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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第4話

クロスベル動乱――――IBCの創始者の家系にして世界一の資産家であり、そして遥か昔から自らの手で失われた”至宝”を造りだす事を目論んでいた錬金術師の一家によって起こされた動乱。

動乱の中心地であったクロスベル自治州で活動するロイド達”特務支援課”もクロスベル動乱に巻き込まれ、一度は仲間達全員が離れ離れになり、自分達にとって大切な存在―――”零の御子”キーアもクロイス家側につく事になってしまったが、ロイド達は多くの協力者達の手を借りてクロイス家によって支配されたクロスベルを解放し、そしてクロスベル解放後に突如現れた謎の大樹―――”碧の大樹”に突入し、大樹内に待ち構えていた強敵達を退け、キーアを取り戻した。

キーア奪還後クロスベルに帰還したロイド達はクロスベルでの役目を終えてアルテリア法国に帰還する事になったワジや山林地帯に戻るツァイトと別れた後、ヴァイス達”六銃士”によって建国された”クロスベル帝国”の帝都となったクロスベルにてかつてのように”特務支援課”としての活動をしつつ、クロスベルの復興にも協力していた。

そんなある日、ロイド達は”特務支援課”の課長であるセルゲイとルファディエルからある知らせについての説明を受けていた。


1月9日、AM9:55―――

~クロスベル帝国・帝都クロスベル・特務支援課~

「”特務支援課”の”追加人員”ですか?」
「ああ…………知っての通り、ワジが”特務支援課”から抜けたからな。その抜けた穴を補強する為に、人員が新たに1名追加される事になった。」
「ちなみに追加される人員は警察学校出身で、まだ卒業の単位を取れていない学生よ。」
「ええっ!?」
「おいおい…………新人どころか警察学校を卒業もしていない雛鳥が何でウチに配属される事になったんっスか?」
ロイドの疑問に答えたセルゲイとルファディエルの説明を聞いたエリィは驚き、ランディは疲れた表情で呟いた後二人に自身の疑問を訊ねた。

「ま、ぶっちゃけて言ってしまえば人材不足を補う為だ。」
「貴方達も知っての通り、”クロスベル帝国”の件で警察、警備隊共に人手が足りない状況よ。そしてその足りない人手を少しでも補う為に警察、警備隊学校で履修中の一部の生徒達も臨時の追加人員として様々な部署に配属される事になったのよ。」
「…………なるほど。確かに今のクロスベルは”猫の手も借りたい”状況ですから、警察や警備隊学校で学んでいる生徒達の手も借りる事にしたのですか。」
「ほえ?猫ならコッペがいるよ~?」
「みゃおん?」
「アハハ…………ルファディエルが言っているのはそういう意味じゃないよ。」
セルゲイとルファディエルの説明を聞いたティオは静かな表情で呟き、キーアは首を傾げて自分の近くで丸まって休んでいたコッペを抱き上げ、キーアの言葉にロイド達が冷や汗をかいて脱力している中未来のキーアは苦笑しながら指摘した。

「その…………課長。追加人員の件も、やはりエレボニア帝国との戦争も関係しているのですか?実際クロスベル帝国軍はカルバード共和国との戦争が終わっても市民達からも”義勇兵”という形で臨時の兵士達を募集し続けていますし…………」
「まあ…………な。クロスベル政府からの情報によると、内戦が終結したエレボニア帝国はクロスベル侵攻に向けて大急ぎで侵攻軍を編成していて、クロスベル侵攻も数日以内という見立てだ。」
「まだ勉強中の警察や警備隊の”雛鳥”でも、専門の知識を学んでいない素人を使うよりはよほど効率はいいって考えで、まだ”雛鳥”の連中の配置も決めたんだろうな、あのリア充皇帝共は…………」
「そうね…………」
複雑そうな表情をしたノエルの質問に答えたセルゲイの説明を聞いてヴァイス達の考えを推測したランディの推測にエリィは複雑そうな表情で頷いた。

