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リリなのinボクらの太陽サーガ

作者:海底
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天空のアビス

 
前書き
遅筆で申し訳ありません、やっとできました。
令和初投稿です、今後もよろしくお願いします。 

 
第1管理世界ミッドチルダ
アウターヘブン社FOB 司令室

「―――フゥ、やっと諸々の情報に目を通せたけど……すごいね、色んな意味で……」

「アウターヘブン社の諜報力のこと? それとも次元世界のブラック度かい?」

「両方。人体実験に薬物投与、ウイルスに化学兵器……ロストロギア関係なく世界中に厄ネタ満載過ぎ」

そしてそれを調べ抜いているアウターヘブン社もホント凄い。ぶっちゃけ管理局の捜査を完全に超越しているから、自称次元世界の守護者(管理局)の立場が完璧に奪われていた。

椅子の背もたれに寄りかかって、ぐい~っと体を伸ばす。傍で雑務をしていたシオンはそれを見て微笑する。なお、今朝護衛をすると言ってくれたケイオスはナンバーズと外で他の仕事をしてもらっている。私を気遣ってくれたケイオスにはちょっと悪いが、この仕込みをやっておかないと次の襲撃があった時に詰むから先にそれを優先してもらった。頼んだのはちょっとしたことだから、大した手間ではないが。

「しかしシャロンの策はなるほどと思ったよ。私としたことが、どうして思いつかなかったんだろう?」

「疲れてたんだから仕方ないよ。シオンは私から見ても激務続きだったし」

実際、シオンの背中からは時々蜃気楼のような空間の揺らぎが見える。彼女にも疲れを癒してくれる狐神様的な存在がやってきて欲しいな。

「でもこうして戦略面を任されたおかげで気づけたよ、罠を仕掛けるのは楽しいってことにね」

「あぁ……そうなのかい……(今日の彼女を見ていると、この前アニメの再放送でやってた皇子系魔王を思い出すよ。私の知らない間に、彼女の中にあった目覚めさせてはいけない何かが目覚めたのかもしれない)」

シオンが今何を思ったのか知らないが、そもそも私は前線に出たいタイプじゃない。今は自分がやらないといけないだけで、本当ならホームで家事や料理でもして帰りを待つ方が性格的に向いている。

『旦那の帰りを待つ奥さんですか?』

そこ(イクス)、茶化さないで。大体戦い自体があまり好きじゃないんだからしょうがないでしょ。特に次元世界の魔法を間近で見ると、どうしても友達を消し飛ばした魔法(デアボリック・エミッション)がフラッシュバックする。こういうトラウマがあるから、私は次元世界の魔法が嫌いなのだ。

話を戻すけど……私が策を出す時から思ってたが、最初から都市開発をちゃんとやっていれば、ここまで劣勢にはならなかったんじゃない? 廃棄都市区画なんか今ではアンデッドの巣窟同然だよ。

「そういや今更だけど、レジアス中将ってミッドじゃかなり有名人らしいね。あの人がいなきゃミッドはもっと荒れてたとか何とか」

「ま~彼にとってミッドを守るのは生き甲斐というか、一生を賭けた夢だから当然ではある。だけどファーヴニルなどの事情が重なった結果、そのしわ寄せがシャロンに降りかかったのは災難だね」

「そもそも昔から管理局が何か目論んだり作ったりしたらどこかに、あるいは誰かに災難が押し付けられてる。もうあの組織は何もしない方が世界は平和になるんじゃない?」

「しかし何もしなかった所で世界は勝手に荒れる、過去の遺産が引き起こす騒動のせいで。過去の人間の尻拭いに次ぐ尻拭い、その対策として行った計画が更なる諍いを生み、後世に遺恨が残る。その遺恨を未来の人間が尻拭いする、怨恨の輪廻。こんなもの、どうしたら断ち切れるのだろうかね」

「さあね、こういうのは私自身もう断ち切れるものじゃないと思う。シオンだって同じ考えでしょ。それでもどうにかしたいなら、いっそそういう輪廻が作られないように時間を巻き戻すしかないんじゃない?」

「しかしだね、時間はビデオテープのように簡単に巻き戻していいものじゃない。いや、下手に巻き戻してしまえばむしろ変に絡まって取り返しがつかないことになるものだよ」

シオンが言ったことは、実質的を射ているのかもしれない。ツァラトゥストラの永劫回帰で世界は何度もやり直されているが、そのせいで今この世界の未来は過去へ繋がり、時間が絡まりあってしまった。本当の意味で未来へ進む道が失われているのだ。

ただ……この返答に私は疑問を抱いた。どうもシオンの言葉は、ツァラトゥストラの永劫回帰を暗喩しているようにしか聞こえないのだ。彼女は電子戦のスペシャリストでもあるが、流石にツァラトゥストラのことまでは知らないはずだ。

「シオン……あなたはどこまで知っているの?」

「フフッ、私が知っているのは誰かさんが知っていることだけさ」

「ふ~ん? 煙に巻こうとする辺り、シオンは手練れの嘘つきだね。嘘つきはスパイの始まりとも言うけど、そこん所どうなの?」

「へぇ、私を疑うのかい?」

「別に……どんな善人だって嘘の一つぐらいはつく、現に私だって嘘をついてるんだから」

「ほう? シャロンの嘘とは、中々興味があるね?」

「興味を抱かれた所で、答えはしないよ。だって私の嘘は、私自身のためなんだもの」

サバタさんのように、誰かを守るために嘘をついたのではない。私のは……そう、弱い自分を隠し、強い自分を演じる。ただ、強がってるだけの嘘。本当の私は臆病者で、弱者で、一人じゃ何も出来ないけど、周りには戦って突き進める人間だと知らしめるように、無理やり背伸びしているだけだ。

もし今、その嘘が剥がれて本当の私が露わになったら、本当に何も出来なくなる。そうなったら私諸共この世界は蹂躙され、全ての尊厳が地の底に堕ちるまで凌辱されることだろう。

「ただいま、シャロン。頼まれたことやってきたよ」

「おかえり、ケイオス。こっちもちょうど一息ついてたところ……んん?」

戻ってきたケイオスの後ろに隠れるように、薄い桃色……ペールオーキッドピンクみたいな髪色の4歳ぐらいの少女(ショートカットでボーイッシュな雰囲気で少しの間、少年かと迷った)が、おどおどした様子で立っていた。
頼まれたこと以外は基本的にあまりしないケイオスが幼女誘拐とかするはずはないから、何かしらの理由があって連れてきたんだろうけど、珍しい光景だから驚いた。

「あぅ?」

さっきからSサイズのおけんこさまのぬいぐるみで遊んでたフーちゃんもその手を止めて、ぽかんと少女を見つめる。とりあえず私は少女の前へ行き、「こんにちは」と挨拶する。

「こ、こん……にちは……」

なぜこんな所に来ているのかわからないが……まずはその不安を拭うことから始めよう。円滑なコミュニケーションには、見た目や話しかけやすさなどの第一印象が結構大事だからね。

「こんにちは。君の名前は何て言うのかな?」

「へあ!? み……ミウラ……ミウラ・リナルディ……です。あ、あああ、あの……」

『あらあら、この子は人見知りなんでしょうか。ずいぶん緊張していますね』

「(ううん、イクス、私から見てこの子の緊張ぶりは人見知りのそれとは少し違うよ)……大丈夫? 話す前に一旦落ち着いて深呼吸しようか。ほら、すぅ~……」

「すぅ~、はぁ~……すぅ~、はぁ~……」

「落ち着いた? ゆっくりでもいいから話せる?」

「は、はい。あの……実はボク、見てしまったんです。あ、で、でも……見間違えただけかもしれないし、ちゃんと言える気がしないので、やっぱり……」

「焦らなくてもちゃんと最後まで聞いてあげるから、ね?」

「あ……わかりました。えっと……見たのは昨日なんです」

その後時間をかけてミウラが話してくれた内容をまとめると、昨日の襲撃があまりに急だったので、彼女と彼女の家族は山の上の実家兼レストランからこのシェルターまで避難できず、嵐が過ぎるのを待つように家の中でじっと朝まで隠れていた。それからしばらく経ってギジタイの雨が止み、街の方が静かになったので襲撃が収まったのかもと様子を伺った所、私達も見つけたアースラの救助に向かう局員の集団を見つけた。

救助部隊が動けてるということは襲撃は収まったと見て、一安心するまで残ったアンデッドや端末兵器が家にやって来ないか双眼鏡で警戒していた。ついでにさっき見つけた救助部隊の様子も興味本位でチラチラ見ていたのだが、海の中の救助活動ということで潜水服に着替えていた時、部隊を仕切っていた黒い服の局員がいきなり“二人”に増えて、“一人”になったらしい。

「二人が一人に?」

「と、遠くから双眼鏡で見てたので、もしかしたら見間違えたのかもしれません……。ちょうど他の場所からは見えない物陰だったので……。で、でも……同じ格好の人がいきなり出てきて、もう一人がすごく驚いた顔のまま転移魔法で帰るなんて、何かおかしいと思って……」

「ん、それで相談させてほしいと言ったのか、親が」

「親が?」

「見たのは彼女だけらしい。親はこの事を聞いて何かマズいと感じたのか、誰かに事情を説明して守ってもらうように彼女へ言いつけたそうだ」

「管理局を尋ねなかったのは入り込まれた当事者なのもあるけど、まだキナ臭いと思われているからかもね」

実際、管理局の内部が黒いことは髑髏事件の影響でもう周知の事実になっている。ヤバい所を見たら消される、って感じで管理局は一応守ったりはしてくれるけどヤクザのフロント企業的な組織だと、民衆の認識が変わったのだ。

