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ある晴れた日に

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153部分:共に生きその三


共に生きその三

「けれど流石にここまで差があったら」
「まずいわよね」
「ジュリエットやオフェーリアよりずっと小柄だと」
「そういうこと。だからシェークスピアはまずいんじゃないかしら」
「確かに。考えてみれば」
「それもかなり」
「じゃあ何するの?」
 シェークスピアが没になったところで千佳が皆に問うてきた。
「それが駄目だったら」
「言われてみれば限られるんだよなあ」
「北乃、背少し伸びないか?」
「十五センチでいいからよ」
「無茶苦茶言わないでよ」
 流石に真面目な顔で皆に言い返す明日夢だった。
「どうやってすぐに十五センチも伸びるのよ」
「打ち出の小槌とかさ。どっかのネコ型ロボットの道具とかでな」
「そういうのでな」
「それで大きくなったら私今時トップモデルよ」
 今度は呆れた顔で皆に返した。
「百七十もあればね。それこそ」
「まあそうだけれどな」
「やっぱり無理か」
「無理も何も漫画じゃない」
 こうまで言うのだった。
「そんなのって」
「じゃあどうする?」
「何やるんだよ。それじゃあ」
 皆あらためて演目について考えるのだった。
「どうせなら中森男役にするとか?」
「それも合わないしなあ」
 それもどうにも締まらないのだった。凛の顔が女の子にしか見えないからだ。
「北乃だから男役できるんだしな」
「じゃあ眠れる森の美女とか白雪姫も駄目か」
「無理ね」
 それも没になるのだった。
「じゃあいよいよ演目ないけれど」
「どうする?」
「何かある?」
「そうだね」
 皆頭を抱えだしていたその時だった。竹山が口を開いてきた。
「それだったら日本で行く?」
「日本!?」
「一寸法師とか?」 
 今の静華の言葉は悪気はない。だが彼女の今の言葉に明日夢も凛も思いきり不愉快な顔になるのだった。
「あの静華、幾ら何でもそれって」
「ストレート過ぎるでしょ」
「ストレートがいいんじゃないの?」
 やはり悪気がないまま言葉を続ける彼女だった。
「少年の背も考えればそれで」
「だから。それってどうなのよ」
「幾ら何でも少年に悪いでしょ」
「ううん、じゃあ駄目?」
「はっきり言ってそれは嫌よ」
「他の作品にして」
 二人から直接駄目出しにされてしまったのだった。
「一寸法師はね」
「それはね」
「じゃあ山椒大夫?」
「桃太郎?」
「それ女の子出ないじゃない」
「じゃあ何がいいんだよ」
 皆あれこれと言い合うが答えが出なくなった。どうにもこうにも困っているとここでまた竹山が言うのであった。
「童話じゃなくてもいいじゃない」
「童話以外に何があるんだよ」
 野本はそもそも話を知らなかった。
「ねえだろ。何も」
「いや、あるし」
「あるのか!?」
 やはり何もわかっていない野本だった。
「童話以外によ」
「だからあるんだって」
「そうなのか」
「御前、本当に頭の中に何が入ってるんだよ」
「何処かの野生児のレッドか?」
 坪本も佐々も完全に呆れてしまっていた。
「童話以外にも幾らでも話あるだろ?」
「忠臣蔵にしろ何でも」
「ああ、そういやそうか」
 しかも言われてやっと気付く程だった。
 
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