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レーヴァティン

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第百八話 善行がもたらした果報その十三

「蔵書でも奥義が書かれている様なものは写させてくれないな」
「それは仕方ないですね」
 良太もそれはと述べた。
「充分考えられることです」
「そうだな」
「はい、高野山はこの世界でもです」
「多くの奥義を持っているな」
「そうした宗派なので」
 密教のそれだ、これは開祖である空海上人が伝えた山としてもそうおいそれと世に教えるものではないと考えているのだ。
 それでだ、そうした書はというのだ。
「やはりな」
「どうしてもですね」
「そうした書についてはな」
「諦めるしかないですね」
「それは俺もだ」
「わかっておられますか」
「世にはそうしたものもある」
 世に広められない奥義、そうしたものがというのだ。
「宗教の世界はとりわけな」
「それ故に」
「俺もそうした書はな」
「諦めますね」
「知ることは大事だが」
 それでもというのだ。
「奥義の様なものはどうしてもある」
「そうしたものは無理強いもですね」
「しても相手は教えてくれない」
「教えられないと考えているが為に」
「だからいい」
「戸籍謄本と同じっちゃね」
 愛実が自分達が起きている世界から例えを出した。
「抄本ならともかくっちゃ」
「謄本はな」
「役所に本人が行ってもっちゃ」
 本籍地がある場所の役所にだ。
「出してくれないっちゃ」
「それは俺も経験がある」
「知られてはいけないことが書いてあるっちゃ」
「だからな」
「そうしたものはっちゃ」
「どうしようもない」
 まさにというのだ。
「このことはな」
「そうした風っちゃな」
「奥義等はまた別だがな」
 戸籍謄本とは、というのだ。こちらは個人情報でも極めて内密のことが書かれている。それに対して奥義はその宗教の核心か迂闊に世に広めては危険なものである可能性があるのだ。それ故でなのだ。
「とにかくだ」
「相手がどうしても外に出したくないものもあるっちゃ」
「そうしたものまではだ」
「求めないっちゃな」
「そうだ、それはいい」
「他の寺社でもっちゃな」
「貴族の蔵書でもな」
 こちらの方でもというのだ。
「いい」
「そうしたものを除いて」
「それでもかなりの知識になるからな」
「だからいいっちゃな」
「そうだ、その考えでいく」
 英雄は知識の収集そして学問ひいては教育のことも考えていた、そのうえで今は大坂に戻るのだった。


第百八話   完


                2019・4・1 
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