ってことは、一般局員は若衆時々鉄砲玉で隊長格は若頭(かしら)か。じゃあ執務官や高官は舎弟で組長は……あぁ、もういないんだっけ。

『シャロンは影の組長だと思います』

影の組長って何さ。

とにかくミウラが見た光景が事実だとすると、黒い服の局員……確かクロノ・ハラオウンと言ったっけ……彼は着替えの不意を突かれて拉致され、変装した別の誰かがすり替わったと考えるべきだ。仲間が意識を向けられないタイミングでこの入れ替わりの手際の良さ……相手はこうなることを予測していた? あるいはこの状況そのものを生み出した? なんにせよ、管理局はまたしても隠れ蓑にされたわけだ。

本物のクロノが今どうなってるかは知らないが、正直どうでもいい。せいぜいどこかで見つけて運よく生きていたとしたら、拘束を外すぐらいはしてやってもいいと思う程度だ。だけど偽物は何が目的でクロノに化けた? なぜ彼に成り代わった? 理由はわからないが、これだけは言える。管理局の内部の動きにはより一層警戒する必要がある、と。

「ところでミウラちゃん、君はその人に見ていたことを気づかれた?」

「え? う~ん……そういえばあの人、最後にちょっとだけこっちを見たような……」

「ケイオス、確認するけど彼女達とはどこで……」

「ん、シャロンが考えた通り。彼女とその家族はここに来る途中でクレイゴーレムの集団に襲われていた。偶然見つけてモンスターを殲滅してから彼女達を匿ったが、俺がアウターヘブン社所属だと知ったら、親が信用できる人に渡りをつけてほしいと」

「なるほど、お手柄だねケイオス。色んな意味で」

「ふふん」

私から褒められて嬉しいのか、ケイオスは無表情のままドヤ顔をするという器用な真似を見せた。しかし街中にモンスターが残っているのか……これは対処が必要かな。

「しかし、本当に流石だよシャロンは。これを想定して俺やナンバーズを送り出したとは、恐れ入った」

へ?

「あ~そうか! 逃げ遅れて避難が間に合わなかった人の救出や保護なんて、この誰もが生きるのに必死な状況じゃ、確かにそう簡単には思いつかない! 特に管理局が色々とアレな今、私達アウターヘブン社が率先して市民の救助を行っているとなれば、こうやってもみ消されそうな裏情報が手に入るなどで大きくプラスに働く!」

「しかもナンバーズの能力はそういった人だけでなく、瓦礫に埋もれたりして身動きできなくなった人を安全に運ぶ面でも優れている。更に彼女達の手で助かった者達が評判を周囲に広げ、それはいずれ戦闘機人という正体が知られても造られた存在に対する忌避感を拭い去る手助けになる。たった一手で彼女達の今後の処遇に対する保険を手に入れ、同時に昨今増加しているプロジェクトFATE産のクローン達にも光を与えたんだ」

「それを敵への対策と並行して行うとは……正直、シャロンをD・FOXの指揮官に任命した私もあまりの周到さにブルッと来たよ」

あ、あれ? 私、そこまで細かく指示したっけ?

で、でも皆なぜか納得してるし……結果的に利益が入って士気が上がるなら、これでいいのかな?

「ふぅ~……とにかくこの件で証明されたけど、ミウラちゃんのことは確実に気付かれてる。化けた相手は視線の気配を辿って、彼女の家を見つけたに違いない」

「極めた武術家は気配だけで相手の位置を探れるというし、あり得ない話じゃないね。ケイオスのおかげでシェルターに避難させることはできたから、内部に攻め込まれでもしない限り、彼女や彼女の家族に危害が及ぶことは無い……はず」

私のことが尾を引いているのか、シオンは安全だと断言しなかった。でもその分、警戒や監視は増しただろうから、以前より安全になっていることは間違いない。

「大丈夫、今度はあんなことにはならない。だって、皆がいるから」

「おや、言うねぇ?」

「もし皆が信用に値しないと思ったら、私はここから出て行ってる。でも私はここにいる、それが皆に対する私からの答えだ。だからここは守れるし、私も守る」

「……」

「それにあの時の件なら私だって反省したよ。人は弱いけど反省する生き物だ。弱くても反省するから人は霊長類の長にまで成り上がったんだ……! 強さに溺れ、反省を怠った先に命の尊厳を持ち合わせた人はいない! 故に私は弱者として反省し、強者の先を進んでみせるっ!」

そう言うとこの場にいる誰もが息を呑み、無言で私を見つめる。まだ言葉がわからないフーちゃんはぽけーっとしてるけど、ミウラはなぜか真剣にこっちを見つめていた。

「大丈夫だよ、ミウラちゃん。君と君の家族は私達アウターヘブン社が守る。だから安心して―――」

「あ、あの! お姉さん、名前を教えてくれますか?」

「へ? シャロン・クレケンスルーナだけど……」

「シャロン……シャロンさんかぁ~……素敵な名前ですね」

「褒めてくれるのは嬉しいけど、何も出ないよ?」

「い、いえ……その……」

「まあいいや。褒めてくれてありがとね」

お礼を言ってミウラちゃんの頭を撫でると、ミウラちゃんは頬がほんのり紅潮しながら俯いていた。おぉ、なんだかクロちゃん()を彷彿とさせるもふもふだな、この子の髪。

「ん?」

何故だろう、ケイオスはいつも通りだけど隣にいたシオンの目が妙に微笑ましいものを見る目になっていた。和やかな雰囲気になったけど、これじゃあ話が進まなくなるので一旦仕切り直しの意味も含めて咳払いする。

「こほん……とにかく! 守備用の仕込みは終わったから、今日また襲撃があったとしても昨日みたくシェルター前まで占領される事態にはもうならない。でも頭上を取られてる以上、籠城戦みたく守勢に入ったらむしろジリ貧だ。だから出来るだけ早く敵の重要拠点を制圧するべきだと考えてる」

「ん、襲撃後も残った敵は居場所に問題があれば片付けるけど、この状況を脱するためにはとにかく攻め込むぞという姿勢が大事だ。兵糧の問題もあるし」

地球で例えるなら韓国と外国、これをミッドと管理世界で言い換えればわかりやすい。この科学が支配する世界を兵糧攻めするとは公爵も考えたなぁ、と常々思う。経済の流れが確立したからこそ、弱点が大きくなって浮き彫りになる……か。

「敵の拠点はさっきレーダーマップに反映させておいたよ。では一同ご覧あれ」

シオンがそう言って司令室の大画面を操作すると、ミッドチルダのマップが表示された。アウターヘブン社ミッド支部や安全が確保された場所は青く、管理局地上本部や局員が守る場所は緑で、同じように聖王教会は黄色、敵の拠点は赤く点滅されていた。ついでに海上も一部緑になっているが、これは沈没したアースラを指しているのだろう。

しかし……このミッドチルダ北部沖の孤島、ここってマキナが実験体としてアレクトロ社に捕らわれていた場所だ。ここが赤いってことは、敵に前線基地として再利用されたのだろう……全く、何の因果なのやら。あと島と言えばもう一つ、気になる所があった。

「こんな南東の小さい島にどうして緑の点が……?」

「あぁ、そこは“監獄島”って呼ばれている。管理局が確保した犯罪者の隔離施設の一つだよ。要はミッド用の牢屋さ。島の周りは特殊な海流で囲まれていて、海からだと浮いてるだけで入れるが、出ようとするなら軍艦がいる。だからもし逃げようものなら、例えゼストほどの身体能力があろうと為すすべなく海の底に沈む。飛行魔法を使おうにも、拘束具には魔力封印が施されているから使えない。看守が魔法の使用を許可しない限りね。それに、その看守もあまりいい噂は聞かない」

「噂? どんな?」

「趣味が拷問らしく、その看守に目を付けられた囚人は二日と持たないらしい。それに相手が女性だったら、その……アレだよ」

「あぁ……それはまた……お近づきにはなりたくないタイプだね」

なんとも想像しやすい下種らしいね、その看守は。にしても監獄島……か。犯罪者も実力次第で自分の戦力に取り込もうとする管理局がそれでも隔離するレベルってことは、確固たる信念を持っているせいで管理局と相容れない武人とか、体制を揺るがしかねない思想犯や政治犯とかが多いのかな。看守含めて。

「ところで犯罪者で思ったんだけど、どうして法律は被害者より加害者を守ろうとするの? そんな“犯罪者の更生に期待してる自分カッコイイ”みたいなこと考えてる人って多いの?」

というか、マスコミも視聴率を稼ぎたいがために被害者に追い打ちをかけてくるし、社会は被害者に対してフォローを全然してくれない仕組みになっている。誰が言ったかもわからないゴミのような噂、間違った解釈、他人への中傷……そうしてあらゆる情報の波が真実を飲み込み、嘘で塗り固められる。そしてその状態が事実であるかのように隠蔽され、簡単に忘れ去られる。

マキナの母はそうやって殺された。私達アクーナの民はそうやって追いつめられた。合法なら正義だと言わんばかりに、好き放題蹂躙してくる。情報とは、簡単にヒトの在り様を破壊できるのだ。

「確かに管理局も高ランク魔導師の犯罪者に対し、罪を軽減する代わりに管理局に所属してもらうやり方をよくしてるね。その件でも被害者に対しては何のフォローも無い。恐らく今の方が都合が良い上に、変えるのが面倒だから意図的に後回しにされてたりするんだろう。他にも報復されないようにとか、反省に期待してるなどと言っておけば、無駄に善人を装えるというのもあるんじゃないかい?」

「少し突けば壊れるハリボテ同然の見栄に、そんなに価値があるの?」

「彼らにはあるんだろうね、テレビを通して見てくる世間にはハリボテだけで十分通じるし。新聞やマスコミはスポンサーに都合の良い内容しか書かない、見える部分さえ見繕っておけば後はどうとでもなると思っているんだろう」