「それにしてもエレボニア帝国は内戦が終結したばかりなのに、クロスベルに侵攻しようとするなんて、何を考えているんだろうね~?普通に考えたらまずは内戦で疲弊した自国の立て直しを最優先すべきだと思うのに。ましてや”神機”も破壊した兵器をたくさん保有している今のクロスベルに戦争を仕掛けるなんて、ホント何考えているんだろうね~。」
「エレボニア帝国にはメンフィル軍の諜報関係者達の暗躍によってカルバード共和国に潜入しているエレボニア帝国の諜報関係者が一人残らず暗殺された事で、カルバード共和国の滅亡が未だ伝わっていない為”今の”クロスベルの戦力を以前のクロスベルと同じである事を誤解している事と…………恐らく”宗主国”に逆らったクロスベルを占領する事で、内戦で被害を受けたエレボニアの民達の政府に対する不満を解消する為や他国からクロスベルの件で介入される前に早期にクロスベルを占領しようと考えているのでしょうね。」
「後は資源、経済面共に豊富なクロスベルを占領する事で内戦で疲弊した自国の早期の立て直しを考えているかもしれませんね。」
「恐らく二人の推測はどれも当たっているでしょうね…………」
シャマーラの疑問に対して答えたエリナとセティの推測を聞いたエリィは疲れた表情で同意し
「…………それで追加される事になった人員はいつこちらに?」
ロイドも複雑そうな表情で黙り込んだ後気を取り直して訊ねた。
「もうそろそろ来るは『おはようございます!クロスベル警察学校よりこちらの追加人員として派遣された者です!』…………どうやらちょうど来たみたいね。」
「あら?今の声は確か…………」
ロイドの疑問にルファディエルが答えかけたその時、玄関から少女の声が聞こえ、声を聞いたエリィは自分達にとって聞き覚えのある声である事に気づき目を丸くした。そしてロイド達が声が聞こえた玄関に視線を向けるとそこにはピンク髪の少女がいた。

「あら、貴女は…………」
「ユウナじゃないか…………!まさか君が課長たちの話にあった”追加人員”なのか?」
「は、はい…………っ!まだ勉強中で未熟の身ですが、クロスベル警察学校からの指示によって臨時的に”特務支援課”に配置される事になったユウナ・クロフォードです!警察学校も卒業できていないあたしがワジ先輩が抜けた穴を補うなんて分不相応ですが、全身全霊を持って職務に就かせて頂きます!」
仲間達と共に自分に近づいてきて声をかけたセティとロイドに少女――――ユウナ・クロフォードは緊張しつつも、嬉しさを隠せない様子で答えた。
「ハハ、堅くなりすぎだぜ、ユウ坊。ここは他の部署と違って緩いから、もっと肩の力を抜いていいぜ?」
「ランディさんは肩の力を抜き過ぎだと思いますが。」
ユウナの様子にランディは苦笑しながら指摘し、ティオはジト目でランディに指摘した。

「ふふっ、今思い出したけどそう言えばユウナが”特務支援課”に来たのは今頃だったよね。」
「むー。未来のキーアばかり、キーア達の知らない事ばかり知っていてズルい~。」
「それは仕方ないかと…………」
「むしろ、私達は彼女が知る知識を知っていはいけない立場ですし…………」
微笑みながら答えた未来のキーアに対して頬を膨らませて指摘したキーアの言葉にロイド達が冷や汗をかいている中、セティとエリナは苦笑しながら指摘した。
「え、えっと………そちらのキーアちゃんに物凄く似ていて凄い美人でスタイル抜群の癒しの女神(イーリュン教)のシスターさんはもしかして、キーアちゃんのお姉さんなんでしょうか…………?」
一方唯一未来のキーアを知らないユウナは不思議そうな表情で未来のキーアの事を訊ね
「ハハ…………”彼女”についてはこの後すぐに説明するよ。まあ、それはともかく…………―――ようこそ、”特務支援課”へ。これからよろしくな、ユウナ。」
「あ…………はい…………っ!」
そしてロイドの歓迎の言葉に一瞬呆けたユウナは嬉しそうな表情で頷いた。その後ユウナを加えたロイド達は再び席についてユウナに未来のキーアの事を紹介した。

「じゅ、”10年後のキーアちゃん”…………!?キーアちゃんに似ているからお姉さんかと思っていたけど、まさか”本人”だなんて…………それにしてもキーアちゃんは今でも凄く可愛いのに、10年経ったらこんなにも素敵な女性になるんだ…………!」
事情を聞き終えたユウナは驚きの表情で未来のキーアを見つめて未来のキーアを誉め
「エヘヘ、10年後のユウナもとっても綺麗でおっぱいもすっごく大きいよ~。あ、でもユウナの場合確か2年後には既におっぱいが今とは比べ物にならないくらい凄く大きくなったはずだよ~?」
「ふえ~…………ユウナもキーアみたいにおっぱいが大きくなるんだ~。」
「10年後の方のキーア、何気に未来のネタバレをしないでください。」
ユウナの賛辞に未来のキーアは照れながら答え、未来のキーアの発言にロイド達が冷や汗をかいている中キーアは無邪気な様子でユウナを見つめ、ティオはジト目で未来のキーアに指摘した。

