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星河の覇皇

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第七十部第二章 同士討ちその二十三

「毛布を売るがその毛布に細菌を含ませておいてはとは」
「細菌戦術ですか」
「その案もあった」
「そうでしたか」
「あまりにも非人道的だと反対があり不採用となったが」
「そうした案もありましたか」
「幾ら犯罪組織に対するものでもな」
 細菌戦術、それはというのだ。
「あまりにもというのでな」
「そうですね、私もです」
 趙虎も話を聞いて己の考えを述べた。
「細菌を使うまではです」
「やり過ぎだな」
「はい、そう思います」
「私も会議と聞いて反対した」
 そうしたというのだ、アラガルにしても。
「非人道的に過ぎるとな」
「部長もですか」
「そうした、工作は仕掛けてもだ」
 それでもというのだ。
「細菌戦術まではな」
「化学兵器位ですね」
「毒ガスは使ってもな」
 化学兵器の代表格だ、一次大戦ではかなり使われていたが二次大戦では使用が禁止された曰くつきの兵器だ。
「細菌まではだ」
「やり過ぎ、ですか」
「そうなってだ」
「没になりましたか」
「そうだ、反対意見はネイティブアメリカンの国家出身者から強かった」
「そういえば」
 趙虎はその話を聞いてすぐにわかった、そのわかったことはというと。
「毛布に天然痘菌を付けたものを贈るやり方は」
「アメリカがやっていたな」
「はい、他ならぬ彼等の先祖に」
「そうしていたからな」
「だからですね」
「彼等が反対した」
「国家、民族としてのトラウマですね」
 アメリカはネイティブアメリカンとの戦いの時にそうしたこともしていた、あらゆる謀略も使い戦っていたが中にはそうした工作もあったのだ。
「だから反対したのですね」
「そのせいだ」
「ですか、有効でもですね」
「トラウマは難しい」
「その克服は」
「千年以上の話で勿論当事者達は生きてはいない」
 アメリカで言うと七代大統領ジャクソンの時代だ、歴代のアメリカ大統領でも相当に荒っぽい一面があったという。
「そしてもっと言えばだ」
「当時のアメリカ人とネイティブアメリカンもですね」
「互いに混血してだ」
 その千年の間でだ。
「もう人種も違っている」
「ネイティブはモンゴロイドですが」
 そもそもそうである、ベーリング海峡がつながっていた時に移住した者達とのことだ。
「今ではそれぞれ混血してです」
「白人の血も黒人の血も入っていてな」
「かつての純粋なモンゴロイドではなくなっています」
「当時のアメリカ人の血も多く入っているだろう」
「間違いなく、ですね」
「そうだ、しかしだ」
「それでもその国の歴史としてですね」
 まさにそれとしてなのだ。
「残っていますね」
「そのせいでだ」
「反対意見が彼等から起こり」
「没となった」
 アラガルはあらためて述べた。
「そうな」
「左様ですか」
「それで細菌戦術は使わない」
 この戦術はというのだ。 
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