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八条学園騒動記

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第五百十五話 洪童の結論その六

「そういうのをね」
「早いうちにか」
「出していれば」
「もてていたか」
「あんた達の望みを適えていたわよ」
 そうなっていたというのだ。
「本当にね」
「そうだったか」
「そう思うと残念でしょ」
「そうだな、しかしな」
「しかし?」
「あまり強くはな」
「思わないのね」
「ああ、今お前に言われたが」
 それでもというのだ。
「色々あった、見てきたことを前に出したらか」
「シェークスピアから人間や社会を学んでいることもね」
「他の文学もか」
「まあ好色一代男はともかくとして」
 タイトルと内容が露骨過ぎるからとはだ、ナンシーは言葉の中に含めて表には出さずそのうえで洪童に語った。
「他の作品はね」
「読んで学んでか」
「それで得たものを前に出していけば」
「もてていたか」
「人間顔やスタイルよりも」 
 それ以上にというのだ。
「内面から出るものが大きいから」
「内面がもてるものだとか」
「持てるでしょ、お顔だけ見て判断する娘がいても」
「男でもな」
「そんな娘は結局ね」
「大した娘じゃないか」
「外見だけ見ていいとか駄目とか決めて酷い振り方して相手傷付ける様な娘は」
 それこそとだ、ナンシーは今度はハムレットを読みつつ述べた、こちらは男が女を芝居とはいえ手酷く振る。
「碌な娘じゃないわよ」
「顔がよくてもだな」
「内面はね」
 それこそとだ、ナンシーはさらに言った。
「ブスよ」
「性格ブスか」
「それよ」
 文字通りにというのだ。
「それ以外の何でもないわ、だからね」
「顔やスタイルだけで判断する奴はか」
「最初から相手にしないといいし」
「そうだな、付き合ってもな」
 例えそうしてもとだ、洪童も頷いて述べた。
「どうせな」
「わかるわよね」
「碌なことにならない」
「人の内面を見ようとしないとかね」
「それだけでアウトだな」
「私達がさっき話したそれぞれの馬鹿よりましでも」
「どっちも極端過ぎるからな」
 愚か者達の中でもとだ、洪童も返した。
「流石に」
「ええ、けれどね」
「それでも馬鹿な奴なのはな」
「事実だから」
 人を外見だけで判断して内面を見ない、そうした者はというのだ。
「男女構わずね」
「そうした奴は放っておいてか」
「あんたそんな内面があったなら」
「出していけばか」
「本当にもててたわよ、というか内面って自然に出ない?」
 人間のそれはとだ、ナンシーは洪童に怪訝な顔で問うた。
「そうならない?」
「それはな」
「どうとも言えないの」
「俺はな」 
 難しい顔になってだ、洪童はナンシーにこう答えた。 
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