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暴走する正義

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第一章

               暴走する正義
 アフリカにあるその国は今非常に乱れていた、政治の腐敗と民主化それに経済の回復を求めて市民達が常に抗議活動を行っていた。
「民主化しろ!」
「この国を変えろ!」
「腐敗打倒!」
「革命を起こせ!」
 こう口々に言ってデモをしてだった、民衆は日々政府に抗議を行いそれがやがて革命につながった。それでだった。
 民主化し腐敗もなくなった、だが。
 その中でだ、首都にある大学で教鞭を取っているカロッゾ=モンドルは険しい顔になって学生達に言った。
「民主化はいいにしても」
「何かありますか?」
「革命は成功しましたが」
「政府の要人達は追放されましたが」
「何かありますか」
「心配ごとがありますか」
「ここからどうなるかだ」
 アフリカ系独特の褐色の肌の顔を曇らせての言葉だった、髪の毛は白くなっていて面長の顔に眼鏡が似合っている。スーツも品よく着こなしている。
「それが問題だ」
「民主化してもですね」
「また独裁政治に戻ってはいけない」
「そういうことですね」
「そうだ、それとだ」
 モンドルは学生達にさらに言った、
「私はもう一つ気にしていることがある」
「それは何ですか?」
「教授が気にされていることは」
「一体何でしょうか」
「暴走だ」
 それだというのだ。
「一部の人達の暴走だ」
「暴走?」
「暴走といいますと」
「何かありますか」
「ようやく民主化が成った」
 革命の結果それが果たされたというのだ。
「それはいい、しかし民主化を守る為にだ」
「一部の人が暴走したら」
「その時が怖い」
「そう言われますか」
「そうだ、そうなってはだ」
 一部の者が暴走すればというのだ。
「いいことにならない、民主主義を潰すものは何でもその芽を摘む」
「そうした流れですね、今は」
「非民主的なものは徹底して嫌われていますね」
「今の我が国ではそうですね」
「そうなっていますね」
「これが暴走してだ」
 非民主化なものへの排撃、それがだ。
「徹底したものにならなければいいが」
「それがですか」
「教授の心配ごとですか」
「それの一つですか」
「独裁への逆戻りも問題だが」
 そしてと言うのだった。
「暴走もな」
「問題ですか」
「そちらも」
「そう言われますか」
「教授としては」
「そうだ、そんなことがなければいいが」
 不安な顔で言うのだった、そして。
 モンドルは大学から国の状況を見守っていた、男女共の普通選挙と複数政党制により健全な状況になっていた。
 だがその中でだ、不意に。
 彼は見付けた、ある者達が街のレストランで話していたのだ。
「あいつは駄目だな」
「ああ、民主的じゃない」
「とんでもない奴だ」
「あいつは懲らしめてやれ」
「まさか」
 モンドルはそのレストランで食事を摂っていたがその彼等を見て思った。 
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