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英雄伝説~西風の絶剣~

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第60話 生誕祭 後編

side:フィー


 遊撃士協会グランセル支部を後にしたわたしとリィンは、まずラッセルを探すことにした。


 多分ティータも一緒にいると思うから取り合えず武器とかを扱っているヴァイス武器商会とオーブメントの整備をするウィンガルド工房を順に向かったんだけど……


「わー!見てください、アガットさん!最新モデルの導力銃ですよ!カッコイイなぁ……」
「お、おう。そうだな……」


 あっ、居た居た。アガットと一緒だったんだね。


「ティータ、アガットさん、ちょっといいですか?」
「あっ、リートさん……じゃなくてリィンさんにフィルちゃん……でもなくてフィーちゃん……で合ってるかな?あうう、混乱しちゃうよ……」
「だ、大丈夫だティータ。それで合っているよ」


 偽名を使っていたからティータが混乱しちゃっているね。わたし達はティータを落ち着かせてから話に入る事にした。


「もう目が覚めたのか?」
「はい、ご心配をお掛けしてすみませんでした」
「ハッ、誰が猟兵なんざの心配なんかするかよ。お前らがカシウスのおっさんに雇われていたとはいえ本来俺達は相いれない関係だ。今は借りがあるから見逃しているが、本来ならここにいる時点で拘束して牢にぶちこんでやりてぇくらいだぜ」
「アガットさん……そんな事言ってますけど、結構リィンさんの事心配していましたよね」
「そ、そんな訳ねーだろうが!生意気言ってるとシメるぞ!」
「きゃー♡」


 ティータとアガット、少し見ないうちに大分打ち解けれたんだね。アガットのあんな顔初めて見たかも。


「ティータ、ラッセルはいないの?」
「フィーちゃん達はおじいちゃんを探しているの?でもごめんね、おじいちゃんはツァイスの工房に戻っているんだ」
「工房に?何かあったんですか?」
「例の地下遺跡で見つけたオーブメントを調べるとか言って速攻で帰ったんだよ。俺にティータのお守を押し付けてな」


 ティータとアガットからラッセルの事を聞いたが、どうやら今はグランセルではなくツァイスにいるらしい。


「おじいちゃんに何か用事でもあったんですか?」
「実はね……」


 わたし達はリィンの謎の力をラッセルに調べてほしい事を二人に伝えた。


「リィンさんに謎の力があるんですか?」
「ああ、俺にも良く分からないんだが使うと何倍も強くなれるんだ」
「へぇ、面白そうじゃねえか。クラウゼル、それを使って俺と戦えよ」
「辞めといたほうがいいよ、リィンも制御できていないし一時的とはいえロランス少尉とも渡り合ったくらいなんだから。それが暴走したらどれだけ危険かアガットなら分かるでしょ?」
「チッ、つまらねえな。じゃあそれが制御できるようになったら俺と戦え。いいな?」
「分かりました。その時は重剣のアガットの実力を見せてもらいますね」


 話を終えたわたし達は、さっき挨拶しに行ったグランセル支部に向かった。そこでエルナンに事情を話して導力通信機でツァイス支部のキリカにラッセル博士への連絡をお願いした。


 数十分待っているとキリカから連絡が入って、明日の朝までには準備をしておくから絶対に来いとラッセルが気合を入れていたと教えてくれた。


「俺、一体何をされるんだ……」
「あはは……おじいちゃん、興味を持っちゃうと結構無茶なこともするから……」
「まあ頑張れよ……」


 リィンはそんなラッセルの様子に不安を抱き、ティータは苦笑いしてアガットは諦めろという表情でリィンの肩を叩いていた。


 二人のデートをこれ以上邪魔するのは無粋かな?と思いわたし達はグランセル支部の前で別れた。そしてティータとアガットにシェラザード達がエーデル百貨店にいると聞いたのでそこに向かった。


「姉弟子、シェラザードさん、カルナさん。こちらにいらしたんですね」
「あら、リート……じゃなくてリィン。アンタ目を覚ましたのね」
「無事に目を覚ましたのなら何よりだ」
「ご心配をお掛けしました。姉弟子も……姉弟子?」


