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第三章

「これはまたな」
「同じ関西の鉄道会社でね」
「面白い移籍先だな」
「そうね、けれど近鉄でもね」
「活躍して欲しいな」
「今度はね」
 二人でこうした話をして広島の赤ヘルから近鉄の白、赤、青の派手なユニフォームを着た加藤を見守った。二人共ここ二年の加藤の成績から不安であったが。
 近鉄では二人の心配を吹き飛ばす活躍を見せた、それで健作は加藤が逆転満塁サヨナラホームランを打った時に友奈に言った。
「やってくれてるな」
「そうね」
 友奈も健作に笑顔で答えた。
「凄いの打ってくれたね」
「勝負強さが戻ったな」
「長打力もね」
「どうかって思ってたけれどな」
「やってくれたわね」
「もう大丈夫だな」
「そうね、あと少しで名球会だし」
 これが見えてきたからとだ、友奈は健作に話した。
「だったらね」
「このまま近鉄で頑張って欲しいな」
「二〇〇〇本安打までね」
 つまり名球会までとだ、二人で話して加藤を見守った。だが加藤は順調に打つ中でまたしてもだった。
 トレードに出された、今度のトレード先は。
「おい、巨人だぞ」
「加藤が巨人に行くの」
「ああ、何かな」
 どうにもという顔でだ、健作は妻に話した。同じ部屋で二人の子供達が朝ご飯を食べているが今は野球に夢中だった。
「場違いだな」
「そうよね、加藤が巨人ってね」
「活躍出来たらいいけれどな」
「近鉄で復活したしね」
「あと少しで二〇〇〇本安打だからな」
「そろそろ引退だし」
 そうした年齢になっていた、加藤も、それで二人は加藤に是非巨人で二〇〇〇本安打を脱製して欲しいと思ったが。
 加藤は巨人ではあまり出場機会がなく代打が多かった、ヒット数も順調ではなく二人も心配な顔になった。
「今年の名球会は無理か」
「そうかもね」
「何か巨人も扱いにくそうだな」
「じゃあ何で獲得したのよ」
「巨人だからな」 
 この頃もこの忌むべき邪悪なチームの体質は同じであった、ただこの頃のフロントはまだましな方だっただろうか。 
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