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ある晴れた日に

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211部分:思いも寄らぬこの喜びその十一


思いも寄らぬこの喜びその十一

「スタープラチナに来てあれ頼まないでどうするのよ」
「ねえ」
 凛が彼女のその言葉に頷く。
「折角来たんだから。あれ頼まないとね」
「そういうこと」
「今度もどうなっても知らねえぞ」
 彼は今はこう言うだけだった。
「本当によ。何が出て来てもな」
「ああ、ベイスターズ負けてるわ」
 千佳が携帯を見て言った。
「広島に十点差で。また随分酷いわね」
「決まりだな」
 正道はその試合状況を聞いてすぐにわかった。
「今日のびっくりメニューはよ」
「外れね」
「ベイスターズが勝ってると酒に合ってるのが出て負けてると合ってないのが出るんだったよな」
「ええ、そうよ」
 凛はまた正道の言葉に答えた。
「そうだけれど」
「今俺達が飲んでるのは」
 正道はここで皆が飲んでいるものを見回した。何故か皆今は赤ワインである。
「ワインかよ」
「何が出て来るんだろうな」
 野本は少し楽しみにしているような声を出しながらそのワインをあおるようにして飲んだ。
「ワインと合わないのつったらよ」
「赤ワインだから魚ものか?」
 正道はそう予測を立てた。
「この組み合わせは合わないだろ」
「甘いわね」
 しかし奈々瀬が彼のこの予測にクレームをつけた。
「その見通しはかなり甘いわよ」
「甘いのかよ」
「ビールの時にパフェで日本酒で善哉よ」
 確かにあまりにも酷い組み合わせである。
「そこから考えたら」
「何が出るんだ?」
「ジュースに納豆だしな」
「マジで何が出て来るんだよ」
 男組も不安を感じだしてきていた。
「果たして食える食い合わせなのかよ」
「こうした時に限って負けるか?あのチーム」
「っていうかあのチーム今月一勝しかしてないわよ」
 咲の言葉は絶望をそのまま語ったものだった。
「はい、それでその時のプリクラ」
「うわ・・・・・・」
「こりゃひでえな」
 見ればこのスタープラチナで撮ったプリクラだった。そこには咲と明日夢が映っているが咲がホークス、それも福岡ダイエー時代のそれを被って上機嫌で笑ってピースサインまでしているのに対して明日夢はまるで起きたてのように憮然としている。実に対称的であった。
「この時もベイスターズ負けたんだな」
「巨人相手に二十安打打たれて」
 見事な惨敗である。
「で、ホークスは勝ってたんだけれど」
「巨人に二十安打か」
「そりゃまあそうなるよな」
 これで怒らない明日夢ではないことは皆知っていた。
「これが今月の上旬の頃だったんだけれど」
「で、まだ一勝かよ。今月もう終わりだっていうのに」
「覚悟しておいた方がいいわね」
 皆腹をくくることにした。
「何が出て来てもね」
「それでも」
「お待たせ」
 皆で言い合ってるその時に扉が開いた。そしてその皆の予想通り明日夢が不機嫌そのものの顔でスタープラチナの青時に黄色い星を散らばめたエプロンを着てやって来た。その手にあって今テーブルの上に置かれた代物とは。
「うわ・・・・・・」
「それはないでしょ」
 皆その料理を見て唖然となった。それは。
 
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