「コホン。ユウナ、臨時派遣の事情はどのくらい聞いているのかしら?」
「えっと………”クロスベル帝国”建国の件で警察、警備隊共に今までとは比べ物にならないくらい忙しくなった事とその…………エレボニア帝国との戦争に向けて、人手不足なクロスベル警察や警備隊にあたしみたいなまだ警察や警備隊の学校を卒業していない学生達も臨時の人材として派遣される事になった事までは聞いています。」
ルファディエルの問いかけにユウナは自分が”特務支援課”に派遣された事情を思い出しながら答え、戦争の件を思い出すと複雑そうな表情をした。
「そう…………既に全て聞かされているのね。」
「ま、そういう訳だ。警備隊の連中はともかく、警察である俺達の方は”戦場”に”兵士”として送り込んでエレボニア帝国軍と戦わすような予定は一切ない事はヴァイスハイト皇帝からも言質を取っているから、その点は安心していいぞ。」
「あ、はい。その件も校長先生から教えられています。…………その、局長―――いえ、ヴァイスハイト皇帝陛下がギュランドロス皇帝陛下と一緒に宣言した”クロスベル帝国”を宣言通り、クロスベルを独立させる所か”帝国”にしてカルバード共和国に勝って共和国の領土をたくさん手に入れたのに、どうしてエレボニア帝国とまで戦争をするのですか…………?確かに宣言の時に二大国と戦争するみたいな事は言っていましたけど、共和国を滅ぼしたんですからもう十分だと思うんですが…………」
セルゲイの言葉に頷いたユウナは自身の疑問をセルゲイ達に訊ねた。

「ヴァイスハイト陛下達の野心がその程度で終わらない事もそうだけど、クロスベルにその気がなくても元々エレボニア帝国がクロスベルを占領するつもりでいるから、どの道戦争は避けられないのよ。IBCによる”資産凍結”の件に対する”報復”もそうでしょうけど、内戦の影響で混乱していた自国の経済を回復する為にもエレボニア帝国にとってクロスベルの占領は既に”確定事項”なのよ。」
「あ…………」
エリィの話を聞いたユウナは複雑そうな表情を浮かべた。
「それともう一つ。――――――クロスベル帝国と連合を組んでいるメンフィル帝国も、エレボニア帝国に戦争を仕掛けなければならない事情ができたから、建国したばかりのクロスベル帝国と現在唯一国交があるメンフィル帝国との関係をより強固な関係にする為にもエレボニア帝国との戦争は避けられないわ。」
「え…………ルファ姉、”メンフィル帝国がエレボニア帝国に戦争を仕掛けなければならない事情ができた”って一体どういうことだ?」
「もしかして”ラギール商会”のチキさんから何か聞いたんですか?」
「ええ。発端は内戦での出来事なのだけど――――」
ロイドとノエルの疑問に頷いたルファディエルはロイド達にメンフィル帝国がエレボニア帝国に戦争を仕掛ける事情を説明した。