 シェラザードとカルナに声をかけたリィンはアネラスにも声をかける。だがアネラスはプルプルと体を震わせるだけでリィンに反応しなかった。でも……


「うわ―――――ん!弟弟子く―――――んっ!!」
「おわぁ!!?」


 アネラスは感極まったのか勢いよくリィンに抱き着いて頭を撫でていた。


「良かった!本当に良かったよ!弟弟子君、一週間も寝たきりだったからもしこのまま起きなかったらと思って心配していたんだよ!」
「姉弟子……ありがとうございます。そんなにも心配をして頂いて弟弟子として嬉しく思います」


 リィンも嬉しそうにアネラスを抱き返す、まあ今くらいはいいよね。暫くしてアネラスも落ち着いたので改めて挨拶をすることにした。


「それにしてもまさかアンタ達が噂の猟兵兄妹だったとはね。全然気が付かなかったわ」
「ああ、顔は知っていたが見事に騙されたよ」
「騙していてすみませんでした……」
「そんな顔しないの。立場上複雑な関係だっていうには分かっているけど、アンタ達にはエステルが世話になったし今日くらいは立場は忘れて仲良くしましょう」
「そうだな、あんた達にはダルモア市長での件でも世話になったと聞いた。いつかは戦う時が来るのかもしれないけどそれはそうなったらさ」
「シェラザードさん……カルナさん……」
「……サンクス」


 わたしとリィンはシェラザードとカルナの心遣いに感謝をした。出来れば戦いたくないけど猟兵をしている以上そうはいかない。それでもこの二人は受け入れてくれた。リベールって優しい人ばかりだよね。


「私は弟弟子君とフィーちゃんが猟兵でも構わないよ!だって可愛いは正義だからね!」


 アネラスからすれば猟兵であることよりも可愛いければ良いという考えみたいだ。わたし、可愛いのかな?


 その後リィンはせめてものお詫びとして3人にアクセサリーやネックレスを自腹で購入してプレゼントした。それ以外にも他の女性陣にもお詫びの品として色々と買っていたんだけど、本当は男性陣にもプレゼントを買ってあげたかったみたい。でもゼノ達へのおみやげも買うとなると流石にミラが足りなかったのでまた別の機会に贈り物を送ろうってリィンは言っていた。


「フィー、これを受け取ってくれるか?」
「えっ、わたしにもくれるの?」


 するとリィンは私にもネックレスを買ってくれた、わたしはいいよとリィンに言ったが俺があげたいんだと言われてしまうと断れなかった。リィンが買ってくれたのは銀十字の施された綺麗なネックレスだった。


「綺麗……」
「うんうん、フィーちゃんの銀髪と合わさってよーく似合ってるよ!」


 アネラスにも似合ってると言われてわたしはとても嬉しくなった。


「リィン、ありがとう」
「お、おう……気に入ってくれたのなら良かったよ」


 わたしは笑みを浮かべてリィンにありがとうとお礼を言う、するとリィンは顔を赤くしながら嬉しそうにほほ笑んだ。暫く見つめあっていると不意に多数の視線を感じ振り返ってみる、その視線はシェラザードとカルナ、そしてアネラスのものでニヤニヤした表情でわたし達を見ていた。


「アンタ達、なんか今までと接し方が違うわよね~」
「うんうん、弟弟子君のフィーちゃんを見る目が違うよね!」
「こういうのは野暮だが、それでも知りたくなるのが人の性だ。で実際はどうなんだ、フィー?」
「リィンに告白したからちょっとね」
「えっ、えぇぇぇ!?フィーちゃんが弟弟子君に告白―――――ッ!!?」


 多分バラされるんだろうなと思い敢えて何も言わなかったリィンだったが、期待通りわたしは普通にバラした。
 その後女性陣が盛り上がってわたし達の関係などを聞いてきたので正直に話した。まあリィンが居心地の悪そうな感じだったけどそれ以外の皆と私は盛り上がっていた。


「はぁ……シェラザードさん達はしゃぎすぎだろう……」
「女の子だからね、そういう話は好きなんじゃないの?リィンもウジウジしてないで気持ちに応えなさい!って怒られてたし」
「善処します……」


 シェラザード達と別れた後、わたしとリィンは町中をぶらついていた。エステルとヨシュアはどうやらデート中のようで他も皆も顔は見たが今どこにいるかは分からないとのことだ。


