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星河の覇皇

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第七十部第二章 同士討ちその三十九

「やる機会がな」
「中々ないですね」
「残念なことに」
「お陰で蓄えも減ってますけれど」
「本拠地取られたら終わりですからね」
「この稼業は根無し草じゃないんだよ」 
 海賊にしてもというのだ。
「船を停泊させる場所がないとだ」
「出来ない仕事ですからね」
「船の修理をしないといけないですから」
「そこは、ですよね」
「絶対に」
「そうだ、船も修理してだ」
 そしてというのだ。
「俺達もしっかりした場所で時々でも休まないとな」
「やっていけないですからね」
「海賊稼業も」
「だから本拠地を潰されますと」
「俺達は終わりですね」
「海賊にも家が必要なんだよ」 
 つまり本拠地がというのだ。
「だからだ、いいな」
「はい、わかってます」
「じゃあすぐに帰りましょう」
「仕事になりそうな商船もないですし」
「仕方ないですね」
「ああ、最近商船も減ったな」
 船長はこうも言った、それも苦い顔で。
「この辺りを行き交う船がな」
「ですよね、どうにも」
「商船の行き来も減りましたよ」
「それもかなり」
「相当に減りましたね」
「全くだ、しけたことになっている」
 彼等にしてだ。
「本当にな」
「どうしたものやら」
「ちょっと本拠地を離れたらどっかから敵がきますし」
「辛いですね」
「しかも中でいがみ合いもあるしな」 
 彼等にしてもというのだ。
「仕事が出来なくなってきたな」
「いや、本当に」
「最近嫌なことばかりですよ」
「ここはどうしたものか」
「生きていけなくなってきたら」
「抜ける奴も出て来たな」 
 彼等海賊からだ。
「それも勝手にな」
「抜けたりですね」
「追い掛けて捕まえて殺した奴もいますけれど」
「逃げる奴も出ていますね」
「俺達にしても」
「海賊になったら死ぬまで海賊だがな」
 こうした組織ではよくある話だ、一旦非合法組織に所属すると抜け出ることは難しい。無理に抜けようとするとリンチをも含む制裁が待っている。
 それでだ、彼等の組織もなのだ。
「入る時に言ってるがな」
「抜け出ることは許されない」
「抜け出たら死刑ですね」
「そう言われていますね」
「実際に」
「そうだ、しかしな」
 その彼等の組織でもいうのだ。
「抜け出ようっていう奴が増えてきた」
「このままじゃ食っていけない」
「そうなるって言ってですね」
「どんどん逃げていってますね」
「ボロボロと」
「ふざけた奴等だ、全く」
 こうも言った船長だった。 
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