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戦国異伝供書

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第四十一話 人と城その二

「力があり申す」
「そうであるな」
「ですから」
「あの家についてはじゃな」
「迂闊に攻めずに」
「大軍そして優れた将帥を率いてな」
「攻めましょうぞ」
「わかっておる、ではじゃ」
 それならばとだ、晴信は山本に応えてだった。
 確かな声でだ、こう告げた。
「万の兵でじゃ」
「攻められますか」
「甲斐と諏訪、佐久、上田の兵を集めてな」
「そのうえで」
「万の兵を以て攻めるか」
「そうですか、万の兵で」
「どう思うか」
 ここまで話してだ、晴信は山本に問うた。
「このことは」
「よいかと」
 これが山本の返事だった。
「兵は多いに尽きます」
「そうであるな」
「戦で最も強いものは何か」
「大軍じゃな」
「はい、しかも我等はです」
 山本は晴信にさらに話した。
「お館様が武具を見直されて」
「そちらもよくなっておるからか」
「その強みもあります」
「うむ、実はな」
「実はといいますと」
「織田家のことを聞いておる」
 この家のことをというのだ。
「あの家も武具をよくしておるとのことじゃ」
「鉄砲を多く揃え」 
 山本も述べた。
「そうして」
「そのうえでな」
「槍も」
「それもじゃな」
「そうです、驚くべき長さで」
「他の家の槍の二倍はあるというな」
「無論弓も刀もいいもので」
 他の武器もというのだ。
「足軽の具足もです」
「全体としてじゃな」
「他の家のものよりも遥かによく」
「それが強さになっておるな」
「そう聞いています」
「それはじゃ」
 まさにとだ、晴信は述べた。
「正しきことじゃ」
「よい武具を揃えることは」
「尾張の兵は弱いというな」
 このことも天下によく知られていることだ。
「しかしな」
「武具がよければ」
「そして確かな飯があればじゃ」
 常に食えていればというのだ。
「それだけでじゃ」
「軍勢はかなり強くなりますな」
「そう考えるとな」
「織田家の軍勢もまた強い」
「相当にな、武具が揃っており」
 そしてというのだ。
「常に飯がありな」
「しかも数も多く」
「優れた将帥までおるとなると」
 晴信はこのことも知っている、既に彼等は信長の下に優れた者が揃っていることをよく知っているのだ。
「かなり強い」
「今は今川殿が攻めんとお考えですな」
「うむ、しかしな」
「今川殿は二万五千の兵を擁しておられます」
「必要とあれば四万は揃えられる」
「その兵で攻められても」
「それでもな」
 どうかとだ、晴信は言うのだった。 
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