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八条学園騒動記

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第五百十一話 図書館で学ぶことその三

「そしてね」
「そのうえでか」
「読んでいってもいいし」
「哲学書と違ってか」
「一回マルクスとか読んでみたのよ」
 カール=マルクスだ、この時代の連合では過去の誤った経済学を出した人物とされて否定されている。
「三ページで止めたわ」
「三ページか」
「変なことばかり書いてるから」
 そう思ったからだというのだ。
「それでね」
「読むのを止めたか」
「そうしたのよ」
「三ページか」
「いや、それでもね」
 三ページで読むことを止めてもというのだ。
「別にいいでしょ、それよりもね」
「シェークスピアか」
「読んでいて面白いしね」
「それも大きいな」
「面白い本を読んで人生や人間を学んで」
 そうしてというのだ。
「器が大きくなればいいでしょ」
「それに越したことはないな」
「だからね」
 それでというのだ。
「哲学書よりもよ」
「古典でか」
「シェークスピアよ」 
 この作家の作品だというのだ。
「本当にね」
「ナンシーはシェークスピア推しか」
「だって面白いから」 
 これが第一にあるからだというのだ。
「そしてね」
「ためになるからか」
「だからね」
「俺にも推薦するか」
「そうしてるのよ」
「成程な」
「あのシニカルな言い回しが好きなのよ」
 シェークスピア独特のそれがというのだ。
「本当にね」
「あれは確かにいいな」
「癖になるでしょ」
「人間をしっかりと描いているしな」
「善人も悪人もね」
「改心することも多いしな」
 真夏の夜の夢でもお気に召すままでもある。
「憎めない悪人が出たりな」
「フォルスタッフとかね」
 ウィンザーの陽気な女房達に出て来る老騎士だ、騎士であるが好色で酒好きで大食漢で尚且つ図々しく無反省というとんでもない人物だ。
「ロクデナシだけれど」
「憎めないな」
「歌劇だと特にね」
「ヴェルディのファルスタッフだな」
 フォルスタッフをイタリア語読みにした仇名だ。
「あの老騎士はな」
「近くにいてもね」
 リアルでというのだ。
「嫌じゃなさそうね」
「大変なことになってもな」
「図々しいけれど」
「反省もしないしな」
「そんな人でもね」
「何か憎めないからな」
「ああした人も書いて」
 そうしてというのだ。
「夫婦喧嘩も書いて」
「真夏の夜の夢だな」
「それも面白くて」 
 それでとだ、ナンシーはさらに話した。 
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