「情報操作……」

「実際、管理局も同じことをしているよ。軽犯罪者でも魔導師ランクが高ければ……いや、そもそも犯罪すらしていない人間ですら、でっち上げで罪を重くし、さっきの罪の軽減といった誘い文句……脅迫で追い込み、言いなりになる駒として吸収する。今はその面も控えめになったとはいえ、完全に消えた訳じゃない。シャロンも昨日、その面の一端を味わっただろう」

ああ、その通り。レジアスの言葉は、まさにその脅迫甘言そのものだった。管理局の悪しきミームは、表の人間にすら自然であると受け止められるものにまで蔓延っていたのだ。

「管理局の一番恐ろしい所は、多数の高ランク魔導師を抱えている戦力でも、次元世界中のロストロギアでも、ましてや技術でもない。思い通りに“シロ”を“クロ”に塗り替える権力だ。結局の所、司法に関わる人達にとっては全ての事件が他人事に見えてるのかもね?」

「じゃあ……特権階級の人やマスコミの人も、自分や自分の家族が被害にあわないと、考えを改めてくれないのかな……」

脳裏に浮かんだのはニダヴェリールの大破壊以降、闇の書関連の事件ということでやってきた管理世界の人達。彼らのマスコミが被害の現場としてアクーナに取材に来たことがあったのだが、彼らは私達の辛い気持ちもプライバシーも無視し、好き放題に無遠慮な質問をぶつけてきた。そして……彼らが期待する言葉が被害者の誰からも発せられなかったせいか、去り際にとんでもない事を言われた。

『どの内容もつまらないな、これじゃ無駄足だ。ちっ、いっそ全滅してた方が楽なのに』と。

だから……もう管理世界とは関わりたくないのだ。あの時、私は彼らがヒトの形をしているだけの得体のしれない化け物に見えて……外にあるものが、次元世界の何もかもが怖くなった……。

「うっ……! ぐぅ……! はぁ、はぁ……!」

「シャロン……!?」

「ご、ごめん……。嫌な記憶を思い出したせいで、ちょっと発作が出た……」

突然、心臓の辺りがきゅぅっと締め付けられるように痛み、ちょっと吐き気もあった。サバタさん曰く、これはPTSD……心的外傷後ストレス障害の発作らしい。あまり刺激の強い記憶を思い出すと、今みたく体調を崩したり、精神に変調をきたすことがある。世紀末世界でも時々こんな事があったのでザジさん達は知っているが、何をきっかけに発作が起こるかわからないのが怖い。

「ん、大丈夫?」

「うん……もう、平気……」

「(流石にトラウマの治療は時間がかかるからねぇ……一生治らないことだってザラにあるし)」

『(わずかに垣間見えたシャロンの記憶ですが、あんな仕打ちをされればトラウマにもなりますよ。ミッドチルダにいるだけで発作が起きてもおかしくないと考えると、今の状況はシャロンにとって猛毒の中に閉じ込められてるも同然なんでしょう……)』

心配してくれたケイオスが背中をさすってくれて少し楽になったが、私も私でこの記憶に蓋をして発作を抑えた。思い出さないでいられたら楽なのは間違いないが、しかし……簡単に水に流していい記憶ではない。だから辛くとも、忘れる訳にはいかないのだ。

で、話を戻すけど、海といえばまだもう一つ気になる点があった。

「あのさ、シオン。この赤い点だけど、沖合のど真ん中にあるよね」

「そうだね~」

「孤島とか海上基地とかも無くて、完全に海の底だよね」

「そうだね~」

「この辺、水深が3000メートルあるけど、生身で行ける場所じゃないよね」

「そうだね~」

「どうするの? 潜水艦とかあるの?」

「マウクランのマザーベースになら何隻かあるけど、ここには無いなぁ」

「……えっと、コレ詰み?」

「あはは。まぁ、いずれ何とかなるよ」

「そんな楽観的な……」

でも今すぐどうにかしなければならない場所でもないし、先に他を攻略してからでも遅くはないだろう。ただ、近い未来で水中戦が起こることは想定しておいた方が良いかもしれない。

「簡略的になるが、これが現在のミッドチルダの勢力図ってことになるね。ふぅむ、見てると何だか三国志を思い出すよ」

「どちらかといえば戦国っぽいと思うけど……魏、呉、蜀、この場合どこがどれに当たるのやら」

「こうして見るとまるで陣取り合戦だ。目下の目的はこの赤い場所を攻めることになるのか?」

「そうなるね、赤く表示された場所は今後世紀末世界風にアンデッド・ダンジョン、あるいはイモータル・ダンジョンって呼ぶとしよう。ただ、攻略するつもりなら防御陣地の突破が必要になる」

実際、ダンジョンの周囲には一人では太刀打ちできない数の敵勢力がいる。(シンボク)はジャンゴさんも初めてイモータル・ダンジョンに行く時、バイクで敵の妨害を潜り抜けていったと聞いている。アレも要は敵の防御陣地を強行突破していることになるし、敵地に潜るなら少数精鋭の方が小回りが利く。一人で全部やるしかなかったジャンゴさんと比べれば、私達の方がはるかにマシだろう。

「拠点攻めを基にした戦略なら、ダンジョンの周囲にいる敵を引きはがし、防御陣地の妨害を防ぎつつ、少数かつ機動力のある本隊を送りこむのが定石かな」

「ん、となると本隊の編成にはエナジー使いが最低一人は必要だ。外の敵の注意を引き付けるだけなら、別にエナジー使いじゃなくても良いし」

しかしいなくても大丈夫、という訳ではない。時には撃破しなければならない場合もあるだろう。ただ……私の歌は大多数、広範囲に影響を与える。戦いのために歌うのは正直不服だが、私が外に残ってエナジー使いではない者達に力を分け与える戦略を取った方が色々都合が良いかもしれない。

「敵陣の突破力もだけど、ダンジョン奥地でイモータルと戦う場合を想定すると、やっぱり本隊はケイオスが筆頭になる。任せるよ?」

「ん、任された。じゃあ外はシャロンに任せる」

でもケイオス一人だけだと情報収集も満足には出来そうにないし、攻略するまでの時間も長くなりそうだから、何人かパーティメンバーを編成すれば丁度いいか。諜報力や特殊能力も考えるとナンバーズを一緒にすれば何とかなるだろう。細かい指示はクアットロと相談して決めておけばいいし。

しかし……本隊はこれで良いが、外の陽動が戦力的に心許ない。いや、アウターヘブン社の兵士は皆屈強かつタフだけど、エナジー使いじゃないからアンデッドを倒せない。防御なら彼らだけで長時間持つが、攻撃だけは私の力がどうしても必要になるだろう。他にエナジー使いがいれば話は変わるのだが……いない以上は仕方ない。

シオン? あぁ、彼女は前線に出せない。このシェルターの最終防衛担当だからね。それに避難してきた市民の心の防波堤でもある以上、市民の見える所からシオンを引き離せば民心が離れる。それは今後の活動において都合が悪い。

「ところでシオン、ラーン商店街が聖王教会より濃い黄色に染まってるのは……」

「言わなくてもわかるだろう……」

「あ、うん……。じゃあそれは置いとくとして……ダンジョンの場所はどうやって見つけたの?」

「今朝のシャロンの歌がギジタイの次元断層と干渉して反応が出た場所だよ。動力源なのか増幅装置なのか、何があるのかまではわからなかったのだがね」

「逆に言えば、確実に何かがある場所ってことになる。別にいいんじゃないの? わかりやすいターゲットがあるって意味では」

というか私の歌、何気にデカい影響与えてたんだね。この事を周りが知ったらうるさくなりそうだ、例えば管理局とか、管理局とか、管理局とか。

『なんで3回も言ったんですか……』

強調の意味も込めて。

「ん、ついでに聖王教会もだけど」

「そうそう、ケイオスが言った通り、実は聖王教会のカリムから面会の要請が届いたんだ」

「あぁ、多分(月詠幻歌)ケイオス(レメゲトン)の件だろうね。あちらさんからしたら、絶対に目を背けられない事柄だ。管理局みたく、どうあっても監視下に置こうと画策してるに違いないから、この誘いは確実に罠だ」

「じゃあ無視するかい? それとも拒否の返信ぐらいはしておく?」

う~ん、無視した場合はメールが来たことを知らなかった感でごまかせるだろう。要は既読を付けたくないというアレだ。一方で返信したらメールに気づいてることになり、行ったら行ったでトラップ間違いなしだし、行かなかったら行かなかったで後に相手の立場が有利になるかもしれないが、よく考えれば今の聖王教会はほとんど形骸化している。そもそも私達に対しあちらが強制的な権利を持ってる訳でもない以上、従う道理が無い。だったら……ちゃんと拒否しよう。

「色々やることもあるし、拒否でお願い」

「了解した。私も正直、行った所で無駄になるだけだと思ってるからね」

「どうせ面会するなら管理局や聖王教会なんかより、むしろ公爵デュマとしてみたい。一方的に押し付けてくる連中と違って、身のある話が出来そうだもの」

「公爵と話、か……。そういや先日の会談の件は、今どうなっているのだろうね。ミッドを除く管理世界を銀河意思に譲渡……停戦協定の内容を市民に暴露された以上、管理局も何らかの対応をしなければ市民が暴徒と化するのはわかっているはず……」

「今の所、管理局に動きは無い。俺達が仕掛けを施している間も、あっちは静観していた」

「恐らく今後の対応や方針を大急ぎで検討中なんだろう。エナジー使いが全滅した以上、次の襲撃があったら一方的に蹂躙される……まさか」

今、私の脳裏に走ったのはスバルやギンガ、管理局の方に避難した市民達だ。管理局は自分達の力になるものは何でも利用する。だから避難民の中からエナジー使い、あるいは魔導師でも何でもいいから戦力になりそうな者を探し出し、アンデッドと戦わせようとしているのではないか、と。
『皆が助かるため』、『家族がどうなってもいいのか』、『お前がやらなければ全てが無駄になる』……なんて上っ面だけの綺麗事を言って脅し、他の選択肢を奪って修羅の道に放り込む。そんなことを平気でやるのが……ヒトだ。

