
 静華が名乗りをあげた。しかしだった。
 それで行こうとするがだった。彼女も全く動けなかった。やはり足がすくんでいるのだ。
「そんな、足が・・・・・・」
「じゃあ俺が」
「僕が」
 今度は野本と加山が行こうとする。しかしであった。
 
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