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レーヴァティン

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第百三話 夜襲破りその十

 しかしだ、その人それぞれ違う寿命がというのだ。
「短くなるからな」
「寝ることですね」
「本当に少しでもな、ある人達なんかな」
 昭和四十年代に活躍した漫画界の巨匠達を思い出してだ、久志は士官に対して残念な顔になってそのうえで話した。
「三日連続で徹夜してな」
「寿命をですか」
「思いきり縮めたしな」
「三日連続は」
「幾ら何でもだろ」
「あんまりですね」
「そうだろ、一日四時間が普通でな」
 その巨匠達の憧れの存在であった手塚治虫だ、昭和が生んだ最大の異才の一人はそこまでして描いていたのだ。
「徹夜も多くてな」
「そうした生活で」
「過労死って言っていい位にな」
「寿命を縮めてしまいましたか」
「そうなるからな」
 だからだというのだ。
「人間本当に寝ないとな、寝られるならな」
「それこそですね」
「じっくり寝てな、あまり寝られない時でも」
「少しでも寝ることですね」
「人間まず食ってな」
 そしてというのだ。
「寝ることだよ」
「それが第一ですね」
「そうだよ、だからいいな」
「我々もですね」
「よく寝ろよ、俺も夜も寝るけれどな」
「今からもですね」
「今度は鎧もブーツも外して脱いでな」
 そのうえでとだ、久志は士官以外の自分の周りにいる者達にも話した。
「ゆっくり寝るな」
「そうされますか」
「本当にそうしたのを着けてるとな」
 鎧やブーツ、戦の時に身体を守る為に必要なものをというのだ。
「疲れるな」
「それは確かに」
「着けているだけでも」
「身を守る為に必要でも」
「重く硬いですからね」
「着ているだけで身体に負担をかけます」
「だからな、もうこれからな」
 休むべき時だからだというのだ。
「ゆっくりとな」
「眠られますね」
「身体を休められる」
「そうされますね」
「ゆっくり寝るぜ、見張りの兵は交代で置いてな」
 警戒は忘れていなかった、万が一に備えてのそれは。
「それでな」
「全軍休息」
「これより」
「それが今の俺の命令だよ」
 そうだというのだ。
「いいな」
「では」
 将兵達も頷いてだ、この日は休んだ。だが彼等は間違いなく大きな一歩となる勝利を手にしていた。


第百三話   完


                   2019・2・22 
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