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雲外鏡

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第一章

               雲外鏡
 三島亜弓の家は大阪中央区船場で昔からの料亭をしている。世界屈指の企業グループである八条家の馴染みの店でもあり料亭が赤字であることが多いと言う昨今でも羽振りはいい。そして通っている学校はその馴染みの為か八条学園であり高等部の二年だ。
 切れ長で長い睫毛の黒い瞳、細く短めの眉と小さい唇に白く透き通った肌で頬は紅がさした様だ、ブロンドのさらりとした母親譲りの髪の毛は腰の辺りで数条カールにしている。背は一六〇程で胸がとにかく目立つ。城のセーラー服と黒の丈の短いスカートという制服の組み合わせだ。
 その彼女が学校でクラスメイトの林田裕貴にこんなことを言った。
「貴方今日わたくしのお家に来なさい」
「えっ、何だよ急に」 
 裕貴は亜弓の今の言葉に何でという顔ですぐに言い返した。
「俺が三島の家に来ないと駄目なんだよ。まさか」
「まさかといいますと」
「俺と付き合いたいとか」
「彼氏?いいわよ」
 亜弓は裕貴の今の言葉にはあっさりと返した。
「そう思いたいなら」
「思いたいならなんだ」
「というか貴方もう交際相手いるでしょ」 
 これまたあっさりと言う亜弓だった。
「そうでしょ」
「うん、同じ新聞部の後輩の娘と付き合ってるよ」
「浮気になるしわたくしにも婚約者がいるので泥沼になりたいのなら」
「そんなの絶対に嫌だから」
 裕貴は即座に言い返した。
「どうせ結末は包丁で滅多刺しにされて首取られるんだよね」
「それがいいのなら」
「だから絶対に嫌だから。それに俺と三島これまで接点ないし」
 もっと言えばお互いタイプでないがそこは言わなかった。
「また急に」
「さっき新聞部って言ったでしょ」
「部活からなんだ」
「オカルト研究部とも仲がいいし」
「まあね、俺基本オカルト担当だから」
 学校の新聞でとだ、裕貴も答えた。
「それはね」
「オカルト研究部の子このクラスにいないしお友達にもいなくて」
「それでなんだ」
「貴方に見てもらいたいものがあって」
 それでというのだ。
「来て頂きたいの」
「そういうことなんだ」
「ちなみに当家の立会人はお兄様と許嫁の方で」
 亜弓のそうした関係の人達でというのだ。
「貴方は貴方で後輩の彼女さんを連れて来たらいいわ」
「密会じゃないことの証明になんだ」
「ええ、そこはお父様に言われたので」
「用意周到だね」
「変な噂は最初から出さない」
 それが事実無根でもというのだ。
「お父様のお考えで」
 それでというのだ。
「貴方に来て見て欲しいものがあるの」
「新聞部の取材でだね」
「それで返事はいいかしら」
「オカルト研究部に俺の話が出てるから」
 そこからだ、裕貴は考えて述べた。
「それならそうしたお話だね」
「ええ、だから声をかけてるのよ」
 亜弓は裕貴にこれまたあっさりとした口調で答えた。
「そういうことよ」
「だったら行かせてもらうよ」
 それならとだ、裕貴は答えた。
「宜しくね」
「それではね」
「うん、それじゃあこっちの用意が出来たら」
 その時にとだ、裕貴は話した。
「あとそっちの都合のいい日に」
「わたくしの方は何時でもいいから」
「じゃああの娘と話して決めるよ」
 取材の日にとだ、裕貴は亜弓に答えてだった。
 その後輩の彼女の娘である津島美和子を連れて土曜日に亜弓の自宅兼店のある船場に向かった。そしてその店の前に来てだ。 
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