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星河の覇皇

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第八十部第五章 無政府主義者その一

                 無政府主義者
 無政府主義、アナーキストと呼ばれる者達は十九世紀のロシアで生まれた。政府等を完全に否定し完全に自由な社会を築こうという考えだ。
 一見して素晴らしい考えだ、だがクリシュナータはマウリアの首都ブラフマー星系の主惑星ブラフマーの大統領官邸において側近達に言っていた。
「政府がなくてどうする」
「完全な自由ですか」
「無政府主義者達の言う理想社会ですか」
「国家というタガは必要だ」
 クリシュナータは自分の考えを述べた。
「それがないとだ、法律もなくだ」
「法律がなくば、ですね」
「最早社会は成り立たないですね」
「倫理というものと共に」
「それもなければ」
「無政府主義はおおむね信仰を持たない」
 十九世紀からの伝統的な無政府主義者達はだ、彼等は既存の考えも否定するので宗教も否定するのだ。
「法律も信仰もないとだ」
「そこにあるものはですね」
「何もないですね」
「自分を止めるものがない」
「タガが完全にないですね」
「それでは人は何になるか」
 冷めた、実に冷徹な目で述べた。
「獣になる」
「完全にですね」
「そうなってしまいますね」
「人ではなくなり」
「獣になりますね」
「そうなる、人は神の下にあるものだ」
 信仰を備えるべきだというのだ。
「国家を否定すると人を止める、もっと言えば人を守る最も重要な存在がなくなる」
「法律を保障するものがなくなるので」
「それによってですね」
「無法が蔓延る様になり」
「力のある者が好き勝手をする様になりますね」
「連合の創作世界でよくあるな」
 クリシュナータの目は冷徹なままだった、そのうえでの言葉だ。
「そうした社会が」
「そうですね、あちらでは世紀末というそうですね」
「ならず者達が好き放題する様な社会を」
「連合の何処かの国の昔の漫画から生まれた言葉だそうですが」
「そうなりますね」
「その様な社会では誰も何も出来ない」
 力のない者達がというのだ。
「だからだ」
「それは、ですね」
「あってはならない社会ですね」
「無政府主義者の理想社会は」
「そこに信仰もないのですから」
「完全な無秩序になる」
 信仰もなければというのだ。
「完全にな、だからな」
「無政府主義は放置出来ませんね」
「マウリアではそもそも信仰がない時点で想像出来ませんが」
 これはサハラもだ、ヒンズー教やキリスト教といった信仰の違いはあるがそれでも信仰あってこそ人間だという考えがあるのだ。
「到底」
「何もかもを否定しての自由なぞ」
「そもそも自由なのか」
「それは無秩序だ」
 また言ったクリシュナータだった。
「完全な自由なぞない」
「信仰もなければですね」
「人を纏めるものがなくなる」
「そういうことですね」
「そうだ、連合には僅かながらいてだ」
 ここで連合の話になった。 
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