「エステル達、いないね」
「ああ、二人もデート中らしいし明日に挨拶した方がいいかもしれないな」
「そうだね、じゃあ私達もデートを楽しもっか。あっ、あそこのアイス屋前に来た時よりも繁盛しているね」
「本当だな、まあ今日は暑いしアイスも良く売れるんだろう」


 確かに今日は結構暑いからアイスも売れると思う。でもあんなに繁盛しているのを見てるとつい食べたくなっちゃうな。


「フィー、アイスでも食べていくか?」
「えっ?」
「食べたそうな顔をしていたぞ」
「バレたか」


 ペロッと舌を出して白状した。あんなに熱心に見つめていたらそりゃバレるよね。


「俺も食べたいし、少し待つことになりそうだけど行ってみるか?」
「うん、行こう」


 わたし達も列に並んでアイスを購入する。その時に店員の人に顔を覚えてもらっていたようで「あの時のカップルさんじゃないですか」と言われたので久しぶりと返事を返した。
 ラウラがいないことを気にして何か意味深な視線を送られたが無事にアイスを買う事が出来たよ。


「おっとっと……」
「トリプルは頼みすぎたんじゃないのか?」
「甘いものは別腹。リィンだってダブル頼んでるじゃん」
「ダブルは普通だろう。しかしそれだと立って食べるのはキツそうだな、何処かで座って食べられる場所はないか?」
「あっ、リート君にフィルじゃない!」


 二人で休憩できる場所を探していると誰かに声をかけられた。聞こえた方に視線を向けるとそこにいたのはエステルとヨシュアだった。


「エステルさん、ヨシュアさん。貴方たちもアイスを食べていたんですね」
「えへへ、奇遇だね。でもリート君が、目を覚ましていたなら直ぐに会いに行けばよかったわ」
「ご心配をお掛けしてすみませんでした」
「まあこっちに来て話さない?場所も空いてるしね」
「じゃあお言葉に甘えてそうさせてもらいますね」


 わたし達はエステルとヨシュアが座っているベンチの空いている一角に腰を下ろす。


「それにしてもリート君が目を覚ましてくれて本当に良かったわ。一週間も昏睡状態だったから心配してたの」
「重ね重ね申し訳ありませんでした」
「そんな謝らなくてもいいって。あっ、そういえばリート君とフィルって偽名何だっけ?」
「ん。わたしはフィーでリートはリィンという名が本名」
「騙したりしてすみませんでした……」
「あはは、リート……じゃなかった、リィン君ってば謝ってばかりだね。あたし達も色々助けてもらったしお互い様って事で良いじゃない」


 頭を下げるリィンにエステルは手を振って謝らなくてもいいって言ってくれた。


「そういえばリィン君とフィーは西風の旅団っていう猟兵団の一員だって聞いたわ。あたしって猟兵についてはあんまり知らないのよね。普段どんな仕事をしてるの?」
「エステルさんは俺達が猟兵だって知っても何も思わないんですか?」


 シェラザードやカルナ、エルナンにジンとグラッツなどの遊撃士協会の関係者はわたし達を受け入れてはくれたが、わたし達を見る目にほんの少し警戒の色があった。それは仕方ない事だと自負している、だって普段は敵対している関係だからだ。前みたいに純粋に接する事は無理だろう。   

 
 でもエステルだけはそんなものは一切なく、純粋に気になって質問しているのが分かった。そんなエステルにリィンは意外そうなものを見るような眼で彼女にわたし達が猟兵であることに何も思わないのかと質問した。


「そりゃあたしも遊撃士と猟兵が相いれない関係だってことくらいは知っているわ。でも二人はあたし達を助けてくれた良い人だから怖いとか危ないとか全然思わないわ」
「……」
「……エステルらしいね」


 さも当然のようにわたし達を良い人だと言ったエステル、そんな彼女にリィンはポカーンッとした表情を見せ、わたしも苦笑してしまった。エステルって本当に優しい子だよね。


「エステルさん、ありがとうございます」
「えへへ、どういたしまして」


 頭を下げるリィンに太陽のような笑みで返すエステル、彼女を見ていると毒気が抜かれてしまう。


「あっそうだ。エステルさん、これを受け取ってください」
「ふえっ、何これ?」
「騙していたお詫びに女性陣に贈り物を送っているんです。こんなもので許してもらえるとは思っていませんが、良ければ受け取ってもらえますか?」
「そんな気にしなくてもいいのに……でも折角だから頂くわね」


