星河の覇皇
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第七十一部第二章 ゾロアスター級超巨大戦艦その五
「彼もそうだった」
「はい、あの戦争の冬の寒さで死にましたが」
「その意味では悲運の名将と言えるが」
「私が思いますに」
「源義経はさらにだな」
「悲劇の英雄です」
「その才覚と功績を疎まれ兄に殺された」
まさにというのだ。
「そうした英雄ですので」
「だからだな」
「少し毛色が違うのは確かです」
「こう言っては何だが」
キロモトは考える顔になり八条に話した。
「悲劇の名将はだ」
「連合ではですね」
「あまり、な」
好まれないというのだ。連合は物語の嗜好は全体的にハッピーエンドだ、誰かが死んでいてもおおむねそうであればいいという考えだ。
「どう考えも義経はサッドエンドだな」
「はい」
八条も否定しない。
「バッドエンドといよりは」
「サッドエンドだな」
「そうです」
「バッドエンドよりもだ」
連合においてはというのだ。
「好まれない」
「兄に討たれて死ぬ英雄は」
「悲劇の英雄の中でもな」
「とりわけ、ですね」
「好まれないからな」
それでというのだ。
「どうかと思うが」
「しかしです」
「それでもか」
「源義経は鮮やかな勝利を収めましたので」
「彼を艦名に選んだか」
「そうです」
他の軍事的英雄と並んでというのだ。
「そうしました」
「成程な」
「他の英雄もいましたが」
日本には、というのだ。
「軍事的英雄も」
「何人もだな」
「織田信長や豊臣秀吉もそうですし」
戦国の世を終わらせた彼等もというのだ。
「西郷隆盛や東郷平八郎も」
「そうした人物でよかったのではないのか」
「最初は東郷平八郎かです」
日露戦争の英雄だ、日本海海戦においてロシア海軍を破り日本の奇跡の勝利を大きくたぐり寄せた。
「西郷隆盛、坂上田村麻呂も考えました」
「多いな」
「源氏でしたら源義家、徳川家康も考えましたが」
「それでもか」
「どうも艦名としてです」
どうにもというのだ。
「相応しくないと思い」
「それでか」
「止めました」
「そういえば源義経は」
「艦名に合っていますね」
「呼びやすい」
キロモトも言った。
「私もそう思う」
「そうですね、ですから」
「その名前にしたか」
「そうです、それでなのです」
「そうか、言いやすさもあったか」
「坂上田村麻呂ですと」
「どうも呼びにくいな」
キロモトはまた答えた。
「どうにも」
「はい、そして東郷平八郎は」
「日本の誇る英雄だな」
軍事的英雄という意味でだ。
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