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戦国異伝供書

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第四十四話 上田原の戦いその五

「ここはじゃ」
「ここは?」
「ここはといいますと」
「お主達もわしと同じくじゃ」
 こう二人の老臣に言うのだった。
「ゆっくりとじゃ」
「あの場においてですな」
「手当をですな」
「しようぞ、ただ手当てをして傷が治るのを待つよりもじゃ」
「それよりもですな」
「あそこにいればですな」
「うむ、ずっと早いからな」 
 だからだというのだ。
「ここはじゃ」
「ゆっくりとですな」
「傷を癒すことですな」
「そうじゃ」
 まさにと言うのだった。
「よいな」
「わかり申した」
「それでは」
 二人も晴信の言葉に頷いた、そしてだった。
 三人はその場所に入った、そこは温泉だった、三人でそこに入ってだ。晴信はそこでも甘利と板垣に話した。
「こうしてじゃ」
「温泉も用意する」
「このこともですな」
「戦に勝ってことを進めようと思えばな」
 そうならばというのだ。
「やはりな」
「大事ですな」
「ただ傷が治るのを待つよりも」
「それよりもじゃ」
 湯の中で言うのだった。
「この方がずっと早いからのう」
「ですな、この湯は薬湯です」
「傷を癒してくれます」
「それ故に傷を負えば入り」
「癒すべきですな」
「そうじゃ」
 まさにと言うのだった。
「ゆっくりと湯に入っていようぞ」
「いや、疲れも取れますし」
「温泉はよいですな」
「風呂も湯もいいですが」
「温泉も」
「そういうことじゃ、さて今はゆっくりと傷を癒すが」
 晴信はこうも言った。
「それからじゃ」
「再び動きますな」
「信濃の北に対して」
「そうしますな」
「うむ、あの戦で勝ってじゃ」
 晴信は上田原、勝ったが怪我をした先程の戦のことを述べた。
「そこから葛葉城と思ったが」
「それはですか」
「考えなおしますか」
「うむ、あそこから葛葉城を攻めるより」
 考えつつだ、甘利と板垣に言うのだった。
「むしろ先に砥石か」
「あの城ですか」
「あの城を先に攻めますか」
「そうした方がよいか」
 こう言うのだった。
「ここは」
「確かに」
 甘利は晴信のその考えを聞いて述べた。
「そうした方がです」
「よいな」
「はい、言われてみますと」
「だからじゃ」
 それでというのだ。
「ここはな」
「葛葉城ではなく」
「先にじゃ」
 まさにというのだ。 
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