というか三枚舌外交をしたイギリスみたいなことを頻繁にやってそうなんだよなぁ、管理局って。実際、イギリス生まれの局員(ギル・グレアム)いるし。それに管理世界のことだって、停戦協定と照らし合わせれば結局似たような状況になっている。あっちは子供だろうと平気で戦わせる組織だ、避難民を武器として使うことに躊躇なんてしないだろう。

「シャロン、気になるなら偵察を出そうか? 君はD・FOXの指揮官だ、命令を出す権利はあるし、誰も拒否するつもりは無いよ」

シオンもそう言ってくれたことだし、ここはゲームのミッション選択みたく考えてみよう。

1:イモータル前線基地急襲
2:残存モンスター排除
3:管理局強行偵察

う~む……疑念だけで動くと隙を突かれる。入れ替わりの件もあるし、当分の間管理局とは距離を置いて様子を見たい。確かに避難民を案じるなら今すぐ動くべきだろうが、私自身は別に万人を救いたい訳じゃない。自分にそこまでの力があると思えない以上、時には放置や見捨てることも視野に入れている。動くなら今の想像が本当に実行された時こそだろう。

一方、モンスター排除やダンジョン攻略は早めに処理しなければならない。こういうのは放置しておくと足元が危険だし、時間に比例して被害が増える。ダンジョン攻略はナンバーズとも相談してメンバーを決めたいから……よし。

今回は盤石に2を選択しよう。だがそのためには準備が必要だ。

「ひとまずこの後の予定だけど、昼過ぎからD・FOX主導でモンスター排除に取り掛かろう。なお、このミッションは私自身の実戦訓練も兼ねるから、私のパーティにはケイオスだけ同行させる」

「ん、了解した。それで開始が昼過ぎなのは何故?」

「私、まだ弱いから訓練しないとね。守るとか攻めるとか色々言ったけど、そのためには先に私自身の戦闘の技術も上げないといけないもの」

「文字通り最後の砦みたいなものだしね、シャロンの存在は。腕を鍛えることに反対はしないさ。それでは戦闘訓練だけど、VRでやるのかい?」

「そうする予定だけど、その前に武器の確認と素振りかな」

自分で言うのもなんだけど、兵士としての訓練を受けていない私では銃火器を正しく使えない。サイドアームでハンドガン一丁ぐらいは携帯しておいても良いだろうが、実際にかち合えば必然的にこの民主刀か、新しく受け取ったウーニウェルシタース、あるいは月光魔法で戦うことになるだろう。2年ほど使ってきた民主刀は良いとして、ウーニウェルシタースはちゃんと使って感覚を覚え、手に馴染ませなくてはならない。月光魔法はエナジーのコントロールを練習すれば、最小限の消費で使えるようになる。いっそ別の戦法を身に着けるのもありだ。時間が許すだけ色々試してみよう。

「それじゃあお互い作業もひと段落もしたし、昼過ぎまで自由時間ってことで。ナンバーズの皆にも、戻ってきたらそう言っといてね」

「了解」

シオンに言伝を頼み、私はフーちゃんを抱えて更衣室でジャージに着替えてからトレーニングルームへ向かった。シミュレーター室なら様々なVR訓練もできるし、ダンベルなどの器具もあるので一般的なトレーニングも可能だ。現に……、

「フンッ! フンッ! フンッ!」

現在進行形で筋トレしてる人もいた。な~んかどこかで見たような……と思ってたら、ケイオス曰く防衛隊長の部下の一人らしい。フロントプレス中の彼は上半身裸で角刈りのすっごい筋肉質の大柄の男で、要はマッチョでマッスルだった。ふと脳内で防衛隊長と並べてみたが、防衛隊長の体格は意外と普通なので、彼の方がガッチリしてて強そうに見えた。

「フッ、フッ、フッ……!」

更にその隣には……栗色の髪の女性がダンベルカールをしていた。

「ん、ジル・ストーラ? ここに来てたんだ」

「知り合い?」

「いや、テレビで見たことがあるだけ。シャロンは知らないだろうけど、彼女はフロンティアジム所属の格闘競技選手で、相手の攻撃に粘り強く耐えてスタミナが切れてきた所で一気に反撃するという戦法を使うが、防御力が足りず押し切られることが多いし、一方で故障が多いことでも有名。どうも体格や頑丈さの方面での才能に恵まれず、その上コーチの意向を無視して過剰にハードトレーニングしてるせいか、コンディションが整ってない試合が多くて勝率は正直に言ってあまり良くない。そのせいでまた練習過多になって……という悪循環に陥ってる。あの様子じゃ、また故障するんじゃない?」

フロンティアジム……? そういやフーちゃんの母親、カザネさんが所属してたのもフロンティアジム……ってことは、彼女はカザネさんの指導を受けていたってことか。でもその指導を無視した結果、悪循環に陥ったと。追いつめられてる時こそ、人の忠告はちゃんと聞くべきだね。

「……勝手言ってくれるわね、あなた達」

あ、ジルさんが苦々しい表情でこっちに反応した。

「ん、聞こえてた?」

「そりゃ目の前で話してたら聞こえるわよ。自分のことなら尚更ね」

「気分を悪くしたなら謝るが、世間一般の評価をそのまま言っただけだ。故障続きなのは事実だろう」

「何も知らないくせに……。私に才能が無いせいで、ずっと指導してくれたコーチにタイトルホルダーの指導者という栄光を与えてやれなかった。私がタイトルを得た姿を見せることができなかった……! この悔しさがあなた達にわかる?」

「いや、あんたの悔しさは指導への恩義によるものじゃない。自分の方法こそが正しいと立証したい相手がいなくなったが故の、ただの八つ当たりだ。タイトルホルダーの指導者? さっさと気付け、タイトルホルダーの栄光が欲しいのはあんた自身だと」

「じゃあ……じゃあどうしろってのよ……。結果を残せなかった私は、これからどうすればいいのよ……! どっちが正しくて、どっちが間違っていたのか、中途半端なまま終わってしまった虚しさはどうすれば晴れるのよ……!」

ケイオス、結構辛口言うね。でもこの人にはそれだけ強く言わないと聞き入れてくれなさそうだし、仕方ない点もあるか。それじゃあ、フォローは私の役目かな。

「ジルさん……あなたはそのコーチの指導内容は覚えてますか?」

「ええ……懇切丁寧に教えてくれたから、ちゃんと覚えてるわ……。従わなかった私が覚えてるのも変な話だけど」

「じゃあそれを誰かに伝えればいいんじゃないんですか? 一方で他の誰かには、あなた自身の思想による指導を行えば、その答えは出せます」

「私の思想とコーチの思想、それぞれの指導で強くなった子達が決着をつけた時、同時に私とコーチの決着もつく……」

これは即ち、文化的遺伝子(ミーム)の継承……その一端だ。文化、文明……それは遺伝子に刻まれない部分。過去のヒトが文字や絵、言葉といったありとあらゆるものを使って今にまで伝えてきた。

もし……その伝達手段が絶たれたら、文明は歴史の闇に消え去る。歴史のイントロンとして、彼らの意思は時の彼方へ流される。

「でもそれってつまり……私に選手を辞めてコーチになれってことでしょう? あのね、確かにあなたの言葉には一理あるけど、まだまだ現役でやれるのに引退しろって言われて、はいそうですかと簡単に受け入れるワケ……!」

その時、ジルさんの目が私のすぐ後ろ―――フーちゃんの方を向き、驚愕の表情を浮かべた。そういや……カザネさんはフーちゃんをジムにも連れていってたみたいだから、ジルさんがフーちゃんを知っててもおかしくない。

「たい?」

「あ、あなた……その子をどこで……!」

「一昨日の襲撃で、母親が死の間際に私へ託したんです」

「……! そう……だったのね。あなたが、あの人を看取ってくれたの……。こんな私が言うのもなんだけど……ありがとう、あの人の生きた証を守ってくれて……」

「ううん、今は守れてはいるけど、まだ……守り切れていない。この状況を抜け出さない限り……私達も、この子にも、未来は無い。ここで止まっちゃ駄目なんです……」

「言われてみればそのとおりね。あなたの言葉には一つの芯がある。諦めではなく、その場で立ち止まらないために行動する。逆境の中でも進めるその心の強さが、とても羨ましいわ」

「いえ、私は……強くなんかない……その芯にすがりつきながら、辛うじて立ってるだけです。道は後ろから崩れていってる……進むしか生き残れないから、進んでるだけ……。尤も、まともな方向に進めてるかはわかりませんので、せめて後悔はしないように自分の信じる道を進みます。その道が正しいかどうかは、私が判断することではありません」

「……そうね。今の行動が正しかったのか、答えは後世が出すものだものね。……あら?」

ふと私の体をジロジロ見てきたジルさんが、モミモミと二の腕や肩を触ったり、膝と脛をスリスリしたりして何かを調べ始めた。ちょっとくすぐったいがしばらく為すがままにされていると、徐に頷いたジルさんは私に問いかけてきた。

「あなた、格闘技に興味は無いかしら!?」

「はぁ……?」

「今ちょっと触診させてもらったんだけど、あなたの体……凄いわ!」

「凄い?」

「筋肉の力に柔軟性、骨の頑丈さ、骨格や体格のバランス、全てが高水準で維持されている! 格闘選手としては相当な逸材よ。将来的には優勝……いや、タイトルホルダー……あるいはワールドチャンピオン連覇さえ狙えるかもしれない……!」

「それもう殿堂入りレベルでは……?」

「正直に言って、私も驚いてるわ。あなたの体は文字通りダイヤモンドの原石よ! ええ、さっき言ったことは決して夢物語なんかじゃない! 良いコーチの手で磨き上げられたら間違いなく……!」

「あの……盛り上がってる所すみませんが、私そもそも格闘技をやるとは……」

「あ……! ほ、本当にごめんなさい! つい興奮しちゃって……」

「いや、大丈夫ですけど。まあ、今後のために格闘技を身に着けるのも一つの選択肢ですし、少し考えさせてください」

「そうね……あなたも何かやることがあるんだろうし、この話は一旦おしまいにするわ。私の方もコーチへの転向などを含めて、しばらく落ち着いて考えたいものね……」

近くの椅子に座ったジルは、「常に力不足の私が、あなたと同じ指導者になれるのかしら……カザネコーチ……」と呟きつつ、今後の身の振り方について考えを巡らせるようになった。まあ才能が無い云々はともかく、彼女は弱者の立場を身をもって知っている人間だ。もしコーチになったらどんな指導をするのか、多少の興味はある。

ってあれ? あの子は……!

