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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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提督の反撃・その1

 
前書き
こっから提督のターン!(なお相手のターンはやってこない模様) 

 
 くくく、いい顔で呆けてやがる。正に『開いた口が塞がらない』って奴だな……実際口がぽかーんと開いてるし。

「て、提督。いったい何を……」

「だから、返還の要請はノーだ。返す義理も必要も無いと言っている」

「し、しかし!」

「しかしも案山子もあるか。そもそも、アンタこの会談の場の意味を履き違えてやしないかね?」

「意味、ですと?」

 そう、俺がこの会談の場をセッティングした意味。

「そう、意味だ。アンタ等米国政府は今回の会談をネームレベルの遺体の返還に関する極秘会談、若しくはそれに近い物だと勝手に勘違いしているらしいが……俺は釈明の場のつもりで話を持っていったんだぜ?」

 何しろ自分達で認めてくれやがったんだ。『ウチの鎮守府に攻撃した深海棲艦』が、『米国の物である』ってな。返還しろ、って事は自分の物だと認めたって事だよなぁ?

「アンタ等の言い分だとあのネームレベルは米国の物らしいが……奴がウチの鎮守府を空爆してるって事実を忘れちゃあ困るなぁ?」

「あ……ああっ!」

 ここまで言われて気付いたらしいな、この甘ちゃん大使様はよぉ。そう、『米国所属の兵器』が『日本の軍事施設』を空爆。こんなモン、日米安保の破棄どころか即時開戦までいっても可笑しくない案件だ。

「そっ、それは!……その」

「おっと、今更さっきの発言はナシってのは無理だぜ?何しろ撮影してるしなぁ?」

 実は記録用の為だけの撮影ってわけじゃあ無いんだが……こっちのネタばらしはまだだ。ドン底まで叩き落とすにゃあまだタイミングが早い。

「で、ですが!アレは深海棲艦です!私達が命令して貴殿方の鎮守府を攻撃させた訳ではない!」

「なら、アンタ等の所属でも無いでしょうに。撃沈した艦の扱いは沈めた者がどうしようと構わんでしょう?」

 実際、歴史的に見ても敵艦を拿捕して再利用、なんてのは昔から良くある話だ。艦娘にしても人の形はしていても扱いは軍人でもあるが軍艦である事が前提。ならば、半ば脱走兵に近い状態のネームレベルを撃沈し、それを確保したら取得権は此方にあるってのは特に可笑しい話ではねぇだろう。

「そもそも、アンタ等が始末を着けられないから日本にこっそり頼んで処理して貰ったんだろうが。えぇ?その時点でアンタ等は俺たちに謝礼の1つも支払ったってバチも当たらんでしょうに」

 最初から自分達でケリを着けていれば万事解決だったのに、手に負えなくなってからこっちに押し付け、押し付けた相手に相応の被害を出させながら解決したら成果だけ寄越せ?馬鹿にしてるにも程がある。

「いいか?オッサン。『誠意を見せる』ってのは、頭下げりゃあ良いってモンじゃねぇんだよ。被害者に誠意を見せるってのは、相手の負った傷よりも痛い目を見てこそ意味がある」




「高価な酒をダメにした奴は、それ以上の酒を返す。煤煙を垂れ流す工場の持ち主は、その隣に家を建てて一番被害を被る。それくらいして漸くトントンなんだよ」

 それを偉い奴になればなる程、頭をペコペコ下げりゃあ良いと思ってやがる。それで許されるんなら、世の中に法律なんて在って無い様なもんだ。

「まぁ、アンタ等は俺に頭を下げる気は無かったらしいがなぁ?」

「ぐっ……」

 苦しそうな表情で、歯を食い縛る大使。

「あぁ、ついでにアンタ等がひた隠しにしてる問題もここでぶちまけてやろうか?俺達が絡んでいる内容だけだがな」

「そ、それはどうか……」

「止めろってか?それは米国政府としての要求かい?それとも……」

「よ、要求だなんて滅相もない!」

「なら、それなりの『誠意』ってモンを見せて貰わねぇとなぁ?」

 あ~、すっげぇ楽しい。思わず顔がニヤけて来ちまうぜオイ。相手は後ろめたい事がてんこ盛り、対してこっちは被害者としてチクチク責め立てるだけ。一方的に攻撃できるって素晴らしい。

