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ある晴れた日に

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212部分:思いも寄らぬこの喜びその十二


思いも寄らぬこの喜びその十二

「ワインにカレー!?」
「しかもシーフードカレー」
「うちの自慢料理の一つよ」
 明日夢はこう言うがその顔は憮然としたままであった。
「さあ、食べて」
「食えるわけねえだろうがよ」
 春華は明日夢の顔を見上げて言い返した。
「ワインにカレーが合うかよ。胸焼けするだろうが」
「御前これ犯罪だぞ」
 野本はじっとそのシーフードカレーを見ている。
「ワインにカレーはよ。もう暴力だろうが」
「カレーにお酒って絶対に合わないのに」
 静華は泣きそうな顔になっている。
「少年、これだけはないでしょ」
「これが今日のびっくりメニューよ」
 しかし明日夢は話を聞いてはいなかった。
「食べて。サービスで大盛りにしておいたから」
「話聞けよ」
 正道はその明日夢に無駄だと思いながらも言った。そのうえで今度は咲や凛達に顔を向けて問うた。
「っていうか御前等こうなるってわかってたんだろ?」
「流石にこんなとんでもないもの出て来るとは思わなかったわよ」
「これはね。幾ら何でも」
 その咲と凛が二人に答える。
「とりあえずワインは止めて」
「カレー食べるけれど」
「食うのかよ」
「食べるの残したら勿体無いじゃない」
 咲は言う。
「子供の頃からこのことはパパに五月蝿く言われてたのよ」
「冗談抜きで立派なパパさんだな」
 正道の今の言葉は褒め言葉だった。
「じゃあ食うんだな、本当に」
「美味しいことは美味しいのよ」
 奈々瀬はそれは保証する。
「ただ。やっぱり食べ合わせがちょっと以上にあれだけれど」
「美味いことは美味いな」
 春華はもうスプーンを手に取ってそのシーフードカレーを口に入れていた。
「けれどよ、これはよ」
「春華、額から脂汗出てるわよ」
 凛がその春華に突っ込みを入れる。
「私も今から食べるけれど」
「俺達も食うか」
「そうだな」
 野茂と坂上が男組の中で最初に覚悟を決めた。
「ここは度胸据えてな」
「いざ、な」
「ひでえもんだ」
 佐々は今スプーンを手に取った。
「世の中こんなことしやがる奴がいるなんてよ」
「しかしこの連中毎回これ頼んでるしな」
 坪本も咲達を見ていた。
「怖いもの見たさでも幾ら何でもねえだろ」
「けれど。それで北乃さんを恨んだりはしていないわよ」
 未晴がその咲達をフォローしてきた。
「楽しんでやってるから。本当に」
「こんなロシアンルーレットやって恨んだらそれこそ筋が通らないと思うよ」
 桐生は難しい顔をしてカレーを食べている。やはり食べ合わせが問題だった。
「しかも言ったら悪いけれど当たる方がずっと大きいルーレットだし」
「それで明日夢恨むのはね」
「筋違いよ」
 明日夢を庇うのはやはり恵美と茜だった。
「カレー自体は美味しいし」
「確かに卒倒しそうな組み合わせだけれど」
 二人も苦労しながらそのカレーを食べている。
「だから恨んだりはしていないわよ」
 凛がそこははっきりと言う。
「当たった時は最高なんだし。確かに四回に三回は絶対に外れだけれど」
「わかってたらいいけれどな」
 正道は凛のその言葉に応えて言った。
「しかし。北乃もあれだな」
「北乃さんがどうかしたの?」
「ああ。祝いの日なのに店番ってな」
 未晴に応える形で述べる。
「因果なものだな」
「そうね。けれどお店の時間が終わったらね」
「来るのかよ」
「多分だけれど来ると思うわ」
 静かに笑って正道に答える。
 
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