「や ら な い か少女!」

「ぶはっ!? だから違いますってば!」

プランク中だった緑髪のツインテ少女が私の放った発言を反射的に否定する。今の言葉に反応するってことは、やっぱり昨日ストラトス家に配達した時、荷物を受け取った子だ。

「もう……前に聞かなかったことにするって言ったじゃないですか。わざわざ蒸し返さないで下さいよ……」

「あはは……ごめんね、もう邪魔するつもりはないからそのまま続けて良いよ」

「いえ……ちょうどいいので休憩に入ります。ハードトレーニングは良くないと、さっき言ってましたので」

う~ん、それはそれで邪魔しちゃった気がするなぁ。

それはそれとして……、

「ほわぁ……!」

なんでミウラちゃん、ついてきてるんだ?

「あのさ、ミウラちゃん。もう家族の所に戻っても良いんだよ?」

「え……その、迷惑……ですか?(うるうる)」

なんでそんな捨てられた子犬みたいな目をするの? 何も変なこと言ってないのに、すっごい胸が痛いんだけど。

「迷惑じゃないけどさ、ほら、大事な娘が一人で出歩いてたら心配するじゃない?」

「はい、一人で出歩いちゃいけないんですよね。じゃあ尚更です」

尚更ってことは……ああ、一人にならないために、私達にくっついてきてるのか。こりゃあ訓練の前に一度彼女を家族の下へ送り届ける必要があるなぁ。

「ん、そういやさっき言い忘れてたけど、この子の両親、今頃厨房で料理してるよ」

「へ、なんで?」

「朝は辛うじて供給が間に合ったけど、昼や夜、今後のことも考えると避難民への提供分を作るのがアウターヘブン社の食料班だけじゃ追い付かない。だからレストランを経営していた腕を見込んで、一時的に雇い入れた」

「雇ったんだ。いつの間に……っていうか本業どうするのさ」

「真面目な話、連日アンデッドが襲ってくるこの状況で一般人がレストラン経営なんてできると思う? あるいは一般人がのんきに外食に行くと思う?」

「……どっちも無理だよ。いつ襲われるかわからないんだから、とても落ち着いて料理を作ったり楽しめたりできる状況じゃないもんね」

ってか冷静に考えたら、よく今まで続けられたね?

「ってことで本業やってても客が来ない。つまり収入が見込めないから、ここで手伝ってもらうことになった」

ふ~ん……でも考えてみれば、この話は飲食店だけじゃない……安全地帯にない企業も軒並み業務停止していると見て間違いない。しかし逆に言えば安全を確保すれば、企業や事業が復活し、その恩恵を得られるようになるという訳だ。
アウターヘブン社は様々な分野で優秀な成果を出しているが、それは本社及びマザーベースでの話だ。ミッド支部ではPMC稼業が中心であり、研究開発などの発展に関わる部署はここに無い。つまり他企業の協力が無いと、新装備の開発なんてとても行えないのだ。

「ちなみにこれは少し前から進めていた話だから、急に取り決めた事ではない」

「ふ~ん、なら良いのかな。ただそうなると仕事中にミウラちゃんの面倒を見る余裕は無いのかも……」

よく考えたらこれって、敵の情報を持ってきた代わりに娘の面倒を見るよう預けてきた形になるんじゃ……。なにこれ、してやられた感がすごいする……。

『地味に世渡り上手なんでしょうね、親も子も』

「子も?」

『だって今のミッドでは、シャロンのそばが最も安全だと言えますからね。対アンデッドなら、の話ですが』

「……」

敵地に行く時は流石に別だが、確かに今みたいな平時ならそうかもしれない。子供ながら本能的に安全な場所を察しているという訳か。私は避雷針じゃないんだけどね!

ただ、親が飲食店の仕事で娘の面倒を見れないって話を聞いて、高町なのはの境遇を思い出した。クアットロから聞いた話から鑑みるに、彼女は必要な時期に親に守られなかった子供だ。いや、経営が安定する佳境を超えたら見る余裕が出来て守ってもらってたんだろうけど、要は間が悪かったのが重要なのだ。

……なるほど、今のミウラちゃんは大体その辺りの年齢なのに、こんな状況だからどうにかして一人にさせない解決策を模索した結果がコレか。親も子も、そして私もそれぞれ負担はあるが必要な利益はちゃんと得られる形にした。確かに世渡り上手だなぁ。

「それじゃ、シミュレーター室に入るね」

とりあえず安全のためにフーちゃんはケイオスに預け、私は自動扉を挟んだガラス張りのシミュレーター室に入り、左腰に挟んだウーニウェルシタースの柄を握り、鞘から抜いてみる。

この刀をちゃんと見るのはこれが初めてだが、雰囲気だけで凄まじい業物だってことが感じられる。“斬る”、ただそれだけを追及し、他はその補佐に過ぎない。そんな刀が高周波ブレードになっているんだ、そこらのデバイスなんか魔力でコーティングしていようが容易く切断できるだろう。さしずめデバイスブレイカー? それともイーター? 正直持ってるだけで恐ろしくなってくるレベルだ。

刀身の長さや刃渡りは目で確認したので、次は素振りだ。剣道の面みたく、上から弧を描くように振り下ろす。

ブンッ、ブンッ、ブンッ……!

何度も振り下ろし、手に重さが馴染むまで反復練習する。民主刀と比べてそれ以上に重いので、引っ張られないように重心に気を付けながら感覚を修正していく。

ほどほどに汗が流れてくる頃には、民主刀を使う時と同じ感覚が掴めたため、素振り以外の動きも交えて柔軟に剣術を磨く。そもそも私の剣術は我流だから、ぶっちゃけ技なんて何もない。唯一あるとすればサバタさんの指導で生み出した基本の型ぐらいだ。いつも自由体で戦うが、地球で色んな剣術の型を試したらこの型が最も馴染んだのだ。

世紀末世界でもずっと使ってきたから、もし攻撃に派生させるとしたらここから発展させた方がやりやすい。防御の型から攻撃に移るなら、カウンターが向いてるはずだ。ボクシングならクロスカウンター的な攻撃を、剣術でするなら……。

「居合い、か……」

今、私が居合いで思いついたのは……最も剣で切り結んだ相手で、かつ、マキナの仇である高町なのはだった。彼女が使ったのは、御神流、奥義―――虎切。正直気に入らないが、コンクリートの柱すら豆腐のように斬ったあの技は、居合いのイメージには最適だった。

「……」

目を閉じ、自分の体であの技を使うイメージをする。何度も、何度も、あの動きが敵だけの物じゃなく自分の物になるまで……。……ッ!

カチリと歯車が綺麗にはまったような感覚を得た私は、基本の型から剣を水平に構えて、フッと息を止めると同時に踏み出し、空気すら置き去りにする速度で横に振る。

ブォォンッ!!!

『おお……速度だけならあの居合いに匹敵するレベルですね。しかし、なぜ同じ技じゃなかったんです? さっきまで何度もイメージしていたのに』

「イクスの疑問は尤もだけど……何度もイメージしている内に一部の動きだけを利用した別の技が思い浮かんだんだ。ひらめきというか、天啓というか、そんなので勝手に対抗技が出来たというか……」

『相手の技を見切り、理解したらカウンター技がすぐに編み出せた。といった感じですか?』

「うん、大体そんな感じ」

『なるほど……やってることは戦闘を嗜む人なら誰でもやっていますが、その習得速度が尋常じゃないですね。相手が技を使えば使う程、戦闘が長引けば長引くほど、カウンター技を目の前でどんどん編み出すのですか。究極的にはどんな実力者が相手だろうと最後は攻撃すれば自分がやられるため、手を出せずに千日手に持ち込める才能……これは正直、戦いたくないです』

「なんで私と戦うイメージしてるのさ、イクス。第一そんな状況にはならんでしょうに」

『ですよね。すみません、変なこと考えてしまいました』

うん、私がイクスと戦うなんて状況が全然想像つかない。そもそも私はそんな状況にはしないと賭けたっていい。

『ただ、構えの状態からカウンター技を放つというなら、いっそ基本の型にも名前を付けたらどうですか? ほら、いつも基本の型といっても格好つかないでしょう?』

「じゃあ……せっかくだし、イクスが名付けてよ」

『私が決めて良いんですか? では僭越ながら……其の舞は流動の水が如し、剣に写りし御影は鏡の如し、いかなる技も断ち切れる事なき清流は戦士の荒魂を鎮める舞踏。いずれ大海に及ぶは“水鏡”の最果て也』

「何それ?」

『ガレアに伝わる詩です。ある光景を見て、それをどれだけ情的かつ美的に表せるか、という遊戯が昔あったんですよ』

「日本の俳句や川柳みたいなものかな」

『私は俳句などがわかりませんが、多分そうです。今のは“水鏡”という題がついた詩で、私の友……以前話した月下美人の友人が、剣の鍛錬をしていた時の青年の姿を詠ったものです』

「ああ、あの太陽仔の。ん? つまり青年もこんな感じの剣術を使ってたの?」

『どことなく似てると思っただけですよ。彼の剣術はもっと上の次元ですから、今のシャロンの腕じゃ簡単にあしらわれますよ』

「さいですか……」

『だからこそ友人と彼の剣にあやかって、シャロンが生き残れるようにこの名前を付けたいのです。水鏡の構え、と』

基本の型改め―――水鏡の構え、習得!

