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ある晴れた日に

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586部分:誰も寝てはならぬその四


誰も寝てはならぬその四

「あいつ・・・・・・未晴を」
 男はそのまま公園の奥に消えていった。彼の姿が見えなくなってからやっと動けた奈々瀬だった。そうして何とか学校に入った。
 クラスでは既に彼等がいた。竹山がその中心にいて話していた。
「それでね。前に言ってた」
「今度は何がわかったんだ?」
「それで」
「ほら、息子の方」
 彼のことだというのだ。
「あの竹林さんをああした」
「あいつかよ」
「そのあいつなのね」
 五人がそれを聞いて顔を一斉に顰めさせた。
「あいつのことかよ」
「それで何がわかったの?」
「それにしてもこんな時に」
「そうね」
 ここで彼女達は顔を顰めさせて周りを見回した。
「奈々瀬まだかよ」
「いつもならもう来てるのに」
「今日はどうしたのよ」
「とにかくね」
 話を続けようとする竹山だった。
「いいかな」
「あ、ああ」
「御願い。続けて」
「それで何がわかったの?」
「顔がわかったんだ」
 それだというのだ。
「顔がね」
「よくわかったな、そんなの」
 野本がそれを聞いて思わず言った。
「顔なんてよ」
「ちょっとね」
 ここで小声になる竹山だった。
「警察も知らないような裏サイトがあってね」
「裏サイトかよ」
「そんなサイトにまで出入りしてるのかよ」
「内緒だよ」
 野茂と坂上に対して小声で囁いた。
「絶対にね」
「ああ、誰にも言わないさ」
「だから安心しろ」
 二人もそれはわかっていた。だからこれ以上は言わないのだった。 
 そうして竹山の話を聞く。それは皆だった。
「それでだけれどね」
「ああ、顔は」
「どんなのなの?」
「これ、見て」
 言いながら出してきた顔は一見するとスマートな好青年である。髪の毛は黒く適度な長さで切られている。顔も整っていて和風の趣きがある。しかし口元にへばりついたその笑みが何かしら不気味な、言うならばサイコパスを思わせるそうしたものを見せているのだった。
 その顔を見てだった。誰もが言った。
「おい、何かよ」
「この笑顔よ。先入観かも知れないけれどよ」
 こう前置きしてから言う佐々と坪本だった。
「おかしいよな」
「ああ、何かな」
「そう思うよね。そうなんだ」
 ここでまた言った竹山だった。
「彼がそのね。竹林さんをね」
「ああしたんだね」
 それに頷く桐生だった。
「この彼が」
「うん、その時に一緒に調べたけれど」
 それもだというのだ。
「その、女性が失踪して廃人になるまで虐待する事件とか」
「それとあれね」
 恵美はさらに言ってきた。
「動物達や公園の話も」
「そうなんだ。それもね」
 間違いないというのである。
 
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