 エステルは可愛らしい模様の描かれた袋から二つの髪留めが出てくると嬉しそうにほほ笑んだ。


「わぁ、綺麗な髪留めね。丁度こういうのが欲しかったのよ、ありがとうリィン君!」
「喜んでもらえたのなら良かったです。ヨシュアさんにも何か買おうと思ったのですが、生憎手持ちのミラがもう少なくて……また後日に何か贈り物を……ヨシュアさん?」
「……えっ?何か言ったかい?」
「ヨシュア、大丈夫?顔色が悪いけど……」
「……ああ、大丈夫だよ」


 リィンがヨシュアに声をかけるが反応が遅かった。今日は何だかヨシュアの様子がおかしいね、さっきから一言も喋らないし顔色もどこか悪く見える。わたしが声をかけても大丈夫だと言ったがどう見ても具合が悪そうだ。


「さっきアイスを買いに行ってから様子が変なのよ。具合が悪いのならお城に戻って休もうって言っても聞かないし」
「もしかして俺達が一緒にいるからですか?」


 そっか、エステルは受け入れてくれてもヨシュアが同じように受け入れてくれるとは限らないよね。エステルの人を信じる心は美徳だが同時に付け込まれる隙にもなる、そんな彼女をフォローしているのがヨシュアだ。わたし達を警戒していても不思議ではない。


「いや、そんなことはないよ。確かに思う事がない訳じゃないけどエステルの言う通り君たちには色々と助けてもらったからね。本当に具合が悪いだけなんだ、不快な思いをさせてしまったのなら謝るよ」
「い、いえ……それなら大丈夫です。でもそんなに具合が悪いのならやはり休まれた方がいいのではないでしょうか?」
「ただの頭痛だから大丈夫さ。それに今はエステルと少しでも長く一緒に居たいんだ、だから大丈夫……」
「ヨシュアさん……」


 ヨシュアの必死なお願いにリィンもわたしも何も言えなくなってしまった。そこまでエステルと一緒に居たいだなんて凄いストレートに言ったね、エステルも顔を赤くしているしもしかしてもう付き合っているのかな?


「エステル、ヨシュアとの仲進展したの?」
「え、えっと……まだ何もしていないわ」
「そうなんだ、あんな情熱的なセリフをヨシュアが言ったからもう付き合っているのかと思った」


 小声でエステルと会話するが、どうやらまだ告白はしていないらしい。ヨシュアも絶対エステルの事好きだろうし両想いなんだからさっさとくっ付けばいいのに……リィンのヘタレさを思い出してもどかしくなってしまった。


「フィーはリィン君と何か進展があったの?」
「ん、告白したよ。返事は保留中だけどね」
「そうなんだ……」
「エステルは告白しないの?」
「今日の夜に一応するつもりよ」
「そっか、頑張ってね」


 どうやらエステルも恋の勝負を決めるみたいだね。上手くいくことを祈っているよ。


 その後わたし達はエステル達と別れて再び町をぶらぶらとしていた。途中でミュラーとデートしていたユリア、メイベル市長やクラウス市長、マードック工房長などリィンやわたしが出会った人たちにも挨拶をしていると不意に背中に誰かが抱き着いてきた。


「フィルお姉ちゃん!久しぶりだね~!」
「ポーリィ!」
「兄ちゃんも久しぶりだな、フィルを泣かせたりしていないだろうな?」
「クラム……相変わらずだな」


 背中に抱き着いてきたのはポーリィだった。リィンに声をかけたクラムの後ろにはマリィやダニエル、テレサとクローゼがこっちに歩いて来ていた。


「リートさん、フィルさん、お久しぶりですね。こうやってまたお会い出来たことを嬉しく思います」
「テレサ先生……王都に来ていたんですね」
「ええ、折角の生誕祭ですので皆で遊びに来ました」
「孤児院の方はどうなったの?」
「まだ暫く時間はかかりそうですがお陰様で復興の目途が立ちました。これも皆さんの真心のお蔭です、本当に何と言って感謝をすればいいのか……」
「ん、そっか。それを聞いてホッとしたよ」


 どうやら順調に復興に向けて話は進んでいるみたいだね、良かったよ。


「リートさん、お久しぶりですね」
「クローゼさん、お久しぶりです。心配をお掛けして申し訳ありませんでした」
「いえ、こうして無事に再会できたのですから堅苦しいお話は後にしましょう」