「エレボニア帝国の内戦の最中にそのような事が…………」
「しかもその”ユミル”って所を一度目に襲撃した人達は”猟兵”だなんて…………その”猟兵”を雇った人はエレボニアの大貴族の人なのにどうして他国の領土を襲撃したら、国際問題に発展する事を考えなかったのでしょうか?」
「ま、内戦を引き起こして自国の皇女を拉致する事を考えたバカな大貴族なんだから、他国との関係とか最初から気にしなかったか…………もしくはいざとなったら、”猟兵”に責任を全て押し付けるつもりだったかもな。」
「ランディ…………」
事情を聞き終えたエリィは驚き、ユウナの疑問に目を伏せて答えたランディをロイドは複雑そうな表情で見つめ
「クロスベルはともかく、メンフィル帝国を本気で怒らせたエレボニア帝国はご愁傷様としかいいようがないですね…………メンフィル帝国の場合、リウイ陛下達みたいに生身で兵器以上の威力をたたき出す奥義や魔術を扱える方達がいますから、どんな最新兵器を使っても絶対に勝てないでしょうし。」
「そうですね…………特にエヴリーヌさんのような”魔神”が”戦場”に出れば、エレボニア帝国軍は蹂躙されて”虐殺”されるだけでしょうね。」
「「………………………………」」
ティオとセティの推測を聞いた二人のキーアはそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「メンフィル帝国で気になったけど、エリゼさんも戦争に参加するのかな~?」
「…………クロスベル解放の際に自らエリゼさんを操縦者に選んだ”神機”があれば、例え”零の至宝”による加護がなくても”戦場”を圧倒できるでしょうね。――――と、すみません、キーア。」
「ううん、キーアは別に気にしていないから大丈夫だよー。」
シャマーラの疑問に答えたエリナはすぐにある事に気づいてキーアに謝罪し、謝罪されたキーアは暢気な様子で答えた。
「へ…………”神機”って、クロスベル独立国の頃にディーター元大統領が結社とキーアちゃんの力を借りてクロスベルの”力”の象徴としていた人形兵器の事ですよね?あれって人が乗って操縦できたんですか!?」
「ああ…………実際ディーターさんも”神機”に乗って抵抗してきたんだが…………ディーターさんに勝利した後、何故か”神機”は突然自我が芽生えて自らを操縦する人物をクロスベル解放時に俺達に協力してくれたリフィア殿下の専属侍女長であるエリゼさんを選んだんだ。」
「ちなみにエリゼさんはアリオスさんと同じ”八葉一刀流”の剣技を修めていて、それも”皆伝”―――”剣聖”の一人なのよ?」
「そういや、エリゼちゃんは15歳って聞いたからユウ坊と同い年だな。」
「えええええええええええっ!?あ、あたしと同い年の女の子がそんな色々と凄い存在だなんて…………よーし、あたしもその人みたいになれるように、もっと頑張らないと…………!」
ロイド達の説明でエリゼの事を知ったユウナは驚いた後、まだ見ぬエリゼを目標にし、それを聞いたロイド達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「ちょ、ちょっと目標が高すぎるような気がするのですが…………」
「…………まあ、エステルさん達がクロスベルに来てからエステルさん達を”ライバル”認定した当時のロイドさんよりはマシな気がしますが。」
「うっ…………」
我に返ったノエルは苦笑し、静かな表情で指摘したティオの指摘にロイドは唸り声を上げた。
「そういえば…………確かエレボニア帝国がメンフィル帝国に対して作ってしまった戦争勃発の原因である”ユミル襲撃”が起こった地である”温泉郷ユミル”はエリゼさんの故郷だったわよね…………?」
「あ…………っ!」
「ええ。チキの話だと不幸中の幸いにも2度に渡る襲撃でどちらも死者は出なかったけど、一度目の襲撃では領主が猟兵によって重傷を負わされた挙句エリゼの双子の妹―――エリス・シュバルツァーはアルフィン皇女と共に貴族連合軍の協力者に拉致されて、救出される内戦の終盤まで皇帝を含めたエレボニア皇家やレーグニッツ知事と共に監禁されて、二度目の襲撃ではエリゼの兄のリィン・シュバルツァーが貴族連合軍の”主宰”であるカイエン公爵による脅迫――――貴族連合軍は2度とユミルに手を出さず、その場を退く事を条件に彼自身に貴族連合軍の元に向かうように誘導させられたそうよ。」
「おいおい…………どれも戦争を仕掛ける口実のオンパレードじゃねぇか…………つーか、その貴族連合軍とやらは何で2度も戦略的価値もないと思われる山郷のユミルって所を襲撃したんだ?」
「1度目の襲撃はともかく、2度目の襲撃の目的は一体何だったのか意味がわからないですよね…………?話を聞いた感じ、そのエリゼさんって人のお兄さんが目当てだったようですけど…………」
不安そうな表情で呟いたエリィの言葉を聞いたロイドは声を上げ、ルファディエルは頷いた後自分の知る情報をロイド達に伝え、それを知ったランディは呆れ、ユウナは不思議そうな表情で疑問を口にした。
「…………その、リィン・シュバルツァーがまた”特別な存在”のようでね―――」
そしてルファディエルはリィンが”騎神”と呼ばれるエレボニア帝国に伝わる”巨いなる騎士”の起動者(ライザー)の一人で、またオリヴァルト皇子が発足したトールズ士官学院特科クラス”Ⅶ組”のリーダー的存在であったことを説明した。

