星河の覇皇
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第七十部第二章 同士討ちその四十四
「星の海を進む」
「そう思うとロマンですね」
「それがあるな」
「宇宙海賊もですね」
金はまた言った。
「物語になっていますね」
「山賊等とは違ってな」
「海賊にはロマンがある」
「そう思っていたが」
「現実の海賊は、ですね」
「ロマンはないな」
こう言い捨てた、これから征伐する彼等に対して。
「只の犯罪者だ」
「そうした組織ですね」
「それに過ぎない」
「はい、それはあくまで物語のことです」
八条も言う。
「現実の海賊はです」
「只の犯罪組織だな」
「しかも悪質な」
「国家も市民も害する」
「そうした存在に過ぎません」
「義賊なぞいないか」
所謂悪辣な権力者からのみ盗みを行うのだ、アルセーヌ=ルパンの様な存在と言えば聞こえはいいだろうか。
「所詮は」
「マフィアもそうですね」
金は彼等のことにも言及した、外縁部にもいて征伐の対象になっている。
「アウトローのロマンが言われますが」
「ゴットファーザーだな」
「それで映画等にもなっていますが」
そのゴットファーザーのシリーズだ、愛のテーマという曲も有名であり歌劇の曲も上手に使用されている。
「現実はです」
「犯罪組織に過ぎないな」
「存在しないに越したことはない」
「任侠映画もあったが」
「はい」
任侠と聞いてだ、八条が応えた。
「我が国のですね」
「あれは架空の話だな」
「ああした世界はどうしてもです」
「汚いものだな」
「そこに禁欲主義や英雄主義を入れていますが」
ストイズム、そしてヒロイズムをというのだ。
「現実はどうかといいますと」
「そのどちらもないな」
「非合法な活動に終始して利を貪り」
「国家も市民も害する」
「そうした存在に過ぎません」
「マフィアも然りだな」
「はい」
海賊と同じく、というのだ。
「そうなっています」
「それが現実だな」
「そう思います」
八条にしてもというのだ。
「ですから」
「変に敬意を感じることなくだな」
「征伐すべきです」
「現実にはだな」
「果てしなき銀河の海を旅する宇宙海賊はです」
「所詮は夢物語だな」
「そうとしか思えません」
八条は淡々とさえしてキロモトに述べた、
「現実にはそうした海賊もマフィアも存在しません」
「アウトローの美学もな」
「そうした美学自体がです」
金の言葉は八条以上に淡々としていた。
「存在するか」
「そう言われるとな」
「ないです、警察や軍隊にはありましても」
映画等でのそれぞれの世界の美学やロマンはというのだ。
「そうした世界にはありません」
「汚いものがあるだけだな」
「はい、私もそう思います」
八条を見ての言葉だ。
「どうしても」
「私もだ、幼い頃のロマンはだ」
海賊達に感じたそれはというのだ。
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