 クローゼはウィンクして口に指を当てた。まあここには一般人が多いから後から本題について話すとしよう。


「リートさんとフィルさんは今お暇ですか?もしよかったら私達と一緒にお祭りを見て回って頂きたいのですがどうでしょうか?」
「いいんですか?」
「ええ、子供たちも喜びますから」
「じゃあお言葉に甘えて」


 テレサの提案にリィンは自分達がいたら水を差すんじゃないかと聞くが、テレサは子供たちが喜ぶと言ってポーリィ達も頷いていた。そういう事ならとわたし達は頷いて皆で生誕祭を楽しむことにした。


「やあリート君。久しぶりだね~」
「オリビエさん……」


 そんな中街の一角で演奏をしていたオリビエと遭遇した。周りには多くの人が集まっており、演奏の腕は凄いんだとわたしは感心する。


「オリビエさんは怪我はもう大丈夫なんですか?」
「うん、平気だよ。君たちと違って僕はアーツでやられたからまだ軽い怪我だったんだ。今ではこうやって演奏会を開けるくらいには回復できたからね」
「良かった、オリビエさんにもしものことがあったら……」
「おや、もしかしてリート君、等々僕の愛に応えてくれる気になってくれたのかい?」
「ミュラーさんに申し訳がありませんでしたからね」
「ガクッ……」


 リィンはああ言っているけど、実際はかなり心配していたんだろうね。だって隠しているけど嬉しそうだもん。なんだかんだ言ってリィンもオリビエが好きなんだね。


 その後わたし達はオリビエも交えて生誕祭を楽しんだ。途中でオリビエがミュラーに見つかって何処かに引きずられていったけど、それ以外は平和に時が過ぎていき気が付けば夕方になってしまっていた。
 ホテルに孤児院の皆を送り届けて、わたしとリィン、そしてクローゼはグランセル城に向かっているところだよ。


「改めてリィンさん、フィーさん。今回のクーデターでは本当にお世話になりました」
「いえ、俺達は自分がしたかった事をしただけです。それに実際にリシャール大佐を止めたのはエステルさん達ですから」
「その結果を出せたのはお二人やラウラさんのお力添えがあったからです。それにクラムから聞きました。放火事件の際孤児院の皆が襲われそうになった時、お二人が戦ってくれたと……」
「えっ、クラム喋っちゃったんですか?」
「前にルーアンでリィンさん達と別れた時にクラムとリィンさんが二人だけで話していた事を聞きだしたんです、だからあの子を叱らないであげてください」
「そうだったんですか……」
「出来れば再会できたあの時にお礼を言いたかったのですが、色々あって言えずにいました。でも漸く言う事が出来ます。本当に何とお礼をおっしゃればいいか……ありがとうございます」


 クローゼは涙を流しながらわたし達にお礼を言った。


「ん、友達を助けるのに理由なんていらないよ。ねえリィン」
「ああ、俺も妹がお世話になった人たちに恩返しができたから気にしないでください」


 わたし達がそういうとクローゼはニコッとほほ笑んで手を握ってきた。この笑顔が見れたのなら最高の報酬だね。


「そうだ、お二人にはまだ話していませんでしたが今日の夜にお城で晩餐会が行われるんです」
「へぇ、そうだったんですか」
「その晩餐会がどうしたの?」
「実はおばあ様がお二人やラウラさん、ルトガーさんにも出席していただきたいとおっしゃられているんです」
「お、俺達が晩餐会に!?」


 リィンは驚いているが無理もないよ、だって王族が出る晩餐会に猟兵が出席するなんて前代未聞だからね。


「そ、そんなことできませんよ!ラウラはともかく俺達は猟兵ですよ!?」
「ん、流石にマズイと思うよ。そもそも反発する人はいなかったの?」
「確かにお二人やルトガーさんを危険視する人もいました。でもモルガン将軍が説得してくださったんです」
「モルガン将軍が……ですか?」
「はい、あのお方も表立って露わにはできませんがお二人には感謝しているんです。エルベ離宮で助けた女の子を覚えていますか?あの子はモルガン将軍のお孫さんなんですよ」