「エレボニア帝国に伝わる”巨いなる騎士”ですか………私もエレボニア帝国に留学していた頃、そのような伝承が書かれている書物を読んだ事もありましたけど、まさか実在していたなんて…………」
「その”騎神”って一体どんな存在なんだろうね~?」
「”神機”のように操縦する事ができる上、自我まであるとの事ですから、ひょっとしたら結社の”神機”はその”騎神”とやらを参考にして作られたかもしれませんね。」
「ええ…………それを考えるとひょっとしたらレンさんが結社から奪い取った”パテル=マテル”の誕生も関係しているかもしれませんね。」
”騎神”の存在を知ったエリィやシャマーラ、エリナとティオはそれぞれ考え込み
「しかもそのリィンって人はあのオリヴァルト皇子が発足した士官学院の特別クラスの生徒達のリーダー的存在か…………もしかしたら、2度目の襲撃の目的はその”騎神”という戦力を手に入れる事と”Ⅶ組”のリーダー的存在である彼を”Ⅶ組”から離す事で、自分達に反抗する勢力の一つである”Ⅶ組”の動きを封じ込める事だったかもしれないな。まあ、貴族連合軍がその”Ⅶ組”という存在をそこまで脅威に思っていたかどうかに疑問は残るが…………」
「ま、少なくとも貴族連合軍にとっては無視できない存在だったんだろうな。実際、内戦終結の鍵はその”Ⅶ組”だったらしいしな。そういや未来の方のキー坊はそのリィンって野郎の事を知っているのか?」
ロイドの推測に同意したランディは未来のキーアにリィンの事を訊ねた。

「うん。リィンは内戦とこれから起こる戦争を経験して”剣聖”になるんだ。あ、それとリィンはロイドみたいにたくさんの女の人達と結婚していて、その相手の中にはエリゼやエリゼの妹のエリスもいるよ~?」
未来のキーアはリィンの事について答え、何気に未来を口にしたキーアの発言にロイド達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「またさり気なく未来のネタバレをしていますよ、未来のキーア…………というか兄妹揃って”剣聖”とか、アネラスさんが知ったら驚くでしょうね。」
「つーか、ロイドみたいにハーレムを築いている上、そのハーレムの中にはエリゼちゃんとエリゼちゃんも含めた兄貴族―――いや、シスコン兄王だと~~!?畜生、要するに女関係はロイドやリア充皇帝達みたいなリア充野郎かよ!?」
「いや、そこで俺まで例に出すとか意味わかんないだが…………そ、それよりもキーア。そのリィンって人がこれから起こる戦争―――メンフィル・クロスベル連合とエレボニアとの戦争に参加するって事はまさかそのリィンって人はエレボニアとの戦争に参加するのか?」
我に返ったティオはジト目で指摘した後自分が知る”八葉一刀流”の人物の一人を思い浮かべ、ランディはリィンの女性関係に嫉妬して悔しそうな表情で声を上げ、ランディに疲れた表情で指摘したロイドはある事に気づいて未来のキーアに訊ねた。
「…………うん。キーアはその場面を見た事がないけど、リィンはこれから起こる戦争でリィンにとっての大切な仲間―――”Ⅶ組”の人達とも戦った事があったそうだよ。」
「ええっ!?」
「…………そもそもそのリィンさんはどうしてその戦争に参加する事にしたのでしょうね?その戦争によってエレボニア帝国に所属している”Ⅶ組”の人達と戦う可能性がある事は目に見えていますのに…………」
複雑そうな表情で答えた未来のキーアの説明にセティは驚きの声を上げ、かつてロイド達と敵対した事もあるノエルは複雑そうな表情で呟いた。

「…………ま、アリオスのように昔の仲間とやり合う覚悟を持ってまで”戦争”に参加するんだからいろいろと”事情”があるって事だろ。話が色々と逸れちまったが、エレボニア帝国との戦争での特務支援課(ウチ)の役割は今まで通りでいいそうだが、”緊急支援要請”という形で戦争に関連する支援要請は出すそうだ。」
「”戦争に関連する支援要請”はどんな内容になるんでしょうね…………?」
「ま、普通に考えればクロスベルに潜入したエレボニアのスパイ狩りやクロスベルにいるエレボニア人が起こすかもしれないトラブル関連だろうな。」
「スパイの件はともかく、エレボニア人関連のトラブルはできれば起こって欲しくないわね…………彼らの大半は観光や商売の目的でクロスベルに訪れてくれているのでしょうし…………」
話を戻して今後の事に伝えたセルゲイの話を聞いてある事が気になったエリナの疑問にランディは静かな表情で答え、エリィは複雑そうな表情で呟いた。
「…………わかりました。確かにそういう事であれば、支援課として”緊急支援要請”を受ける事に異存はありません。ちなみに遊撃士協会も戦争中は俺達と同じような動きになるんでしょうか?」
「ええ、場合によっては遊撃士協会との合同作戦を行う事もありえるかもしれないとの事よ。」
静かな表情で頷いた後に訊ねたロイドの疑問にルファディエルが答えた。