何はともあれ、私の剣術に攻撃の面が組み込まれたんだ。もうこの先、攻撃が下手だという言い訳は通じない。いずれ他の型を編み出すこともあるだろうが、当分はこれで何とかしよう。

……で、この刀も手に馴染んだ所で、そろそろはっきりさせておきたいことがある。

「ケイオス、聞こえる?」

『ん、どうした?』

ガラス張りなので、さっきまでやってた訓練は周りから丸見えだ。刃物を使う以上、安全のためにこうしたのだが、こうして皆に見られるのはちょっと恥ずかしい。とはいえこの部屋にいるのはケイオスとミウラちゃん、ジルさんにツインテ少女に防衛隊長と筋肉部下だけだ。今朝のゲリラライブと比べたら目線の量ははるかにマシだろう。

「ずっと気になってたんだけど、ウーニウェルシタースの鞘についてるトリガー機構。これって引いたらどうなるの?」

『俺が言うより実際に使って見た方が早い。納刀して試してごらん』

「なんか含みがあって怖いけど……わかった」

ということで言われるまま納刀し、トリガーを引いてみた―――瞬間。

ガチィンッ!!!!!!

「うひゃぁ!?」

内蔵された薬莢が起爆し、刀が弾丸のように飛び出てシミュレータ室の壁に轟音を立ててぶち当たった。あまりの出来事に思わず尻餅をついた私の姿に、ケイオスはこうなるのをわかってたからか、ニヤリと笑っていた。

『それは地球にいるサムライが使ってた刀をユーリ技術部長が模倣したものだ。何でもそのサムライは刀発射機構を利用して、神速を超えた居合いを放つんだと』

『なんですか、そのトンデモ人間……覇王もそんな真似はできませんよ。地球のサムライ恐るべし……!』

ケイオスの隣でこっちを見ていたツインテ少女が慄くが、何か妙な勘違いが起きている気がする。それはそれとして……この機構は元々使い手がいたのか。流石に真っ当な方法でこれを使えるようになるのは難しいだろうが……。

『シャロン? まさかとは思いますが……あなた、そのサムライと同じような居合いを放てるようにするつもりですか?』

「いやいや、サムライになれるほど自分に力があるなんて自惚れてはいないよ。ただ、もし使えるようになれれば……」

私の手でマキナの仇を討てる……高町なのはにトドメを刺す、切り札になる……。

『ん、いつかシャロンが使えるようになったら、水鏡の構えから放つことになると思う。さっきの動きを鑑みるに、シャロンの剣術は防御から一転して反撃に移りやすい。カウンターチャンスで決めるタイプだ』

「カウンターチャンスで決める……」

『正直に言えば、俺より刃物の扱いは上手い。経験を重ねてレベルアップすれば、斬撃モードも使えるようになるだろう。だけど戦法が水鏡の構えだけなら、刀を失った際、大幅に自衛能力が低下してしまう。元々の身体能力も高いんだから、多少は格闘技を嗜んでもいいと思う』

「格闘技ってことは……ジルさんの提案は中々良いタイミングなのかな?」

この先のことも考えたら格闘技を学ぶのも妥当だろうけど、あっちこっち手を出してスキルレベルが中途半端になったら本末転倒だし……さて、どうしようか。刀に絞るか、格闘技も覚えるか、あるいはエナジー魔法を追及して魔法剣士みたくなるか。……悩む。

「とりあえず学ぶかどうかは私の意思と、ミッションの状況次第ってことで……うん?」

あれ? そういやケイオスは今名付けたばかりの“水鏡の構え”をどうして知ってるんだろう? これはイクスの声が聞こえていないとわからないはずなのに。思い返してみれば、今朝デスメタル云々の話が出た時にもケイオスはイクスの言葉に反応していた。もしや……、

「ケイオス、もしかしてイクスの声が聞こえてる?」

『ん、言ってなかったっけ。シャロンがドライバーになってから、シャロンと同化してるイクスヴェリアの声も聞こえるようになったと』

『おぉ~! 私と話せる相手が増えるのは嬉しいです!』

精神世界にいるイクスが喜色満面の笑顔を浮かべている。実際、私もこれは想定外の喜びだった。昨日、部屋の見張りを任せたけど、その間何も無かったら退屈に違いない。だからイクスが話し相手になってくれるのなら、多少は退屈を紛らわせることができるだろう。

『話を戻すが、シャロンは刀を手にする前は、どう戦うつもりだった? 何も戦闘じゃなく強姦とかに襲われた際にどう身を守るつもりだったのか、という参考程度にだが』

「その時は、アクーナに伝わる究極奥義を使ったと思う」

『究極奥義? 随分物騒な名前だが……何をするんだ?』

「なんかね……その技を喰らえば、覇王ですら一撃で倒れ伏すと伝えられている」

『覇王……もしやクラウス・イングヴァルトか?』

「うん」

『なん、ですって……!』

うん? なぜか緑髪の少女が“覇王”という単語に異常な反応を示した。

『興味があるな。ひとまずVRで人間のモデルを出すから、その技使ってみてくれる?』

「いいよ」

ということで私が刀を拾う間にケイオスがVRを操作し、シミュレーター室の中央に電子とプログラムで作られた人間が現れる。ヴォルケンリッターのような自立行動可能なプログラム体と違い、シミュレーター室内でしか存在できず、同じ戦闘能力を模倣した……訓練相手だけなら務まる幻影の如き存在だ。

そしてVRで模倣された人間は……ん?

「う~ん……む~? どこか見覚えがあるなぁ……。顔の造形はディアーチェそっくりだけど……昔助けた誰かに似てるような……」

『ん、そいつは管理局のエナジー使いで名前は……あ~、狸でいいか』

狸でいいんだ……。別にこの人の名前に興味は無いから構わないけど。

『とりあえずその狸はプラクティスモードにしてるから、そこから動かない。思う存分技を試せるぞ』

「ありがとう。それじゃあ……」

ジャージの袖をまくり上げて、私はどうやってアクーナ究極奥義を放つかイメージをする。この技は手ではなく指先という細かい場所に、全身の力を集中させる必要がある。文献によればこの技はクラウスの覇王断空拳の亜種らしく、気の練り上げなどの技術にも同じ部分があるのだ。

「はぁああああああああッ!!!!」

『うわわっ!? シャロン! エナジーが、エナジーが凄いことになってます! ボコボコ沸騰してます!! 同化している私が暑苦しさで煮えたぎりそうです!!』

半泣きでイクスが悲鳴を上げるが、この技の真価を発揮するにはそれだけの力が必要だ。両手を合わせて人差し指だけ前に伸ばし、銃を彷彿とさせる構えをする。そして十分パワーが集まった私の両人差し指が今にも爆発しそうなまでの光に覆われる。チャージが終わったことで、私は一気に狸の背後に回り込み、姿勢を低くして力強く踏み込み、ソニックブームが起こるほどの勢いで技を放つッ!

「奥義! 英雄殺しッ!!」

直後、狸の尻に極光が刺さった。


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第13独立世界フェンサリル、イザヴェル東地区
アウターヘブン社FOB 待合室

「ンギャァアアアアアアアアアアアッッ!!!!!?????」

「うひゃぁ! ど、どうしたのはやてん!? 限界!? 限界きちゃった!?」

「へぇ、管理世界の人間は取り調べ中に奇声を上げるんだね。興味深い習性だよ」

「あああ、あびゃびゃびゃばびゃびゃ!?!!?!??! ほびゃばびゃあ!!!?」

「こ、今度は電流を流されたみたいになってる!? はやてん!? 大丈夫、はやてん!? はやてぇぇぇえん!!」

「しかしこれは深刻な問題だ。話が進められないね」

「だったらトイレぐらい行かせてあげなよ……今のはやてん、女性がしちゃいけない顔しちゃってるよ。アへ顔ダブルピースより絵面が酷いよ。社会的に死んじゃうよ、この姿を誰かに見られたら」

「じゃあ今死んだね。僕達が見ているし」

「あ、あ、あ……ひぐっ……」

レヴィ達はこの時はやてに限界が訪れたと思っていたが、実は違う。はやてはつい今しがた限界を迎えていたのだが、突然激痛と共に尻に何かがねじ込まれる感覚に襲われたのだ。そのおかげで堤防がわずかに押し戻され、ほんのちょっとだけ猶予を取り戻すことができていた。とはいえ限界寸前なのは変わらないため、事情聴取の終わりまで耐え抜けたかどうかは、レヴィとドS将軍が知る。


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第1管理世界ミッドチルダ
ミッドチルダ北部 聖王教会

「多忙につき面会は出来ませんって、アウターヘブン社はどういうつもりですか! 私達に黙って、あの忌まわしきギア・バーラーを匿っておいて!」

カリムに届いた返信メールを見て憤るシスター・シャッハだが、そもそもいきなり面会要請のメールを一方的に送って、相手が素直に来てくれると思っていたのだろうか。呼んでも無い使者がいきなり来訪して帰った後、歓迎されなかったと文句を言ってるようなものじゃない? それにもし来たら来たで、確実に何か足元を掬う策を用意してくる気がするし……頭に来てるのは見ててわかるけど、ちょっと落ち着いた方が良いと思う。

