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麗しのヴァンパイア

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第百二十一話

              第百二十一話  上杉謙信もまた
 小田切君は濁酒と梅干を楽しみつつタロとライゾウに話していく、彼はその中で気付いたことがあった。
「そういえば濁酒と梅干って」
「いい組み合わせだよな」
「すっきりしていてね」
「うん、上杉謙信さんの飲み方だよ」
 日本で知らぬ者はいない偉大な戦国大名である。
「武田信玄さんと戦ったね」
「あの人酒好きだったな」
「それで有名だよね」
 タロとライゾウもこのことはよく知っている、それで言うのだった。
「毎日飲んでいたよね」
「毎晩だったってな」
「出陣してもお酒を飲んでいて」
「毎晩かなり飲んでいたよな」
「あの人がこの飲み方だったよ」
 小田切君はまた二匹に話した。
「当時のお酒は濁酒でね」
「それで肴は梅干しか」
「この組み合わせで飲んでいたんだ」
「そうみたいだよ、梅干しだけじゃなくてお塩だった場合もあるよ」
 その肴はというのだ。
「けれど梅干しをよく肴にしていてね」
「今の小田切君みたいにだな」
「飲んでいたんだね」
 二匹も小田切君の言葉に頷いて応えた。
「酒好きなのは知っていたけれどな」
「何を肴とかは考えていなかったよ」
「縁側に座って」
 そしてというのだ。
「毎晩飲んでいたっていうね」
「一人お庭やお月さんを観ながら飲んでたか」
「風流だね」
「それで漢詩にも読んでたね」
 謙信は詩人でもあったというのだ。
「風流さもあった人なんだね」
「酒の飲み方もそうだしな」
「漢詩を詠むのもいいね」
「そうだね、僕は文学は読むだけだけれど」
 それでもとだ、小田切君は二匹に飲みつつ話した。
「今謙信さんと同じ飲み方だね」
「そうして文学を語るっていうのもな」
「面白いね」
「そうだね、しかしこの飲み方は」
 梅干を肴に濁酒を飲むそれはというと。
「幾らでも飲めそうだよ」
「ああ、けれど飲み過ぎには注意しなよ」
「それには注意だよ」
「わかってるつもりだよ」
 こう言いつつも飲む小田切君だった、酒はどんどん進み止まる気配は一行に存在しなかった。


第百二十一話   完


                  2019・1・9 
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