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牛封じ

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第三章

「それで起きたら大暴れして地震起こすとか」
「ほんま神様やね」
「はい、この牛は実際にです」
「この地域で神としても崇められています」
 神官達が若山達にここでまた話した。
「眠っていれば何も起こらずかえってこの地に実りがあります」
「街に無限の水を与えてくれるオアシスの守護者でもありまして」
 それでと言うのだった。
「眠っていればオアシスから水が流れ続け」
「街も暮らしていけますが」
「ですが目覚めると」
「その時は」
「そうやねんな、そやったらな」
 若山は神官達の言葉を聞いて少し考えた、そのうえでこう言った。
「もう牛が当分、それこそ何千年何万年とな」
「目覚めない様にする」
「そうされますか」
「そや、起きんかったらええんやったら」
 それならばというのだ。
「それでや」
「もう起きない様に」
「何千年何万年と」
「そうするさかいな、術を使おうか」
「そやね、睡眠の術をね」
 房江も若山の言葉に頷いて述べた。
「もう使えるだけね」
「どんどん使ってな」
「牛にかけて」
「そうしてや」
「ほんまに何千年何万年も起きん様にしよな」
「今から思いきり術使うか」
 若山は意を決した、そしてだった。
 二人で牛に自分達の睡眠の術を使えるだけ浴びせた、術が使えるだけの精神力がなくなるとその場からだった。
 精神力を回復させる道具を片っ端から出して飲んでだった、そうしてそのうえでまた牛に術をかけた。だが。
 道具も全部使いきるとだ、若山は神官達に言った。
「一旦や」
「街に戻って」
「そうしてですか」
「精神力回復させてな」
 そうしてというのだ。
「またこっちに戻ってな」
「牛に眠らせる術をかける」
「そうしますか」
「ほんまに何千年何万年眠る様に」
 そこまで術を使ってというのだ。
「起きん様にするで」
「徹底されてますね」
「そこまでとは」
「一時の難儀を逃れるだけやあかん」
 強い声でだ、彼はこうも言った。
「そやからな」
「まことにですね」
「牛が何千年何万年と起きない様に」
「術をかけるで」
 この地域の為にとだ、こう言ってだった。
 若山は房江と共に街と洞窟の牛のところを何往復もしてだった、星の者達のこの世界に元からいる者達のそれよりも遥かに強力な術を使っていった。そうしてだった。
 実際に牛がそれこそだった、何千年何万年も起きないだけの眠る術を浴びせた。二人で一体どれだけそうした術を浴びせたかわからなかった。だが。
 若山は一つ細工をしていた、その細工は。
「まさか鏡を多く用意されて」
「無数の合わせ鏡にされてその中でお二人で術を唱えられるとは」
「鏡の中におられる数えきれないだけのお二人も牛に眠る術を浴びせていました」
「そうもなっていました」
「わしは鍛冶屋や」
 若山は自分の職業のことも話した。
「それでや」
「鏡のこともご存知で」
「鍛冶屋は鏡も造られるので」
「それで考えたけどな」
 それがというのだ。
「やってみて正解やったら」
「うち等の術でも眠らせられるのは一日位や」
 房江は術が効く期間について述べた。 
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