呆れた表情をするカリムだが、すぐにこちらへ謝罪の意を示した。

「ごめんなさいね、フェイトさん。シャッハもこの状況で色々切羽詰まってるのよ。それにロッサもアースラの中にいるから……」

「家族が心配なのはよくわかります。私も……かつては同じでしたから」

「髑髏事件……その爪痕は癒えるどころか、より悪化してしまった。公爵デュマ、ヴァランシアのリーダーにして、現時点で確認されてる中でも最強のイモータル。そんな彼と戦える力を持つ人間は、私達の中にはいないわ……」

「戦って勝ち目がある人は、サバタお兄ちゃんやジャンゴさん、後はサルタナ閣下ぐらいでしょうか?」

「だけど彼らはここにいないのだから、私達で何とかするしかないわ。それに……一応、勝ち目がありそうな人はまだ他にもいるわよ」

「……騎士カリム。それがケイオスのことなら、その考えは即刻放棄してください。ギア・バーラーの中で最も悪名高き背徳者に助けられては、二度と聖王様に顔向けできなくなります」

「あのね、シャッハ。長い付き合いの私だから、この際言わせてもらうわ。あなたの真面目かつ誠実な精神性についてはよく知ってるけど、既存の法やしきたり、周知されている知識や常識に固執しているのはちょっと悪いクセよ。もしかしたら私達が学んできた歴史や知識は、実際の出来事と齟齬があるかもしれないじゃない?」

「ですが……もし聖王様を殺したのが事実ならば、ケイオスの存在は聖王教会にとって、決して許されるものではありません。場合によってはイモータル以上の脅威なんですよ」

「ギア・バーラーの力に警戒するのは理解できるわ。彼がドライバーを得て万全の状態になったのなら、私達が束になっても勝てないってことも。……でもね、彼が明確な敵意を以って私達に攻撃を仕掛けてきたことがあったかしら? 歴史の真実を知っている生き証人である彼は、恐らく末期の聖王様の意思も、聖王教会の成り立ちも把握しているはず。つまりね」

「つまり私達は彼を誤解している、と言いたいのですか?」

「風評被害や思い込みってのは恐ろしいものよ。特にそれが大衆に当然だと受け入れられてしまっては。人間、一度イメージをそうだと決めつけてしまったら後で簡単に変えることはできなくなる。普通のヒトはつまらない真実より、面白い虚実を選ぶもの……。だから当時の人達が当人を“そうあって欲しい”と押し付けた幻想の方が、末世まで残るものなのよ」

「しかし歴史の記録は、作者個人の感情や世界の情勢に振り回されてはならないものです。ありのまま、あるがままを記録し、後の世に伝えていかねばならないものです。それが当然でしょう」

「シャッハ……その当然が出来ないのが、ヒトなのよ……」

哀しそうにカリムが俯くと、シャッハも流石に意気地になっていたと気づいたようで少し落ち着いたようだ。私は……今まで共闘していたケイオスのイメージと、シャッハや歴史の資料に書かれていたギア・バーラー、ケイオスのイメージが妙に重ならないことに違和感を感じていたが、カリムの話のおかげでやはりと納得した。イクスヴェリアの時も思ったが、今の時代に残る記録は当時の人間達によって加工され、歪められている。だから歴史をそのまま鵜呑みにしちゃいけないんだ。

ユーノ達スクライアの一族が遺跡発掘などを生業にしているのは、そうやって埋もれた真実を探っているからなのだろう。今まで考古学が私にはよくわからなかったが、ようやくその面白さに触れた気がした。

「私も、今は手を出さず見守るだけに徹した方が良いと思います。管理局がシャロンに強硬手段を取ったことで、向こうはピリピリしているので、今のタイミングでちょっかい出したら余計な火種になりかねません。それにギア・バーラーと共に、イクスヴェリアの真実も探りたいので……」

「何ですって? イクスヴェリア?」

やはりベルカの王ということもあり、カリムがイクスヴェリアの名前に反応した。私は海岸に打ち上げられた脱出ポッドの調査内容を伝えると、カリムは複雑な表情を浮かべた。

「冥府の炎王イクスヴェリア……彼女が復活しているとなれば、聖王教会としては保護すべき対象になるのだけれど、正直な話、維持するだけで精一杯なのよね、今の聖王教会」

「むしろラーン商店街のように変な性格の人が増えてきて、真っ当な方向性に戻そうと尽力しているのが現状ですし……」

「いや、あれはあれで真っ当な人達なのよ。単に性格が変なだけで」

あ~うん、私も何度か行ったことはあるけれど、事あるごとに入信書をねじ込んでくる姿勢には恐怖を通り越して狂気すら覚えた。

「狂気と言えば……フェイトさん。あなたはいつ休んでるんですか? 先程フレスベルグを閉じ込めた棺桶を運んできた時に思ったのですが、確かあなたは日が昇るまで避難民を警護していたはずですが……」

「ぶっちゃけ、徹夜明けです」

「フェイトさん、流石にそれは頑張りすぎなんじゃないかしら? それじゃあ日常生活もままならないわよ?」

「それは……そうですね。まあ、日常生活って言っても、最近は襲撃のせいで徹夜なんてしょっちゅうで、戦いの後に報告書を作らないといけないので家に帰る頃には昼過ぎなんていつもの事ですし、姉さん達は地球にいるので家に帰っても誰一人迎えてくれる人はいないし、眠いし疲れてるしでまともにご飯も喉を通りませんし、ようやく眠れるかと思えばまた襲撃でたたき起こされて……」

「ごめんなさい! そんな体調なのに呼んじゃって本当にごめんなさい!!」

「あはは……正直、死んだ方が楽かもしれないって思い始めてきていますよ……」

「それ末期症状! すぐに休んで!」

「あぁ、フェイトさん。今の話を聞いて罪悪感はありますが、今後の事態に備えて一つ頼みたいことがあります」

「頼みたいことですか、シスターシャッハ?」

「ええ、執務官の権限があるあなたにしか出来ないことです。実はミッドチルダには、ギア・バーラーを製作したエレミアの子孫が今もいます。その子孫を探し出し、可能ならギア・バーラーに関する情報を手に入れて欲しいのです」

「シャッハ、さっきも言ったけどギア・バーラーの悪評は……」

「確かにカリムの言う通り、ギア・バーラーの情報は改ざんされているのかもしれません。しかし事実がどうなのかまだわからない以上、今のうちに対策はしておくべきでしょう」

う~ん、シャッハの弁もわかるっちゃわかるけど、まだ自分の知識が正しいと決め付けている節が見える。ミームにどっぷり漬かった真面目人間が警戒すると、こんな風になるのか。これも……火種の一種か。
ここで下手に拒めば、彼女は一人でもエレミアの子孫を探しに行きかねない。相手次第じゃ余計な騒動になりかねないし、相手もこんな状況で圧の強い人に尋ねられたくないだろう。
やっぱり……私がやるしかないのかな。呪いと負傷で前線を退いたとはいえ、どうも私はまだゆっくり休むことが許されないようだ。……辛いなぁ……。

「それと、私は今からアウターヘブン社へ赴きます。こういうことはやはり直接会って問いただした方が確実なので」

だからシャロンに余計な刺激与えちゃダメだってば! もう、この頑固シスター! ヒトの話全然聞かないよ!?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「……で、あんたがいきなりシェルターに来るとは、どういう了見だ?」

「クックックッ……そう疑うな。私はそこのお嬢さんへいくつか用事があるだけだ」

英雄殺しの披露の後、なぜか泣いてるように見えた狸の姿が消え、私は休憩のために一度シミュレーター室を出た。その際、見ていた者達の間で何とも言えない空気が蔓延する中、いきなりドレビン神父がトレーニングルームにやってきたのだ。

相変わらずうさん臭い雰囲気がプンプンするが、ショッピングモールの事件では彼の助力があったおかげでケイオスが飛んでこれたのだから、なんだかんだで助けられてるのは事実だ。これでも私はこの人に感謝しているのだ。

「さて、お嬢さん。要件の一つとして、ショッピングモールでの落とし物だ。今度は失くさないようにするがいい」

「あ、きよひーベル。あの時、落としちゃってからもう戻らないと思ってた……ありがとう」

気のせいか、きよひーベルの女の子が「逃がしません」と言いたげな顔に一瞬見えた。とりあえずもう落とさないように、ウーニウェルシタースに括りつけておこう。

「さて、用事の一つ目が済んだ所で二つ目は……これだ」

「これは……記録ディスク?」

ドレビン神父が手渡してきたディスクはごく一般的なものだが、表側に内容に関するであろうタイトルがサインペンでメモ書きされていた。書かれてあったのは、

「『星喰い(プラネット・イーター)』……名前からして物騒な代物みたい」

「ドレビン……どこでこの記録を手に入れた?」

「先日、次元世界用として使っていた私のコンピューターに、あるメールが送られてきた。月詠幻歌の歌姫……お嬢さんへ、添付ファイルをコピーして届けて欲しいとな」

「このディスクに入っているのは、その添付ファイルってこと?」

「ああ。金も支払われていたからな、ちょうどいい小遣い稼ぎになった」

「メールの差出人は?」

「エア、と書かれていた。知り合いか?」

「いや……」

だけどその名には聞き覚えがある。レジアスとオーリスが話していた管理局のAI、『拡張現実の電脳王(AR・IT・TOP)』、通称エア。確か、超大規模情報処理システム『J・D(ジェーン・ドゥ)』と接続して超光速学習を行わせると言っていたが、そのエアが……どうして私に情報を送った?