 あの時助けた女の子がモルガン将軍の孫……それは知らなかった。そのおかげでモルガン将軍に助け船を出してもらえたんだね。


「それでもやはり場違いというか……」
「リィン、流石に女王陛下が直々に招待してくれたのにそれを断ったらそれこそ不敬って奴になるんじゃないの?」
「むっ、それは……」


 わたしの言葉にリィンは頭に指を当てて考え込む。さっきは反対する人がいると思ったので行くのは躊躇したが、問題が無いのなら別に出席してもいいと思うよ。


「……因みに団長にはこの話は?」
「勿論もう既にしています。ルトガーさんも美味しい物やお酒が食べられると張り切っていました」
「団長……」


 団長らしいというか何というか……普通はそんな即決したりしないと思うけど。


「……分かりました。女王陛下のご好意を無碍にはできません、俺達も出席させていただきます」
「ふふっ、エステルさん達も来ますからきっと楽しい晩餐会になりますよ」


 緊張して表情を硬くするリィンを見て、クルーゼはクルッと笑みを浮かべた。わたしもおかしくなってクローゼと同じように笑ってしまった。


「じゃあお城に戻ろっか。晩餐会楽しみだね」
「でもテーブルマナーとか知らないぞ。前にラウラの実家で食事を頂いたときは無礼講で済んだが、今回は王族主催の晩餐会だ。無様な姿は見せられないな」
「確かに少しくらいはテーブルマナーについて勉強をしておかないと恥を描いちゃうね」
「なら私がお二人に最低限のマナーを教えますね」
「サンクス、クローゼ」
「こういう時育ちの悪さって出てしまうんだよな……是非お願いします」


 そしてわたしとリィンはクローゼにテーブルマナーを教わるためにグランセル城に急いで戻った。



―――――――――

――――――

―――


「ふう……お腹いっぱい……」


 晩餐会を終えたわたしとリィンはグランセル城の客室に戻ってベットに隣り合わせで座っているよ。ラウラはシャワーを浴びて寝ちゃったし、団長も客室に戻ってからお酒を飲み過ぎたからか直ぐに寝ちゃった。だから今はリィンと二人きり……って訳じゃないけどまあ似たような状況にあるかな?


「オリビエも大人しかったね、てっきりリュートでも引くのかと思ったよ」
「それ本当にしようとしてミュラーさんに止められていたぞ。まったく……あの人は何処にいても変わらないな」
「ふふっ、エステルや皆も楽しそうだったしね。でもヨシュアだけなんか様子がおかしかったけど」
「まあ彼も人間だから突然体調を崩す事もあるさ。幸い良くなってきたとは言っていたし大丈夫だろう」


 ヨシュアの様子がちょっとおかしく感じたけど、まあリィンの言う通りヨシュアも人だから体調を崩す事くらいあるかもね。


「でもまさか女王様と一緒にご飯を食べられるなんて想像もしていなかったよ、すっごく貴重な体験をしたんだね」
「ああ、猟兵である俺達がまさか晩餐会に呼ばれるとは思ってもいなかったな。アリシア女王陛下に頭を下げられたときは心臓が止まりそうなくらい驚いたぞ」
「ん、とっても優しそうな人だったね。わたし達猟兵にまでお礼を言ってくれるなんて」


 リィンに寄り添いながら思い出話に花を咲かせていた。結局何者がわたし達をリベールに連れてきたのかは分からなかったが、結果的には良い思い出になったと思う。エステル達やクローゼ、孤児院の皆にティータ、沢山の友達が出来たから。


 そしてリィンに想いを伝えることが出来た。答えはまだ聞いてないけどリィンにはちゃんと考えてから返事をもらいたいからね。


「さて、今日はもう寝ようか。明日は朝早くからツァイスに行かないといけないしな」
「ん、そうだね」


 わたしはリィンと一緒にベットの中に潜り込んだ、リィンはそろそろ離れて寝ないかと言ったが無視した。心臓の音が聞こえたから緊張しているみたいだね、意識してくれているのかな?


「それじゃお休みなさい、リィン」
「ああ、お休み。フィー」


 ゆったりと頭を撫でられてわたしは夢心地に浸る。そういえばエステルが告白するって言っていたけど、もうできたのかな?明日がちょっと楽しみかも。


 そんな思いを胸に抱きながら、わたしは夢の世界に旅立った。


 
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