「わ、わかりました。では今回の騒動で鎮守府に出た損害の全てを補填いたしましょう」

「ほ~ん。で?」

「え」

「え、じゃないでしょうが。それは最低限当たり前、常識でしょうに。人の物を壊したら弁償する……当然の事だろうが」

「しかし、これ以上の譲歩は……」

「譲歩ォ?」

「すみません、言葉の綾です!これ以上の支払いというのは、私の一存ではちょっと……」

「へぇ……なら、この場で電話しなよ」

「え?」

「ホワイトハウスに」




「いや、しかし、このような重要な案件を事前協議無しに決めるというのは……」

「重要な案件だからこそ、だろうが。俺は生憎と気が短いんでねぇ……この場で決断して貰わんと、ウチで集めた米国のやらかした事の数々をぶちまけてやろうか?」

「いや、だからそれは」

「あぁそうそう、この会談、LIVE中継されてるから」

「……はっ?」

 あらま、大使殿ったら茫然自失って顔じゃあ無いか。あんまりにもビックリし過ぎて頭の血管プッツン、なんてのは止めてくれよ?鎮守府内で他国の大使が倒れるとか外聞が悪すぎる。

「いや~、ウチも情報公開しろって上が煩くてねぇ。鎮守府の日常を伝える動画配信とかやってんだわ」

 青葉の奴が嬉々としてやってるから止めてはいないが、チャンネル登録者数とかガンガン増えてるらしい。

『このままYouTuberとして食ってくのもアリですかねぇ……?』

 と、真面目な顔して悩んでやがったからな。その広告収入とか結構な額になってんだろう。

「んで、記録映像の為の撮影のついでに、それをチョイと動画サイトの方にな?」

 ○ouTubeだけでなくニ○ニコ動画の方にも生放送枠を取ってたらしく、コメントの弾幕がお祭り騒ぎらしい。右耳に入れてあるインカムから聞こえる青葉の声がウゼェ程に五月蝿い。

「さぁ、答えを聞こうか?今すぐ大統領に判断を仰ぐか、それともここでアメリカの信用を地獄の底に叩き込むか……好きな方を選びなよ?」

 俺は足を組み、消えていた煙草を新しい物に取り替えて再び火を点けた。まぁ、答えは1つだろうけどな。

「……電話を、お貸し願えますか」

 思わず、満面の笑みを浮かべてしまった。




 外で待機していた連中に電話を持ってこさせ、大使が電話をしている間は暇なので煙草をふかしつつ、コーヒーを啜りながら動画サイトをチェックする。You○ubeの方も視聴者数が凄いが、ニ○ニコ動画の生放送はもっとすごい。コメントの嵐だ。「提督さんの態度デケェw」だの「こ れ は ひ ど い 」だの書かれているが、一番多いのはアメリカのやらかした事を公開しろってコメント。あれはなぁ……俺に被害は無いから別に公開した所でどうって事はねぇんだが。

「なぁ青葉よう、アメリカのやらかした事ってそんなに気になるモンかね?」

「そりゃあ気になりますよ!青葉たちだって聞いてない極秘情報ですよ!?そんなのが聞けるチャンスがあるなら、是が非でも聞きたいです」

「そんなもんかねぇ?要らない情報を知って、変なのに狙われる方が俺としちゃあ嫌だが」

「ですが、大多数の人間が知ってしまえばその危険性は限り無く0に近付きます。まさか、情報統制の為に大量虐殺が出来るような社会情勢でもありませんし」

 大淀の言う事にも一理あるか。ネットに情報が拡散して、誰でも見られるような状況になれば暗殺という手段は打てなくなる。それに、拡散する前なら向こうに更なる要求を突き付けられるしな……寧ろ、そっちの方が得じゃね?

「大統領からの裁決が出ました」

 とかなんとか悪企みをしてる間に、どうやら向こうの判断は決したらしい。さぁて、どれだけ支払ってくれるのやら。
 
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