「後でミシェルさんやエステルさん達とも情報を交換した方がよさそうですね。」
「ああ、特にエレボニアでは活動が制限されている遊撃士協会にとってはもしかしたら、メンフィル帝国とエレボニア帝国の戦争勃発に関する情報を入手していないかもしれないし、メンフィル帝国の関係者で親しい人達が多いエステル達なら俺達も知らない戦争の件に関する情報を知っているかもしれないしな。――――――っと、配属されたばかりなのに不安を思わせるような話をしてすまないな、ユウナ。」
ティオの提案に頷いたロイドはユウナに視線を向けて謝罪し
「いえ、あたしの臨時派遣は戦争が関係している事だとわかっていますし、ようやく”自由”を手に入れたクロスベルを守りたい気持ちはロイド先輩達と同じですから、気にしないでください。それとその…………不謹慎ですが嬉しくも思っているんです。戦争のお陰で憧れのあの”特務支援課”に期間限定とはいえあたしまで配置されてロイド先輩達と一緒に働けるんですから…………!」
謝罪されたユウナは謙遜した様子で答えた後表情を輝かせながらロイド達を見回した。

「ハハ…………いつも言っているが、ユウナは俺達の事を持ち上げ過ぎだよ。」
「ま、最初からやる気満々なのははいい事だし、顔見知りの後輩だったらすぐに俺達も馴染めるだろうから、いいんじゃないか?」
「…………ですね。もしかしたら、ヴァイスさんはその点も考えてユウナさんの配置を”特務支援課”にしたのかもしれませんね。」
「フフ、そうね。―――それよりも新しいメンバーも増えたことだし、支援要請を確認した後市内や市外を回りながら知り合いの人達に挨拶をしていかない?」
「賛成~!それとユウナの歓迎パーティーもしないとね!勿論メインの料理はダブルキーアちゃんお手製の鍋で!」
「シャマーラ…………未来のキーアはともかく、私達よりも年下のキーアに歓迎パーティーの料理を作らせる事に何とも思わないのですか…………」
「えへへ、キーアもみんなみたいに新しく来たユウナの為に何かしたいと思っていたから、シャマーラの提案はむしろ大歓迎だよ~♪」
「フフ、後で一緒にお買い物に行こうね♪」
エリィの提案に続くようにある事を提案したシャマーラにエリナが呆れた表情で指摘している中二人のキーアはそれぞれ無邪気な笑顔を浮かべた。

「わあ…………っ!噂のキーアちゃんの手料理―――それもお鍋はあたしも機会があれば食べたいと思っていたの!ありがとうね、キーアちゃん♪」
「えへへ………」
ユウナは嬉しそうな表情を浮かべて隣に座っているキーアを抱き締め、抱き締められたキーアは嬉しそうな表情を浮かべ
「ハハ…………―――さてと。まずは端末に来ている”支援要請”を確認するか。」
ユウナの様子を微笑ましそうに見守っていたロイドは仲間達に仕事の開始を告げた後新たなメンバーであるユウナを加えていつものように”特務支援課”としての活動を開始した――――
 
 

 
後書き

という訳でまずユウナがフライング登場&ロイド側にパーティーインですww閃3以降から登場するキャラ達も次々と登場させる予定ですが、唯一アッシュをどうしようか迷っています。下手したら全部が終わるまでずっと監禁されたままかも(ぇ)そして仲間になるとしても、アッシュが仲間になる勢力は味方の戦力が戦力過剰と言ってもいいほど充実しているリィン達、ロイド達、エステル達と違って、”暁の女神”のミカヤ側のように貧弱なⅦ組側だと思います(酷っ!)それとシルフェニアの18禁版にてこっちの物語のリィンとベルフェゴールのシーンを更新しましたので興味のある方はそちらもどうぞ。 
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