何にせよモンスター退治に行くのは、この情報を見てからでも良いだろう。再生機器は……、

「ん、ウーニウェルシタースでも再生できるぞ。ここをいじれば、ディスクがセットできるようになる」

ケイオスが鞘についてるボタンを押すと、カシャンとフック状にディスクの土台が出てきた。武器にディスク再生機器を取り付けるとは、これ如何に……。というか、刀は真っ当だが鞘は無駄に多機能だね、このデバイス。トリガー機構は無駄にならないようにしたいところだけど。

じゃ、早速再生してみようか。えっと……これはどうやら音声データのようだ。

『(読み込み音)……今宵、私は歴史的光景を目の当たりにしているのだろう。だが同時に、この歴史は抹消される。これからの時代には不都合だから。世界から自分達の罪を覆い隠すため……いや、自分達が犯した罪が二度と視界に入らないために。不毛の大地を捨て、新たな大地を創造し、生き残った人類をそこに移住させる。まさに神の奇跡と言っても過言ではない行為だ。だが、あれは断じて奇跡などではない。あれは……この星への冒涜行為なのだ』

星への冒涜行為……?

『確かに長きに渡る戦乱により、ベルカの大地は滅びた。もはや再生は見込めないまでに荒廃した。しかし……生き残るために星を破壊するのは、果たして正しいのか? 人類はこれまでも己がエゴのために世界を思い通りに変えてきたが、死の運命に抗うために星を滅ぼすのは、世界の怒りを買うのではないか? 矮小の身である私では判断できない。だからせめてこの記録を残し、後世に尋ねよう。あのバベルの塔の果てに生まれる世界、ミッドチルダに住む者へ……』

ミッドチルダが、バベルの塔の果て……? 星を滅ぼして生まれた?

そこから私は音声データの内容を聞きながら、情報を整理した。ベルカは過去に存在した世界で、イクスやオリヴィエ、クラウス、リインフォースといった存在を生み出した。しかし滅亡して、今では……ん? ちょっと待った!
ベルカって、ニダヴェリールと同じように世界ごと壊れたんだっけ? 確か通説では大規模な次元震に巻き込まれた……とあるが、冷静に考えれば奇妙な点がある。世界の残骸も残らないほどの次元震があったなら、どうしてベルカ関連の血統が今も残っている? これだけ多くの血統が生き残るには、いくら何でも逃げる時間が足りないと思うのだが……。

大体ベルカの世界って、どこにあったの? なぜ次元世界では有名な世界の座標が、一般には知られていないの? あ……待って、まさか! いや、ひょっとして……!

『シャロン……私が眠っていた船がこの世界にあった理由って……』

「(確証は無いけど、そういうことだと思う。ミッドチルダは……ベルカだ。ベルカの大地を切り取り、空に浮かせた偽りの大地がミッドチルダだ。海はそのまま持ち上げたから、そこに沈んでいたイクスの船も一緒に運ばれたんだろう)」

『何と……つまり星喰いとは、即ち』

「(星を丸ごと喰らい、自らが想像した大地に塗り替える世界規模の戦略兵器。機械で作られた世界樹だ)」

『人間のエゴとは、ここまでやるのですか……』

「(どこの地球空洞説だって言いたいけど、その空洞が元々一つの世界だった点が特に質が悪い。こういう出来事って大抵全員を助けるようなことは無く、取り残された人も少なからずいただろう。他にどうしようも無かったのもあるんだろうけど……規模がおかしいよね)」

『となれば、地上に見える建造物の一つが星喰いなのでしょうけど、一体どれが……』

「(いや、見当はついてる。管理局地上本部……あれが星喰いの上部ユニットだ)」

『え? あれが!?』

「(そして今も空にあるギジタイ……管理局の本局も、星喰いだ。つまり、星喰いは二つあったんだ。地上も本局もそれぞれ長い改造を経た結果、原型とはかけ離れた姿になってるだろうけどね)」

『管理局の二つの星喰い……片方はベルカからミッドチルダを形成し、地上本部となった。じゃあ、もう片方は……』

「(……イクス、2つ目の建造目的がどうだろうと、イモータルが入手してる時点で考える意味はもう無い。それよりも、星喰いの機能をもっと考えた方が良いよ。あれには間違いなく、アルカンシェルとは違ったベクトルでの広域破砕兵器の側面があるはずなんだ)」

『つまり、宇宙からツァーリボンバー級の核兵器で常に狙われてるようなものですか。何とも恐ろしい話です。しかし……それならこの情報は管理局、いや、ミッドチルダに生きる全ての人間にとって最悪のタブーのはずです。なぜ管理局のAIであるエアがそれを知っているんでしょう……そして、どうしてその情報を私達に届けたのでしょう……』

確かに……管理局にとって致命的であり、ミッドを守るためならむしろ隠すべき情報を渡してきたエアの目的がわからない。一応、この情報のおかげでファーヴニルは今、ミッドチルダ地底世界ベルカで眠ってるってことは判明したのだが、私はアレと接触する気はない。

「ん、そういうことか。ギジタイの次元断層、イモータル・ダンジョンにある何か、そしてミッドチルダの大地を支える星喰い、ようやく線が繋がった」

「クックックッ……お前も真実にたどり着いたか、同胞」

「おかげさまでね。2年前、エネルギー資源不足によって管理局がフェンサリルに強硬手段をとったのも、これがあるなら納得できる。だが……ダンジョンの攻略が何をもたらすのか……シャロンに限らず、人間が背負うにはあまりに重いな」

「ほう、ドライバーに伝えないのか?」

「今伝えても情報量が多すぎて混乱する、だから間を置いてから話す。それに、シャロンは止まらないことを選んだ。なら俺は、彼女を止めさせないだけだ。この真実を知った程度で躓かせるつもりはない」

「クックックッ……一回で何十万人規模の命を揺るがす行為を、程度呼ばわりか。まあいい、彼女がどう選択するにせよ、私にとって彼女は非常に面白い娯楽だ。せいぜい楽しませてくれ」

ヒトの不幸を糧に、またしても愉悦顔を浮かべるドレビン神父。ケイオスは彼のそういう面には呆れているが、役に立っているのは事実なので何も言わなかった。

「これで、全てのギア・バーラーがドライバーと契約した。これで、覚醒の条件がまた一つ……」

「……全て? ドレビン、お前は……」

「さて、時間になったから予定通りモンスター退治に行こう、ケイオス」

「ん……了解だ、シャロン」

「せっかくだ、私も同行して良いかね」

「え、なんでドレビン神父が?」

「ただの興味本位だ、邪魔をするつもりはない。それにだ、私がいれば何かと都合が良いぞ。特に野次馬ども相手にはな」

「う~ん……頼りになるのは本当だし、別に良いか」

「ん、やっぱり胡散臭いけどな」

「フッ、歓迎の言葉として受け取っておこう。(彼女にとって情報が多すぎるなら、もう一枚のディスクは次の機会に渡すか。この間がどう影響するか、実に楽しみだ)」

そう言い、ドレビン神父は『声帯虫』とタイトルが書かれたディスクを再び懐にしまい込んだ。

 
 

 
後書き
シャロンの策:内容自体はすごく単純です。
おけんこさま:シンボク ぬいぐるみの一つ。状態異常を回復できます。
ミウラ:なのはVividより。
クロノ:不意を突かれました。
監獄島;名前はゼノブレイド、場所のイメージはMGS3 グロズニィグラードより。
マスコミ:シャロンのトラウマの一つ。
管理局強行偵察:ACネタ。思えば今のシャロン達、ラストレイヴン並みに時間の配分がヤバいです。
ジル・スト―ラ:VividStrikeより、リンネのコーチ。
水鏡の構え:ゼノギアス ラムサス閣下の技。魔法はエレメンツ系統なので、剣は閣下系統にしました。なお、マキナがはやてに言ったシャロンの才能はこれのこと。
アクーナ最終奥義・英雄殺し:発案者はルア。シャロンは下ネタに抵抗が無いので敵対する相手には普通に使います。なお、狸は巻き込まれ損。
フェイトそん:怪我や呪いがあるのに、未だ苦労人です。
星喰い:ゼノブレイド2の要素を込めました。


マ「やっほ~! ここならダンベル40Kgぐらい持てるようになれるよ、マッキージムで~す♪」
フ「もてたい訳じゃないが地道に鍛えとります、弟子フーカじゃ」
マ「さてさて、ついにジルコーチが出てきた訳だけど、察しの良い方はシャロンとリンネの関係に薄々気づいていると思う」
フ「ミウラさんとも関係が出たからのう。後はヴィヴィさんぐらいか?」
マ「となれば、シャロンの周りにもっとロリが集まるね。幼女ばっかりのPF……アリだと思います!」
フ「戦力は不安じゃがな。それよりも……わしはミッドチルダは外郭大地だった、という新設定に正直すごく驚いたんじゃが、そうなった理由を解説してくれんか?」
マ「オッケー。まずベルカは大規模な次元震に巻き込まれた、というのが公式設定にあるんだけど、そもそも次元震の威力は星や世界を丸ごと消し粒にするほどだ。その辺りはジュエルシード事件で説明されてたはず。で、それなら聖王教会やベルカ王家の生き残りがあれだけいるのは、次元震の影響が及ぶ前に逃げたからだと最初に考えたけど、じゃあなんで他の世界へ散らずに皆してミッドにいるのか。管理局がベルカ王家の血統を監視するため、という理由を始点にした所、敵対していた者の視点から王は別々の世界に隔離した方が治安には良いはずだと考えた。ベルカ王の力は一騎当千なのだから、それが徒党を組んで一斉に反逆したら管理局と言えど多大な被害を被るに違いない。なのに皆ミッドにいる、聖王教会含めて。それは即ち、ベルカの人間は管理局の都合の悪い情報を知っている。それが外に漏れないように、ミッドに閉じ込めておきたいんじゃないか、とね」
フ「その情報こそが、ミッドチルダ外郭大地設定、という訳じゃな」
マ「俗に言う、ニードトゥノウの原則って奴さ。今回、情報操作による固定観念や常識について語ってたけど、要は真実を皆が受け入れる訳じゃないって話。じゃ、今回はここまで!」 
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