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牛封じ

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第四章

「それを何千年何万年となると」
「間違いなく途方もない数になる」 
 若山はその目を光らせて述べた。
「それでと思ってや」
「鏡で、ですか」
「無数のお二人を出されて術を使われたのですね」
「そや、合わせ鏡を巧みに使ってな」
 そしてとだ、若山はまた話した。
「わし等をそれぞれ何百何千と出してな」
「術を唱えるとな」
「余計にええ、しかも魔法の鏡や」
 その鏡達はというのだ。
「ちゃんと唱えた術を反映させてくれて反射もさせてくれる」
「唱えた術をな」
「鏡と鏡の間を幾らでも打ち合わせてな」
「それで何回もここに来て唱えたから」
「何千年何万年分な」
「術をかけられたんやな」
「これで安心や」
 若山は確かな声で話した。
「二人には鏡を運んでもらったし」
「今回ほんまに助かったわ」
「いえ、ですから」
「当然のことをしたまでで」
「それでも助かったことは事実や」 
 それ故にとだ、若山は神官達に笑って答えた。
「神官長さんにもしっかり話しとくで」
「私達のことを」
「そうされるのですか」
「約束するで」
 明るい笑顔でだ、若山は二人に約束した。そして実際にだった。
 彼は房江と共に二人の神官達のことを神官長に話した、このことから二人は神殿内での地位を上げることになった。
 全てが終わってだった、若山と房江は街を後にしようとしたが。
 そこでだ、若山の手にあるものが宿った。それは何かというと。
 火だった、彼は手の平にあるその火を見つつ房江に話した。
「火天の火や」
「仏教の十二天のやな」
「そや、その火でな」
「鍛冶には火が必要やからな」
「この火は凄い火や」
 若山は房江に心の中で聞こえる言葉を述べた。
「何千度でも上がる」
「それを自由に使える様になったんやな」
「そや、こうしてな」
 若山が火に念じるとだった、火の色は青になりオレンジにもなった、そして白くもなった。
「八千度位にもな」
「それだけの火やと戦にも使える」
「これは凄い神具やな」
「火自体を使えるなんてな」
「ほんまにな、それに神託を適えて」
 そしてと言うのだった。
「わし自身もな」
「強うなったな」
「全体的に一回りな」
「そうなったか、ほなな」
「その力で世界救う」
「そうしよな」
「その為にもな」
 まさにと言うのだった。
「次の場所に行こうな」
「そうしよな」
 二人で話してだった、若山は房江と共に次の目的地に向かった。神託は終わっても彼等に休息の時はなかった。


牛封じ   完


                 2019・3・18 
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